雨-Reverse-

「雨、やだなぁ。」

何気ない会話から聞こえた一言。

そう、さぎり(彼女)がここ最近不機嫌なのはきっと、連日続く雨のせいだろうと思う。

だけど、不機嫌な理由は俺にもあるんだ。

だからあんまり反応しないようにしている。

ケンカになりたくないからね。

今も、そんな自分の機嫌を自分で取ろうとして最近聴いたとても素敵な歌手(木村結)の歌を歌って聴いてもらっていた。でもなんというか、選曲ミスかなと思う。

歌手が女性だったからなのか、それとも俺がその歌手をベタ褒めしたからか、はたまた両方かはわからないけど、雨のせいで少し不機嫌な彼女をより不機嫌にした気がする。。

俺から告白して、付き合い始めて早3ヶ月。誰もが通る倦怠期というものに、雨の時期が重なって、より険悪なムードになることが多くなった気がする。。大袈裟かもしれないけど、「別れる」を最悪の結果だと考える俺にとっては、この雰囲気は実はとても怖い。

さぎりを。。失いたくないから。。暗いな。。らしくない。

少しでも明るい話題にしたい。よし。ここは思い切って。。

『確かに、ちょっと多いよなぁ‥。今度のデートの日、大丈夫かなぁ?』

不機嫌の原因にも触れながら、でもデートの約束があることを少し強調しつつ。。

「雨だったら、会ってくれないの?」

何故そうなる!?

『え??いやいや会うよ!雨でも俺は会いたい!カラオケでもなんでも、雨でもできることはあるじゃん??』

さっきまでの木村結の話題がよくなかったのか。。会う約束までなくなってしまうのか。。しかもカラオケとかまた歌の話に。。

「よかった。そうだよね、雨でも、遊べるよね!」

ふぅ。。俺はなにを1人で暴走しているんだか。。

その時のさぎりの顔にさっきまでの不機嫌さはない。

よかった。さぎりも楽しみにしていてくれたのか。。

『うん!さぎりに会えるなら雪でも迎えに行くよ!ちょっとおおげさか。』

この言葉はなにも考えずに出てきた。

本心だ。

ん。。?本心。。?

だとしたら俺はこれまで本心で話してなかったのか?

そんなはずは

「あ、ねぇ、例のこと、前田君に聞いてくれた?」

やめろ。なんで今その名前を出すんだ。

いや待て落ち着け。今不機嫌さを顔に出すな。それが一番やってはいけない。

でも

『ん?あぁ、ごめん‥忘れてた』

これしか言えなかった。

表情には出さなかったと思う。

「そう‥なんだ」

頼む。この話題だけは勘弁してくれ。

『うん‥ごめん‥』

これ以上は俺も不機嫌さを隠せない。

いや、でも弁解しなきゃ

「あの」

『あのさ』

同時。

「え?」

今日は駄目だ、このまま話しても良いことはない。

『いや、いいんだ、なんでもない』

さぎりが。。心配している。

俺の様子がおかしいことに気付いているからか、それとも、俺と同じように別れを恐れているのか。。

ごめん。今日は気遣ってあげられそうにない。帰ろう。ちょうど時間も

『もう、5時か』

『帰ろうか。これ以上残ってたら、見回りの先生きちゃうから』

少しでも明るい声で話そう。

今はそれしかできない。

「うん‥。そうだね。」

そんな不安そうな声を出さないでくれ。

きっと大丈夫だから。

『気をつけてね!暗くなる前には帰れると思うけど。』

気をつけてね。俺達はきっと大丈夫。

タイミングが合ってないだけだ。ちゃんと話せば。。きっと。だから、気持ちを整理しないとだ。だから、今はせめて笑顔でいよう。

「うん。あ、あのさ!」

なんだ?さぎりが呼び止めるなんて珍しい。

『ん?』

「今日、電話していい??」

このタイミングでか。。今は気持ちを整理。。。いや、だめだ、考えるのはやめよう

『いいよ!解禁になったら教えて!』

今ここで断ったらさぎりはきっと不安に思うと思う。気持ちの整理は、明日でもできる。






よくない。

シンプルによくない。

俺が不機嫌な理由は、すごく簡単に言って「嫉妬」だ。この「嫉妬」が一番よくない。

してる方もされてる方も、誰も得しない。

しかも、「嫉妬」の原因になっている人物は俺達の恋愛とはなにも関係ないんだから。

それでも止まらない。

さぎり。気付いてないんだろうな。

今日の放課後、その短い時間だけで、俺が言葉に出して「さぎり」と呼んだのはほんの数回。だけど、心の中でとこんなに呼んでいるんだ。さぎり。。さぎり。。

さぎりの中で、俺はまだ「君」なのか?

