09話.[それでいいから]
「よう」
「あれ、今日はどうしたの?」
丁度家事を終えたタイミングで宮本兄妹が家にやって来た。
ただ残念ながら都はあの気になる男の子と遊びに行ってしまっているという……。
「あ、都はいないのか」
「うん、遊びに行っちゃったんだよ、ごめんね結ちゃん」
「だいじょうぶ、新くんとお兄ちゃんがいてくれればそれでいいから」
結ちゃんにこう言われると何故だかうぐっとなる。
これが天然パワーなのだろうか? ……優莉奈に言ったら絶対に怒られるけど。
「いきなり来て悪いな」
「気にしないで、飲み物しか出せないけど」
都はあれでいてお菓子をあまり食べないようにしている? のかそういうのを常備しているような家ではなかった。
炭酸などもめったに買わないからお客さんに出すのはどうしても麦茶になる。
でも、麦茶も美味しいからがっかりしないでほしかった。
「佐々木、風間ばかりではなくもう少し相手をしてくれよ」
「え、ちゃんとしているよね?」
「してないよな、なあ?」
「してない、新くんの頭の中にはゆりなさんしかいない」
宮本兄妹といられるのもいいけど集まるとすぐにこれだ。
そりゃまあどうしたって家族とか彼女とかの優先順位は高くなる。
先程も言ったように僕はちゃんと相手をしている状態でこれなら……もうどうしようもない。
「……ほ、ほら、今日はひとりだから許してよ」
「呼んだりしていないのか?」
「うん、彼氏彼女の関係だからって毎日いるわけじゃないよ」
実は少しだけ止めているのもあった。
そうしないとそれはもう自由にされるからだ。
彼女の肉食性というのはいまに始まったことではないものの、圧倒されてばかりだから困る。
僕が大胆に行けばタジタジになってやめたりしないだろうか?
……次に会ったときはいきなりキスをしてやろうと決めた。
「結ちゃん、学校での都ってどんな感じ?」
「最近は男の子とばっかりいる」
「もしかして相手をしてくれてない?」
「ううん、それはちゃんとしてくれているけど……さびしいよ」
とはいえ、気になる子と過ごしたいと考えて行動している都が悪いわけじゃない。
結ちゃんが自分勝手というわけでもないからこの件はどうしようもないことだ。
一緒にいられるときにとにかく仲良くしておくしかない。
「結ちゃん、都と仲良くしたいなら積極的にいかないと駄目だよ」
「……うん、いっしょにいられないのはいやだから」
「そっか、じゃあ一緒に頑張ろう」
「はは、佐々木はなにを頑張るんだ?」
「都に嫌われないように、かな」
せめて喧嘩別れみたいな風にはなってほしくない。
「俺も結に嫌われないようにしたいな」
「お兄ちゃんのことは好きだよ?」
「はは、ありがとよ」
好きだって言ってもらえるように頑張ろうと決めた。
家事とかを一生懸命にやっていれば大丈夫だろうと片付けたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます