地獄ファイターズ 罠だらけの五番勝負!!

ななくさ ゆう

プロローグ

 カケルは走る。


 走る。

 走る。

 ただひたすらに走る。


 戦いきった仲間達の分も。

 どれだけ走り続けたのだろう。

 もうわからない。

 両足の痛みは、すでに感じられない。

 ちょっと油断すると意識すら飛びそうだ。

 カケルの肉体は、ひたすらに水と休息を求めている。


 それでも前へ!


 足を止めれば、奪われるのはカケルの命だけじゃない。

 ここまで共に戦ってきた4人の仲間達の命も失われる。

 フトシ、ケイミ、ツヨシ、それにカオリ。


(みんなはオレに託してくれたんだ)


 だから、足を前に。

 一歩、一歩、一歩、また一歩。

 ただそれだけを考えろ。


 この地獄の道を、一歩でも前に。

 そんなカケルに、閻魔王女が相変わらずのニヤニヤ顔でささやく。


「カケルく~ん、がんばるね。でも無駄だよ。キミに勝ち目はない。人間が鬼に勝てるわけないじゃない」


(うるさいっ! 鬼だろうが神様だろうが、オレは負けない!)


「もう足の感覚もないんでしょう? 疲れて、眠くて、お腹がすいて、喉が渇いて、とってもつらいんでしょう?」


(うるさい!)


「楽になりなよ、カケルくん」

「うるせぇー!」


 叫ぶカケル。


(そうだ、オレはあきらめない)


 足が動く限り――いいや、足が動かなくなっても前に進む!

 みんながオレを信じてくれた。

 だから、オレもオレを信じる。

 絶対に負けない。

 生きて、この地獄の世界から抜け出して、カオリ達と一緒にまた学校に通うんだ。


 決意を胸にカケルは地獄の道を駆け続ける。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る