アップルパイと学ランと貴方とメール。

矢部まの

第1話 苦め再会。




息が詰まった。




そこに、貴方がいたから…






社会人になって1年目、入った会社に取れた言われた資格の為の資格の学校に通いだした。



年齢層はバラバラ。



配属先の近くの土地勘もない学校。




そこで再開したのは、

中学校の同級生、



渡瀬 陸(わたせ りく)




黒髪に、大きな黒目、長めのまつ毛

黒目の肌に、少し冷たい顔つき。



近寄りづらい少し怖い雰囲気。

でも、友達とはケラケラ笑ういたずらが好きな彼。




きっと学年で1番かっこよかった彼。



大人になっても変わらなかった。



私は一瞬、息を呑んだ。


そして、気づかれないように、



授業を受けた。




〜回想〜




初めて出会ったのは一年生の頃。



友「おい山内ちょっときて〜。」



昼休みに、クラスのチャラ目の男の子に廊下に呼び出された。




廊下に出るといろんなクラスのチャラチャラした男子達が集まっていて、



真ん中で

渡瀬が立っていた。




私『…え?なに?』



その頃の私たちはクラスも違くそんなに面識があるわけでもなかった。


ただ隣の目立つグループの人でお調子者なのかな?となんとなく想像していたぐらい。




渡瀬「…



キスしてくれ!!!!」




その瞬間。



フゥーーー



と盛り上がる周りの男子達。




あぁ、罰ゲームか。と一瞬で理解した。



その頃罰ゲームで告白をする「ウソコク」やら、その類のものが流行っていて




メールで面識もない男子から告白の文が送られてきたりしていた。



私は何となく誰とでも仲良くて、ノリも良いから、ターゲットにしやすかったのだろう。




『なにそれ笑』



一言だけ言って私は教室に帰った。


彼はもう罰ゲームが実行されたことに盛り上がっていて、私がいなくなってもなにも言わなかった。




むしろそれくらいあっさりしてる方が良いのを私は知っていた。




その夜、渡瀬からメールが届いた。


ーーーーーーーーーーーーーー



今日は悪かった。

気にするな。



ーーーーーーーーーーーーーー



分かっていたから、



了解。ドンマイ。

と送って、終わり。




これが私たちの出会いだった。





次の年、2年に上がるクラス替えで、私と彼は同じクラスになった。



普通に仲良く、

たまに話すくらいの関係。





新学期、しばらくした時、




当時部活でダブルスを組んでいたペアの恵那(えな)と恋バナになった。



当時恵那には、片想いの相手がいて、



告白をしようか迷っていた。



なかなか踏み切れない恵那と、



"告白して、もし振られたらウソコクだったということにしよう"



という何とも卑怯な計画が立った。



自分が傷ついた時のために冗談て事にして関係を崩さないようにと、



中学生の幼い頭から出たその案が採用。




恵那「じゃあ、果穂もウソコクして!お願い‼︎」




『え、私も!?誰に。好きな人とかいないんだけど』




恵那「カッコいい人とかで良いから‼︎」




えぇ。



そこで私がウソコクする相手に決めたのが渡瀬陸だった。




イケメンでノリも良く、女友達も多い。



人として好きだったし、人気者だからOKされもしないしちょうど良いと思った。




そして、その夜


私と恵那は同じ時間に、同じ文を送る事にした。





ーーーーーーーーーーーーーーーーー




好き。




ーーーーーーーーーーーーーーーーー





その2文字。



私はともかく、恵那は緊張していただろう。





恵那は相手にOKをもらって、そのまま付き合う事になった。




しばらくして渡瀬から返信が。


謝らなきゃな…




ーーーーーーーーーーーーーーーーー




俺も




ーーーーーーーーーーーーーーーーー




え。




えええぇぇぇ!!!??




どうしようと焦った反面、



あんなイケメンにOKされたと、ラッキーと思ってしまった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーー




付き合ってくれるの?





ーーーーーーーーーーーーーーーーー





ーーーーーーーーーーーーーーーーー





うん。

よろしく。





ーーーーーーーーーーーーーーーーー





こうして私と渡瀬陸は付き合う事になった。





とは言っても中学生、



しかもその頃は2人とも相手任せで。



メールはたまにするけど、


その頃渡瀬は部活ではなく夕方から夜にやるサッカーのクラブチームに通っていて、


私は放課後すぐ部活をしていた。





つまり、メールできる時間もほぼ合わないまま



休みに遊びに行ったりも全くしないまま1ヶ月2ヶ月と文字通り何もないまま時間が過ぎ、夏休みに入ろうとしていた。





私は、今でこそ好きだったかはわからないものの、彼に連絡を送る事へも、いちいち緊張しながら、顔色を伺ったメールを送っていた。




クラスは同じなのに、付き合うとなってから逆に気まずくなった私たちは、一言も話せなくなり、前の程よく仲の良かった関係は無くなっていた。




中2の夏休み、



渡瀬のサッカーが日中になって、合宿やら何やらでさらに忙しそうな渡瀬に


わたしはタイミングが掴めず、メールを送れなくなっていた



一度だけ、渡瀬から電話があった。




相手は、渡瀬のサッカークラブの友達。



「どうも、おれ、千田って言います。


リクと付き合ってるんですよね??