「君」って誰だよ。あの日告白したのが俺じゃない「君」だったらさぎりは同じように、いや俺よりもその「君」を好きになって、そいつは「君」じゃなくなって。。やめよう。

さぎりがいつこんなこと言ったんだよ。

なにも言ってないだろう。。

そう、なにも言ってない。

そうだとも、違うとも。

言ってくれよ。

ちゃんと、「君」じゃなくて「○○」が好きだって。

3ヶ月も経っているのに、俺は苗字すら呼ばれない。






「前田君」






やめてくれ。

さぎりが口に出して呼んだその名前は、その時のさぎりの声と一緒に耳の奥に張り付いてる。

やめてくれ。

前田はなにも悪くないのに、お前の事まで嫌いになりそうだ。。

ん?お前の事まで?


は?俺はさぎりを嫌いになりそうなのか。。?

こんな小さな事で??

3ヶ月前の、あのデートを夢にしたくなくて、勇気を振り絞って告白してその結果がこんな。。こんな小さな「嫉妬」で。。

それに、なんだっけ、今日、教室で話していた時に引っかかったのは。。えっと。。

あぁ、そうだ。咄嗟に口をついて出た言葉を「本心」だと思って。。。じゃそれまでは本心じゃなかったのかって。。

ダメだ、頭がこんがらがってる。

どれが自分の本心かもわからなくなってきてる。。

あ、そう言えば今日電話するんだった。。

今何時だ?

21時40分。。大体いつも電話が始まるのが21時半前後。遅くとも22時くらいだ。

確認の連絡を入れようかと思ったけど、もういてもたってもいられなくなった。

これ以上1人でいたら、気持ちを整理するどころか自分で自分の首を絞めることになりそうだ。

もういい。電話しよう。

でなかったら、その時はその時だ。


『もしもし』

「‥もしもし」

よかった。出た。

『あ、さっき、電話しようって言ってたから、かけてみた。今、大丈夫?』

声は少し暗い気がするけど、でも、やっぱり電話してよかった。

さぎりの声は安心する。

「うん。大丈夫だよ。」

そうか、それならよかった。

『なんか、話あった?』

安心させてもらったから、今度はさぎりの話を

「いや、前田君達との話。進んでないみたいだけど、なんかあったの?」

あぁ、わかってないんだな。もらった安心はどこへやら。不安を通り越してさすがに苛立った。

『あぁ、あの話さ、やっぱりやめない??』

もうやめよう。仮に実現したとしても、1日笑顔を作っていられるような状態じゃない。

それならはっきり言った方がいい。

「どうして?」

。。少しは考えてくれないかな。。

まぁ、理由はいくらでもある。

『いや、やっぱり、俺らは付き合ってるからいいけど、前田と、厨二さんは、ほぼ初対面なわけでしょ?それで、話なんてできるのかなって‥』

「だから、そこは厨二がうまく自分からいくって言うことで‥」

『それは厨二さんが勝手に言ってるだけでしょ?』

悪い。言葉がきつくなった。それに、さぎりの言葉を遮ってしまった。

フォロー。。フォローしないと。

『前田はさ、ちょっと‥シャイなとこあるからさ‥。』

アホか。なんだその取ってつけたような理由は。。さすがにさぎりも勘付いて

「あの‥違ってたらごめんなんだけど、君は、厨二があんまり好きじゃないの‥?」

『え?なんで?』

違うよ。

「いや、私が見ている限り、前田君ってそんなにシャイでもなさそうだしっていうかむしろ、修学旅行の時に厨二と話してるとこ見たけど、結構いい感じだったから、そんなに初対面っていう感じでもなさそうだなって‥思うんだけど‥」

