百鬼夜行～妖怪と魔物を率いる者～

襲撃②

「なぁ狼顔の者よ。　天狗って知っているか？」

天狗は背中にかけてた大太刀を抜いた

「ぐるるる!!」

狼人間はうなり声をあげる

「まぁ聞け、天狗は山に住んでいてな。　山を汚さなければ基本入ってきても何もしないんだ。　だけど汚した場合違う」

「ガルウァ!!」

狼人間は2匹で同時に襲った

「このように」

天狗は足に妖力を溜めて、地面を蹴り上げ狼人間が気づかないほどの速さで走り抜けた

「...!?」

「ガル!?」

狼人間は気づいたら斬られている自分の体に理解が追いついてなかった

「迅速に標的を排除する」

「ガルァ!」

1匹は立ち上がって、再び天狗に襲い掛かる

「1匹仕留め損ねたか。　まだ立ち向かう体力あるか。　冥土（めいど）の土産に面白いの見せてやろう」

天狗はそういうと腰にかけていた羽の団扇（うちわ）を取り出した

「秘術・天風陣」

天狗が狼人間に向けて団扇を仰ぐと、突風が起き狼人間は吹き飛ばされた

そして天狗はつかさず吹き飛ばされた狼人間の元まで詰めた

「寝ていな」

天狗は狼人間が吹き飛ばされてぶつかって止まった木ごと、大太刀で斬りさった

「お仲間がやられたようだが大丈夫か」

犬神は辺りが火の海となってるのを気にせず錬金術師に言った

「ただ弱かっただけだ」

錬金術師はそう言うと地面に書いてあった魔法陣に手をつけた。

犬神が放った炎術の残り火が集まり無数の炎の矢ができた

「俺の火を支配下に入れて、そんな事もできるのか凄いな。　あんたは、なんて名前の妖怪なんだ」

「妖怪ではない魔物だ。　俺は周りから炎猿（えんか）と呼ばれてる。　称号は火の悪魔」

「炎猿か、そして称号？　火の悪魔か。ユラさん！　称号って何ですか！？」

「あぁ!? 今手が離せない！　とりあえず強いやつ！」

犬神はユラの適当な返事を聞くと、思わず笑ってしまった

「ははは！　相変わらず適当なお方だ。炎猿か覚えたぞ！」

「錬金術・火門一番炎龍矢（かもんいちばんえんりゅうや）」

錬金術師がそう言うと無数の火の矢が放たれた

「その火は俺のだぞ」

犬神は片手を大きく振ると、火の壁ができた。　無数の火の矢が炎の壁に吸い込まれていく

「お返しだ」

今度は両手で火の壁を触り反転させた。

「火術・炎返し」

火の壁から無数の矢が放たれた

炎猿は腰にかけてあった巻物を取り出した。

「錬金術・土亀（つちかめ）」

錬金術師は土でできた亀に覆われた。　錬金術師に向けられて放った無数の矢は土亀の硬い土に刺さる事なく止められた

「なるほど、あんたが使えるの土と火だけなんだな。　その錬金術ってのは、魔法陣を書いて周りの物質の形を変えてそれを術に使う」

土の壁が崩れ落ちると錬金術師が出てきた

「よく見ているな」

「なら、これはどうかな」

犬神は札を三枚取り出して、呪文を唱えた

「水術・大爆流」

札三枚から大量の水が出てきて錬金術師を襲った

「水...!? この周辺に水なんてないぞ!?」

「これで魔法陣は書けないろ、そして、腰にかけてある巻物もさっきので最後。　水術・水刃（すいは）。」

水が刃物となり錬金術師に襲い掛かった

「これで終わりだ」

「召喚術・ウッドゴーレム」

「なに！？」

水の中から木の形をした巨人が現れた

水刃は防がれて水も切れてしまった

濁流のような水の量は減っていき元の地形になっていく

「どこまで用意周到なんだ、あんた、まさか来ている服にも魔法陣を編んでいたのかい」

「予想外だったは言わないようにしているからな」

「だが、その大きさの召喚をするには相当な体力を使うはずだ。　そして、息切れしてる感じからこれが最後の切り札って感じか」

犬神は袖から刀を取り出し、刃をなぞった

「火術・火剣（ひけん）。　もういっちょやるかぁ！」

犬神はウッドゴーレムに火の斬撃を与えた

「ユラのお仲間さんなかなかやるね」

ハクビは黒装束の魔物を1匹切り捨てた

「相手もなかなかやるみたいだな」

カーン・・・カーン

「また来るぞ」

ユラとハクビはお互い見合わせた

ハクビの後ろに突然刃物を振りかざす魔物が現れた

「ハクビ後だ！」

ハクビは瞬時に反応し持ってた小太刀で攻撃を受け流す

「やるな。　お互い見合わせて、死角をカバー。　姿が見えた瞬間それを瞬時に仲間に伝える。　お互いの反応速度が常人以上の反応速度じゃないとできない芸当だ」

「ありがとよ。　あんたは、腰にかけてある鐘を鳴らして姿を消すんだな。　いや、正確に言うと気配も消すから存在を消すってのに近いか」

「その通りだ。　俺は周りからレイスと呼ばれている。　あんたの仲間も強いなぁ、炎猿があそこまで追い詰められてるなんて初めて見たよ」

俺は鼻で笑った

「フッ犬神は、その名の通り神様の仲間なんだね。　ちょっとやそこらの者と同じように扱わない方がいいぞ」

「なるほどねぇ、神の名を語るのか確かにそこまで名乗るなら炎猿をあそこまで追い詰めないとだな」

レイスは持っている武器をなでながら言う

「てことは、あんたは、さっきあの神を召喚したから。もっと強いってことか」

「あぁ」

レイスは武器を構えた

「面白い」

～～～♫～♪～♫～～

突如透き通るような笛の音が聞こえた

「笛の音？？」

レイスは武器を構えるのを辞めた

「退却の合図...炎猿！」

「あぁ聞こえる！」

レイスと炎猿は後ろに下がった

「退却の合図だ！また戦う日まで生きてろよ！」

「待て！！」

炎猿とレイスは森の奥に姿を消した

「諦めとけ」

俺はハクビを止める

「また来るさ、今は焦らんでいい」

こうして襲撃された夜は終わった