リクのこと好きなんですか??」




急にそんなことを聞かれてパニクッたが、



『当たり前じゃないですか。笑

好きですよ!』と普通に返した。



その後




電話の向こうで



だってよ!!!



と茶化す声と


うるせえな。と笑いながら少し照れた渡瀬の声が聞こえて



「あ、じゃあ、それだけです!

リクのことお願いします!」



と、電話が終了。




その後少し、休みの日を聞いてみたりしたけど、うまく誘えず、向こうも誘っても来ないまま



結局全く顔も合わせず、メールもほとんどせずのまま夏休みが終了。




夏休み明け、夜に




ーーーーーーーーーーーーーーーーー




別れよう

お前と付き合っててもつまらない。





ーーーーーーーーーーーーーーーーー



と、振られてしまった。





我ながら、

だよな。と自分でも思ったため、後悔はしたが、弁解したり、引き止める理由もなく、あまりショックも受けなかった。




そのまま私たちは別れる事になった。





中学生のあの頃、

誰かと誰かが付き合った。という噂は



すぐに広まって、冷やかされるとゆーのがお決まりまで、




私たちは幸い、どちらも誰かに行ったりせず、仲良い友達最低限の中で収まっていたため、



噂になったり冷やかされたりはしなかった




が、




別れた次の週ぐらいから、クラスの目立つ子達の中で私のことを見る目が変わり、



あからさまに噂されたり、



私を見ながら、えーなにそれ〜ウケる〜と話の話題になっていたりした。



その輪の中心には、



渡瀬陸


当時私達のクラスは、渡瀬と成田という仲良しコンビが支配していてカーストのトップにいた。



あの2人に嫌われると、いじめの標的になる。と。




そんな渡瀬に

私は別れた瞬間に悪口を撒かれて、馬鹿にされていたのだ




あいつと付き合ってもつまらない。



気を使ったメールを送ってくるのがきもかった。と。




私と2人だと仲良く喋るような子達もみんな渡瀬の周りに集まって、




病んだというより、



当時中学生なりに、くだらないな。と、完全にカーストの上の子達を無視をするようになった。



イジメまでは行かずとも、


あーやって人の顔色しか見れない連中なんか興味ない。と、冷静に距離を置くようになった。 



渡瀬の事は嫌いになった




ただ、その数ヶ月後、今度はクラスが私についた。




3学期に入り、クラスは入ると、いつもとは違う雰囲気が流れていた。





渡瀬陸がハブられていたのだ。




ツートップだった、成田と渡瀬が喧嘩したららしく、クラスのみんなは成田の味方になった。





それで一気にみんな渡瀬に近寄らなくなり、今の時代、こんな事あるのか、と思うぐらいあからさまないじめの標的になった。





机にカッターで落書きや、


私物を勝手に捨てたり、


教室で物を投げて頭に当てたり





誰がみたってわかる。避けられてるや、ちょっと噂されてるなんてレベルじゃない。



ドラマで見るようなイジメ。





わたしは、成田に仲間になれと手のひらを返したように誘われたが、




わたしのこと散々笑っていたくせに。と思ってしまい、





『やめてあげなよ、、見てられないし。』と、返した。




成田は、「え、なんで?果穂だってあんな馬鹿にされたりしてたのに、庇えるの?

いいやつだなやっぱお前。」




『そんなの、成田達も一緒じゃん。それに同じことしたいなんて思わないし。笑』



なんて会話があった。





わたしは、みんなの前で助けてあげることもできないし、気にせず話しかけることもできず、





ただ、怖い顔で耐えてる渡瀬を見てることしかできなかった。






〜回想終了〜





そして、そのまま中学の間一言も話さないまま、それっきり渡瀬とは会ってないのだ。




中学生の頃のことを引きずるつもりもないけど、




仲良く話すような仲でもない。





わたしは、見て見ぬふりをした。




おそらく、渡瀬も同じだったのだろう。



講義中、何度か目があっても、私たちが会話をすることはなかった。












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