後半は聞くのをやめた。いいかげんにしてくれ。


「ねぇ」

『え?』

切りたい。今日は誰とも話したくない。

「聞いてる?」

だから聞きたくないんだって。

『聞いてるよ。木村結の曲』

まさか。こんな時に大好きな歌手の歌なんて聴けるか。

「どういうこと?」

こんな状況でまだそんなことを

『それはこっちのセリフだけど‥』

「‥なにが?」

ちょっと我に返った。さぎりの声が尖っていたから。でも、もう隠すのも無理だな。

『前田君はって随分詳しいんだなぁと思って』

ついに言ってしまった。

俺は初めて「嫉妬」を剥き出しにした。

でも、罪悪感に苛まれている暇はない。。

「どういうこと?」

今は答えたくないな。。

『そのままの意味。もう話すことないなら俺は木村さんの歌聞きたいんだけど。』

トドメ。みたいなつもりで言った。

ここまで嫌悪感を出したらさすがに引き下がってくれると思った。

でも、俺の予想とは裏腹に。。

「ちょっとなんなの?元々2人で始めた話だったのに全然進んでないし、口を開けば木村結香ってそればっかりだし‥。ちゃんと話す気ないならなんで電話してきたの?」

聞きたくない。答えたくない。

「厨二は私の大事な友達で、それは君もわかってくれたじゃない?だから前田君とのことにも協力したいって、私の友達のことなら協力したいって言ってくれたのに‥どうして?最初から嫌だったの‥?本当は最初から嫌だったの?」

俺のことはずっと君。君って。そのくせ前田のことは前田君。君ってだれだよ。



話したくない。聞きたくない。

もうやめてくれ。

『もう話したくない』

感情が昂り過ぎて、急になにも感じなくなった。


「ごめん、聞こえなかった。なぁに?」

聞こえないように言ったんだ。

『そうじゃないけど‥今はあんまり乗り気じゃない。』

「どうして?」

だから言いたくないんだって。

『それは言いたくない。言ったら‥よくないと思う。』

ただ聞くだけで考えてくれないなら、少し時間をくれ。

「言ってよ。ちゃんと聞くから。」

だから

『今日はやめよう。言うなら会って言いたい。』

少し時間がかかるけど。。


「わかった。ごめん、私のわがままで‥。」

いや、元はと言えば俺のせいだ。

『いや、いいんだ、俺が悪い。』


「ごめん、わがままついでだけど、私このまま電話切りたくない‥もう少し話さない?」

。。。断りたい。けど

『うん、いいよ。なに話そっか?』

話題を変えれば、まぁ大丈夫か。


「聞きたかったんだけど、君が告白してくれた日、あるじゃない?あれ、どうしてあの日だったの?」

『どうしてって‥』

いつ告白するかなんてずっと考えていたよ。

誘ってくれたのはさぎりからだけど、でも実行に移したのは俺だろ?

あれ?なんだ?言葉になって出てない。。

「だって、あの日誘ったのは私じゃない?だから、あの日私が誘わなかったら、どうなってたのかなって」

俺はあの日に告白しなかったらどうなってたか聞きたいんだけど。

『どういう意味?』

なぜ素直に聞かない?

話している相手はさぎりなんだぞ?

『俺はあの時期、いつさぎりに言おうかずっと考えていたよ。さぎりが誘ってくれたけど、話を強引に進めたのは俺でしょ?俺こそ聞きたいよ。俺が告白しなかったら俺達は付き合うことはなかったのか?って』

全然素直になれない。言いたいことはそのままだけど、こんな言い方はしたくなかった。。

「ごめん、そんなに深い意味はなかったんだけど‥今日はもう、話すのやめよっか‥」

そうだな。フォローしようとしても悪い方向にしかいかない。

『ごめん。俺も言いすぎた。ちょっと冷静になれなくて‥。今度ちゃんと話そう。』

少しでいいから時間がほしい。

「うん。おやすみなさい。」

『おやすみ』

その日...俺は全く眠れなかった。














あれから丸2日間、さぎりからの連絡はない。

本当に待ってくれているみたいだ。

ゆっくり考えられると思う反面、少し寂しい。でも、今はこれでいいんだ。

ちゃんと考えたいから。

思えば本当にタイミングが悪かっただけだ。

前田のことも、さぎりがなんとも思ってないのはわかっている。

俺だけを好きでいてくれていることも。

でも、だからこそ俺は特別の証がほしかったんだ。

お揃いのアクセサリーとか、そんな高価な物じゃなくていい。

俺は、さぎりに告白をして彼氏に選んでもらった時から、「君」ではなくなったんだと思っていた。いや、実際はなくなってるんだ。

単純に証拠がほしいんだ。名前で呼んでほしいんだよ。

これから沢山増えていくであろう思い出を振り返る時がきて、その記憶の中でも「君」と呼ばれていたら寂しいと思わないか?

