心の隙間、雪の街
春嵐
心の隙間
心に、隙間があったのだと思う。
小さくて、それでも、関係を破綻させるのには十分な隙間が。わたしの心にあった。
彼はわるくない。わるいのはわたし。わたしが、彼に頼りすぎたから。心の隙間が、私自身の持つ防衛本能と結びついて。彼を拒絶しはじめた。
彼はやさしい。だから、彼に頼ってしまう。彼の存在に、安心を求めてしまう。それは、彼にとっての負担でしかない。
仕事。
雪。
仕事をしている間は、彼のことを忘れていられる。どうでもいい
それでも。
仕事はいつか終わる。
彼との関係は。
終わるのか。
わたしは。
終わらせたいのか。
自分のなかに、こんな感情が。心が。こんなことになるなんて、思ってなかった。ドラマとか歌でしか、存在しないと思っていた。
好きだから、離れる。
彼のことが好きだから。彼の負担に、なりたくなかった。きっと、彼のこれからの人生に、わたしは、必要ない。それが分かる。仕事をしながらでも。分かってしまう。
わたしなんかより、いいひとがいるとか、そんな感じではない。わたしと彼が、合わない。彼のやさしさに、
雪。
この雪みたいに。
思いも、彼を好きだった感情も。いつか、融けて、なくなるのかもしれない。
ただ、今は。
心の隙間に、彼のやさしさだけが。
静かに、刺している。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます