第10話 ありのままの海へ想いを解く
かくして、ウォルチタウアーは職権濫用、マフィアとの癒着、殺人容疑で捕まり、見張る側から見張られる側になった。
地下室で伸びていたトミー・フェラーリはかつての罪状を突きつけられ、手錠を掛けられた。
ライセンス――彼はかつて〝 LICENSE TO KILL = 殺害許可証 〟の異名を持つ一流の殺し屋だった。
獄中でもその腕は衰えてはいなかった。
手術で首の発信機は取り除かれた。
この一件で彼の夢は儚く散ったが、代わりにかけがえのない友を得た。
彼は再び本を取り、そこにいる価値を見出そうとした。
「……だいたい九年も前に奪われた金を取り戻そうなんて……どうかしてる。なあ、ライセンス」
「ウォルチタウアーはナピスの元幹部で闇が深い」
「どうでもいい。その執念に笑っちまう」
「ああ。金は人を狂わせる」
「ジャックは悪党のレッテルを貼られ、確かに盗賊として生きた。だがそれは不条理な世を正すためだ。私欲ではない。いつも誰かのために。彼は聖者だった……」
ブリウスは目を閉じ、遠くの海を思い浮かべた……。
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海を見つめ、クリシアは想いを解き放った。
ありのままの海、それは美しかった。
それは雄大で区切りがなかった。
それは素朴で飾りがなかった。
それは無言で真実に満ちていた。
それは光り輝いていた。
それは生命、どこまでもありのままの海だった。
車を走らせる。
バックシートにはギターケース。
ラジオからR.J.ソローの曲が流れる。
ブリウスとの思い出が巻き上がる。
また冬が来る。
涙を拭き、クリシアはしっかりと前へ進んだ……。
END
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次回、〝もうひとつのENDING〟でラストです。
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