第2話:構造分析:西野とその愉快な仲間たち

西野だ。

今岡は西野にやられた。

西野はこの学校を仕切っている女子生徒。

その西野の相棒の八坂やさかってのが浅倉を狙っている。

だから、みんな、怖がって浅倉にはあえて手を出さない。

今岡はタイミングが悪かった。

女子が群れ合うグループは部活によって色が出る。

体育会系、文化系、ハデ系、オタク系。

西野はハデ系で、放課後、部活をしないで街に出てショップをウロウロして雑誌に載るカフェで一服している。

ハデとは言うが、一昔二昔前のチーマー、スケバンとは違う。

どこか垢抜あかぬけしていてスマートだ。

要領がいい。

化粧も夜遊びもするが勉強もする。

校則にはアナーキーだが、自分たちの人生はドロップアウトしないというわけだ。

おまけに西野も八坂も数学がズバ抜けて得意ときやがる。

自分たちの価値観に従って生きるが、体制側の面子めんつも立たせてやっている。

この学校は伝統的に理数系の進学率が悪い。

だから、教師たちは何も言えない。

この西野という女、一浪で入ってきてぐに学級を仕切り始めた。

同じく、中学時代、学級を仕切っていた八坂とウマが合い、強力な統制勢力ができ上がった。

このグループに歯向かうとちょっと厄介やっかいで学校ではまともに生きていけない。

実際に暴力を振るうわけではない。

大抵たいてい、今回の今岡のように徹底的な無視か中傷で精神的に追いつめるやり方だ。

しかし、暴力的な威圧いあつはある。

西野たちはいつも5人で行動している。

八坂の他に、暴力を振るう川田、良からぬ噂を流す樫山かしやま、生徒たちの情報を集める中村。

この3人の仲間、と言うより手下・通称「3人組」がいて、こいつらは本当にハデなだけのバカである。

典型的な落ちこぼれで勉強をしない。

卒業後、専門学校に行って適当に結婚してスーパーのレジ打ちをやるのが関の山。

一流大学を出て、外資系の上場企業に入社して、総合職にいてたま輿こしを狙う西野と八坂とはエライ違いだ。

校内のイジメのきっかけは西野と八坂の気まぐれなのだが、

無視にしろ嫌がらせにしろ暴力にしろ、

実際に現場を動かし、手を汚すのはこの3人だ。

西野と八坂に利用されていることに気付いていない。

気の毒な話だ。

むかつくが、この3人には、こざっぱりと、多少の不器用もののシンパシーもある。

勉強は勉強、遊びは遊びと、西野や八坂のように気持ちのえがうまくいかないのだろう。

みんな、この兵隊の圧力が怖い。

男子も同じだ。

西野たちに歯向かうと、女子ほどではないが、校内ではやはり生きづらい。

村八分むらはちぶになる。

全生徒数の25%。

多勢に無勢だ。

 しかし、この浅倉という男……。

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