俺は思うんだよ。だから、ちゃんと呼んでほしい。

それだけだ。簡単だよ。

会ったら、ちゃんと話そう。

前田のことは大した問題ではないけど、嫉妬の対象になったのは、あいつが相当なイケメンで、運動神経もよく、明るく気さくで、人気者だからだ。俺はそんなあいつとはずっと仲が良い。あいつの能力に嫉妬したことなんて、これまで一度もなかった。だって、俺には音楽がある。あいつは運動が得意で、俺は音楽が得意。男同士なんて、それだけで対等でいられる。

今回の厨二さんとのことも、俺とさぎりのことがしっかり解決できれば、協力できると思う。

だから、「嫉妬」の対象じゃなくて理由の話をするべきなんだ。


さぎりはきっと自分からメールをくれると思う。

この間はっきりと、「告白したのは俺からだ」って言ったから。

きっとそのかわりに「今度は自分から」って動いてくれるだろう。。

いや、こなかったらどうしよう。。などと気を揉んでいたらきた。

内容は至って簡単。

「今日の放課後会えないかな?」

一見そっけなくみえるけど、これはさぎりの気遣いだと思う。

内容が簡潔な方が、余計なことを考えずに済むからね。

そう。冷静でいられれば、さぎりの行動の意味も、ちゃんと理解できる。

『大丈夫だよ。雨降りそうだから、この間みたいに教室にする?』

ありがとう。メールくれて。

「公園にしよ?私、学校終わったらすぐいくね」

やっぱり。話し込みたい時は、いつも公園だもんな。


『わかった。俺もすぐいくね。』

そうと決まれば、これ以上待たせる訳にもいかない。

必ず先に行って待っているようにしよう。




「この間はごめんね」

これが第一声だった。

ごめん、かなり追い詰めてしまっていたんだな。

『いや、俺こそ‥。』

話そうと言ってくれたのはさぎりだ。

だから、先にさぎりの言葉を聞こう。

「ねぇ、やっぱりちゃんと話してほしい。厨二達のこと、どうして急にやめたくなったの?」

ありがとう。今ならストレートに聞いてくれた方が答えやすい。死ぬ程恥ずかしいけどな。

『うん‥それは‥。』

ここまできたらちゃんと言え!

しかも本題はそれじゃないだろう??

『前田が、俺よりかっこいいからだよ。』

よし。今度はちゃんと本音が口を突いて出た。

「それってどういう‥」

嫉妬。だよ。

『4人で出掛けるってことは、さぎりと前田の距離も近くなるってことだ。あいつは、俺よりずっといいやつなんだ。だから‥』

不安なんだ。この不安を乗り越えさせてほしい。

「私は、君のことだけ好きなんだよ?」

わかっているよ。痛い程。

『わかってるけど‥』

消えないんだ。この寂しさが。

「私、君のこと、ちゃんと支えられてないのかな?‥」

そうじゃない。俺を支えてほしいんだ。「君」じゃなくて。


『そんなこと』

「だってそうでしょ!?こんなに大好きなのに、君は不安なんでしょ?支えてあげるどころか、それじゃかえってお荷物じゃない‥」

今度はさぎりの方が混乱してしまったみたいだ。この間とは逆。だけど、今ならちゃんと

『そうじゃないんだって‥』

ただ、なんと言ったらわかってもらえるんだろうか。






そうか。俺も今本当の答えがわかった。

気付いてほしいんだな。さぎりに。俺が何故不安なのか。何故寂しいのか。

俺、こんなにめんどくさいやつだっけか。。?

『ちょっと‥どこいくの?』

さぎりがふらっと歩き出した。

考える時間が必要。。なのか?







『ねぇ、風邪ひくよ?』

しばらく黙っていたけど、さすがに見過ごせなくなった。振り返ったさぎりは悲しそうな顔していた。

大丈夫だよ。簡単なことだから。

「私、君の彼女に相応しくない‥」

違う。

『そんなことないよ。俺がこんなにさぎりを好きなのに、なんで相応しくないんだよ』

本心。

「だって‥すごく不安そうだったから‥」

それも本心だよ。だけど

『さぎり。それはね、さぎりのことが本当に好きだからだよ。逆に言うと、この不安は、さぎりにしか消せないんだ。自分でなんとかしたいけど、できないんだ。』

対等でありたいんだ。

「私も、本当に君が好きだよ。それじゃ足りないの‥?」

はっきり言おう。

「足りないよ。」

想いだけでは。

「なにが‥足りないの?」

考えてみてほしい。

『さぎりと俺の違い、なにかわかる?』

振り返ってほしい。あの日からの3ヶ月を。

「違い‥なんだろ‥?」

どう言えば。。そうか!そのままだ。

『具体的に言えば、俺はしているけど、さぎりはしていないこと。』

「告白のこと?」

いや、それは

『それもそうだけど、今日誘ってくれたのは、告白の変わりだろ?だとしたら別のことじゃないか』

否定しない。ということは、やっぱり今日誘ってくれたのは。。。


「あ!」


ん?


