スキル【守護霊獣】が過保護すぎる件 ~無能はいらないと追放されたら、何もしてないのに勝手にそのパーティが崩壊した。君は何もしてないよね守護霊獣さん?「もふ!? コンコン!(な、なんのことかな!?)~
第14話:不幸はもう始まっている(ガルド視点、ざまあ有り)
第14話:不幸はもう始まっている(ガルド視点、ざまあ有り)
一方その頃。
「くそっ!!」
ドンッ! という壁を叩く音が宿屋に響く。
高級宿屋の一室。その中でもそこは最も高い部屋であり、常にガルド達【遊撃する牙】が拠点に使っているのだが、今はこの部屋には三人しかいなかった。
壁を叩いて苛立ちを隠さないガルドに、ベッドに腰掛けていた女魔術師が呆れたような声を出した。
「落ち着きなさいよガルド。みっともない。ただですらあたし達は今、笑いものなんだから」
彼女は吸っていた煙草の煙を吐き出した。煙草の臭いと香水の匂いが立ちこめており、ガルドは不快な表情を浮かべた。
「うるせえ!! くそ! おい、あのクソ狐はまだ見付からないのか!?」
「すすす、すみません! 今、もっか捜索中でして……」
最後の一人は、この宿屋の従業員の青年だ。もはやガルド達の小間使いのように使われており、今も意味もなく文句を言われ続けていた。
「さっきもそう言ってたじゃねえか!! この愚図が!」
ガルドが青年を足蹴にする。脚甲を履いたままの重い一撃に青年は耐えられず、床へと倒れてしまう。
「お前ぐらいの奴なんてな、俺レベルになると、いくらでもどうにでも出来るんだぞ!?」
「す、すみません!」
青年は下を向いて、必死にその理不尽な暴力に耐えていた。これ以上の失態を重ねれば本当に殺されてしまうかもしれない。実はさっきベッドサイドの魔光ランプのマナオイルを交換する時に、大量の油を下のカーペットにこぼしてしまったのだが、それがバレてしまったら絶対にマズイと考えていた。
「おい! あいつらはいつ帰ってくるんだ!? あいつらがいないと依頼もこなせないだろ! Sランク選抜はもうすぐなんだぞ!」
「うるさいわね。私に怒鳴ったって意味ないわよ。どうせあの筋肉馬鹿は男漁りにでも行っているのでしょ? それにあいつは……しばらく再起不能よ。限界まで回復術を使わすから……あーあ、馬鹿みたい。あんたのみっともないプライドのためだけに貴重な回復士を使い潰すなんて」
「あん? 何調子に乗ってるんだてめえ!」
険悪なムードを察知して、青年が静かにその部屋から退散する。こうなると近くにいるだけで、巻き込まれてしまう。出来れば、気化した油が充満するあの部屋の窓を開けて換気をしたかったのだが、こうなっては仕方ない。
だから青年がそっと後ろ手で扉を閉じて、その前から離れた瞬間――壁を叩く音とは比ではないほどの爆音が響いた。
「へ?」
結果として――高級宿屋の一室を、死闘で爆破したとして【遊撃する牙】には多額の請求がされたという。
だが、不思議な点がいくつかあった。
爆破魔術を使える女魔術師がなぜか
そして、同じく大やけどを負いながら、何とか意識を保っていたガルドはこう主張したという。床に落ちた煙草が爆発した――と。
だが部屋の清掃を担当していた従業員の青年がこう証言したせいで、ガルドの主張は結局、最後まで認められることはなかった。
「あの日はいつも通り清掃を行いましたが……異常は何もありませんでしたよ。ああ、そうそう、そういえば廊下で狐とすれ違ったような気がしましたけど……あはは、宿屋の廊下に狐なんているわけないので気のせいですね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます