リザートマンニイル②

圧倒的な強さだった


2年前


山で異変があったのは、秋の夜中グリースという熊の魔物が惨殺されて発見されたのが始まりだった。最初は仲間同士の縄張り争いによるものかと思われたが、近くの川でグリースの死体が複数見つかり、これはただの縄張り争いではないとわかった


その後、群れの中で医療に詳しいものが死体を調べたところ、この山に住んでいる魔物の爪痕ではないことがわかった


次の日、夜中に群れの子供達が親の目を盗んで川で遊んでいたら、みたことない魔物に会ったという白い長髪でお面をかぶっていたという


それからその魔物の目撃情報がなかった


5日後、グリースの件は進展なく、子供達の目撃情報が最後に何も目撃されてないので、グリースを倒したものはこの山からいなくなったと思われた


「誰だ!?」


村の門番の声に村にいる者が集まってきた


「私はこれから、この山を縄張りにする妖怪です。 なのでこの村から退去をお願いします」


「何を言っている!?」


俺がそこに着くと、先日に村の子供達が言っていた白い長髪と白いお面をしていた魔物の姿があった


「私は数日間あなた達の村を観察していました。 熊の姿をしたものより知能が高くて、話ができそうです。 下手に殺しはしたくないので従ってください」


あのグリースたちを倒したのは、あいつか。 グリースは俺達ほど強くはないが山の中でも強い部類に入る。 それをあいつ単体でやったのか。 しかし、言っていることめちゃくちゃじゃないか


「皆落ち着け」


後(うしろ)から声が聞こえた


「村長!」


「村長さんだ!」


「村長さん!」


村人達が活気づく、村長のザクロさんは実力もあり村人からも人望もある


「何しに来た?」


村長の問いに白い長髪のした者がいう


「あながここのリーダーみたいですね。 私はここの山の主となる妖怪です。 あなた達をここから追い出すために来ました」


「妖怪聞いたことないな」


「今は知らなくていいですよ。 知っといて損はありません。 後に知ることになります。 それで、この山から出ますか?」


村長は右手を挙げた


「答えはこれだ」


妖怪を囲むように隠れていたリザードマンが弓や槍などを構えてた


「なるほど答えはどかないと。 殺すのは簡単です。 しかし、それだといけない。 私は非殺傷であなた達を倒します。それで力の差を見せしましょう」


「なめるなー!」


リザードマン達は一斉に襲い掛かった


「14、15、16匹ですか。 この人数ならこれでいいでしょう。白術・白花吹雪の術」


その瞬間、襲い掛かったリザードマンは謎の白い花びらに囲まれた



何が起こった...


気付いたら地面に倒れていた


周りを見ると仲間達も倒れている


「うぅ...」


「いてぇ...」


みんなうめき声をあげている。死んだ者はいないみたいだ


前を見ると妖怪と名乗っていたものが立っている


「きさまぁ!!」


上から声が聞こえて上を向くと、木の上から妖怪に向かって、村長が槍を突き刺した


しかし、それは白い花びらとなって消えた


「うぅ!?」


攻撃したはずの村長がうずくまった。よく見ると村長の腹に妖怪が拳をめり込まらせてた


「白術・白花分身の術です。 見えなかったでしょう」


「ふざけるなぁ!」


村長は下から拳を突き上げ妖怪の顎(あご)に向かった。 アッパーだ村長のアッパーをくらって立ち上がる者はいない。しかも、至近距離だ確実に当たる


しかし、妖怪はそれを避けた。 そして、足を肩幅に広げて膝を少し曲げ、両手を構えた


そして、片手を村長に向けてパンチしたかと思うと


村長はいきなり後ろに吹き飛ばされて、木に激突した。 よく見ると、腹部・胸部・顔面に拳の跡が残っていた


「...!?」


村長はなんで吹き飛んだのか理解できてなかったみたいだった


「今の一瞬で3発も殴ったのか」


俺には一発しか見えなかった。 だが村長に残っている拳の跡で3発は少なからずくらっている


「中国拳法の三段突きです。 人間たちは自分で開発したと思っていますが、本当は私たちの部族が酒を献上してくれたお礼で教えたのが始まりです。 まぁ今のあなた達にはきく余裕もないでしょう」


「なめるなぁ...!!」


村長は着ていた鎧を脱ぎ捨て、魔力を体内に溜めてそれを爆発させた。それにより体内の身体活動が急激に高まり、一気に体格が変わり従来の3倍ほどの大きさになった


「面白い術を持っていますね。 さすがはこの村の村長だ。しかし、それは的になるだけだ」


そこからは見るに耐えなかった


「上段3段蹴り、正拳突き...」


妖怪の見えないほどの早い体術で村長はひたすら殴られ、蹴られ、倒れようとしても、また殴られ蹴られ体勢をもとに強制的に戻した


「やめ...やめろぉ!!この,,,村から,,,俺達は出てく...!!」


攻撃が止み、村長は地面に倒れた


「よろしい」


俺達は村を出ていくことになった。村長は死んでいなかった、医者からの話によると急所は外されていた。仲間達も重体だが生きている


「本当に誰も殺さずにこの村から俺達を追い出した」


俺はこの妖怪の事、心の底から恨んだ。いつか、その力に勝る力を手に入れるのを誓った



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