「あ!」


え?


もしかして




『気付いた?』


「君を‥名前で呼んでない‥」

そう!それだよ!

『よくわかったね。さすが!』

一気にテンションが上がった。単純だな。男って。

「ごめん‥全然気づかなかった‥。君って呼びなれてしまったから‥。」

わかってるよ

『いや、いいんだけど、やっぱり名前って特別じゃない?俺だけの物だし。だから、例え苗字でも、ちゃんと呼んでもらってる前田に、ちょっと妬いてた‥。ごめん。』

本当は他にも理由があるけど、それはいい。

今は気付いてくれただけで十分だ。

「い、いや、私こそごめん‥ちゃんと名前で呼んでなくて‥しかも、気づけなくて‥」

気付いてくれたからいいよ。それより

『大丈夫?顔赤いけど‥熱っぽい?』

恥ずかしいんだろうなぁ。

「だ、大丈夫!全然大丈夫!!」

真っ赤だけどな笑

『そ、そう?‥えっと、ごめん。なんか言ったらちょっとすっきりしてしまった‥えっと、でも、時々は名前で呼ばれたいなぁなんて‥』

これははっきり俺からも言わないとな。

「〇〇‥」

なっ!いきなり??

『え?』

もう一回呼んでくれ!


「〇〇!」

『お!?』

いや、からかってる訳じゃない。

嬉しいんだよ。

「恥ずかしい!本当に恥ずかしいけど、なんとか呼べるようにする!だから不安にならないで、私が好きなのは、〇〇だけ!!」

顔文字にするとこんな感じ(>_<)になってるけど。

さぎりが。。。すごく必死だ。

ごめん。こんな小さなことで。

『あ、ありがとう‥ごめんね、こんな小さなことで妬いて‥』

気付いたら抱きしめていた。

本心が言葉じゃなくて行動に変わった。

「私こそごめんね‥君のこと、ちゃんと考えられてなくて‥」

お互い様だろう。

「私も一つお願いしていい?」

『え?うん。いいけど‥』

木村さんでしょ?

「木村結さんの話ばっかりしないでほしい‥綺麗な声だし、歌上手だから私も好きだけど、君が夢中になりすぎたら私は嫌いになっちゃいそうだから‥」

やっぱりね。

『わかってるよ。』

それは、

『前田の件の、仕返し。』

「〇〇って、ちょっと意地悪だよね‥」

自分でも仕返しだと気付いのは、昨日だけどね笑

『そうだな。でも、こうしてる時なら、冗談で済むだろ?』

少なくとも俺は安心している。なにも怖くない。そうだ。離れたくないなら、離さなければいいんだな。

「雨もいいかも‥。」

え?

『ん?あれだけ嫌いだったのに?』

あぁ。。

「傘の中で、〇〇がぎゅーってしてくれるから」


うん。雨も、悪くないな。

















男って面倒くさいなぁ。

よくプロポーズのシーンなんかで、「僕が必ず幸せにします!」とか言うけど、多分男が女に幸せにしてもらうんだろうなって思う。

その考え方に至ったのは、今回の話がきっかけだな。

これだけではっきりわかった訳じゃないけど、ここから少しずつ考えるようになった。

それに、考えは言わないと伝わらないんだと思った。だから、我慢し過ぎて相手の気持ちを考えられなくなる前に、もっと言えば言葉を選べるうちにちゃんと話し合いをした方がいいんだよなぁ。

俺達は、今回のことをきっかけによく話し合うようになって、今では大きなケンカはほとんどなくなった。

本心を言うことは、すごく大事だ。良いことも、悪いことも。

今回の話は、俺達が少し大人になるきっかけとなった大事な時期として、語らせてもらうことにしました。

前半はかなり険悪だけど、今となってはいい思い出だよ!



それにしても、あの時のさぎりの顔は可愛かったなぁ。笑















(>_<)












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