第4話:傍観者:つまりは嵐の中のハンパ者

ブイがただよう。

行き場を無くし、風にさらされ、波にまれる。

体育の授業。

バレーボール。二人一組でトスの練習。

今岡が一人とり残される。

どう見ても不自然だ。

女子は偶数で割り切れる。

西野と八坂が強引に3人でトスの練習をしている。

教師も何も言わない。

だから今岡は一人トスを上げる。

ボールを指ではじく音が、廃業間近のさびれた工場の生産音のようにカスカスと体育館のだだっ広い空間に響き渡る。

今岡にみじめなスポットライトが当たる。

まぶしすぎて目が痛い。

たまらんなあ……。

やりきれない。

もし今岡を私のトスの相手に入れてやったら、今度は私があのライトを浴びることになる。

尻の穴がもやーっと熱くうずいた。

正直怖い。

どんな気持ちなんだろう?。想像もつかない。

耐えていけるんだろうか?。

ただ見てやり過ごすしかすべを持たない自分が恥ずかしいのか腹立たしいのかかしこいのか分からない……。


昼休み。

一人弁当を食う今岡。

メシの味なんてしないだろう。

チャリッと今岡ががねを外してプラスティックの弁当箱を重たそうに開ける。

直射日光に当たる冷えた弁当の調理油ちょうりあぶらがチラチラとテカッている。

人参にんじんの朱色、グリーンピースの黄緑、とうもろこしの山吹やまぶき色が湿気でくたびれてトロトロと混ざり合っている。

ジャケットの紺色ににぶえて、私は思わず目をひそめる。

それでも今岡は口に入れる。入れ込むしか仕方がない。

そして、やさぐれてガムを噛むようにくちゃくちゃとあごを動かす。

その音が私の耳元にへばり付く。

喉元のどもとの筋肉がグッと硬直こうちょくした。

スパゲティのミートソースのケチャップの酸味が胸を突いた。

私は一応、同じ演劇部の女のグループに入れてもらっている。

セコい幸せ。

あまり群れるのは好きではないが、こういう光景をの当たりにすると、取りあえず入っていて良かったとは思う。

煙たい野郎だ、私……。

一匹が好きならとことん一匹で貫くべきだ。

でも、できない。

甘いんだ、しょせん……。

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