第151話 夏の休み開始!
今日は夏の休み初日だ!!
俺は朝から公爵家の皆さんに挨拶をして回り、ロニーとの集合時間に間に合うように屋敷を出た。
里帰りは流石に俺一人なので、ロジェは付いてきていない。最初はロジェも付いてくるって言ってたんだけどね、流石に俺が断った。別にロジェがいるのが嫌ではないんだけど、ロジェも俺がいない間に休暇を取れるかもしれないし、俺の家族もロジェがいたら気が休まらないだろう。
そういえば……、ロジェって家族はいるのかな?
王都出身ってことは聞いたことあるけど、ロジェの家族について聞いたことはなかった。うーん、こういうことって本人から話してもらえるまで聞かない方が良いのだろうか? とりあえず、聞くのはやめておこうかな。
仲良くなっていけばそのうち話してくれるよね。
そんなことを考えつつ広場まで歩き、集合時間より少し早く広場までたどり着いた。
広場に着き辺りを見回すと、遠くにロニーがいるのが見える。なんかロニー、めちゃくちゃ大きい鞄? 布袋? を持ってるけど、何をそんなに入れてるんだろう。あれに物を詰め込んだらかなり重いだろう。
俺は、そんな重い物を持っているロニーを待たせるのは大変だと思って、足早にロニーの元へ向かった。
「ロニー、お待たせ」
「レオン! 僕も今来たところだよ」
「それ、何が入ってるの? 重くない?」
「ああ、これね。今は何も入ってないから重くないんだ」
「そうなの? じゃあ何でそんなに大きな袋を持ってるの?」
「これは、孤児院の皆へのお土産を入れる予定なんだよ。向こうに着いたら長持ちする食材を沢山買って、それを持っていこうかと思って。屋台の仕事で少しお金が貯められたからね」
ロニーはそう言って、にっこりと嬉しそうに笑った。
うぅ……ロニー良い子。良い子すぎる。俺も何か孤児院にプレゼントしたいな。
数日は泊めてもらうんだし、手土産は必須だよね。
「じゃあクレープは俺からのお土産ってことで、クレープの材料は俺が買うよ」
「そんな悪いよ。別にレオンはお土産なんて買っていかなくても良いんだよ?」
「ううん、俺が買っていきたいだけだから。それに泊めてもらうのに手土産もなしじゃ悪いでしょ?」
「別に何もなくて大丈夫だと思うよ? まあレオンが買っていきたいのならいいけど……」
「うん、俺が買っていくよ! じゃあ市場に行こうか」
そうして俺とロニーは市場に向かい、クレープの材料を買って乗合馬車に乗った。
クレープの材料は、小麦粉など長持ちするものは少し多めに買っておいた。残ったら孤児院に置いてくれば良いからね。
それからしばらくは久しぶりの乗合馬車に揺られ、数時間でロニーの孤児院近くに着いた。久しぶりにクッションのない馬車に乗ったけど、やっぱりお尻が痛いし疲れるな。乗合馬車と比べると改めて感じるけど、公爵家の馬車って本当に乗り心地最高だ。
うぅ〜ん、俺は馬車を降りて思いっきり伸びをした。固まっていた身体が伸びて気持ちいい。そして伸びをしつつ、馬車乗り場の周囲をぐるっと見回してみる。
実家周辺とあまり変わりはないな。王都は実家周辺と中心街しか行ったことがなかったから、ちょっとだけ別の場所を楽しみにしてたんだけど、変わらないんだね。まあ、乗合馬車乗り場があるのは大通り沿いだし、そこは変わらないか。同じ王都だし。
「レオン、こっちに市場があるんだ。孤児院も同じ方向だから行こう」
「わかった。王都はどこも、あんまり変わらないんだね」
「まあ同じ王都だからね。僕もこの辺と中心街しか知らないけど、やっぱり同じような感じ?」
「かなり似てるよ。特に大通りだからかもしれないけど」
「確かに大通りはどこも同じような感じかもね。でも路地に入っても工房があってアパートがあって、同じような感じじゃない?」
「確かにそうかも」
そんな話をしつつ俺とロニーは市場に向かった。その後はついに孤児院か、ちょっと緊張してるけど楽しみだな。今まで教会に入ったことはあるけど、孤児院に入ったことはないんだよね。
どんなところなんだろう。孤児院の情報なんて手に入れる術がなかったし、孤児院の子供達と交流するようなこともなかったし、全くわからない。
というか、普通に孤児院に泊めてもらう予定だったけど、俺って孤児院に入れてもらえるのかな? そして泊めてもらえるのか?
なんか不安になってきた。
「ロニー、聞いてなかったんだけど、孤児院って俺も入っていいの? 泊めてもらう予定だったんだけど、もしかして難しかったりする?」
「ううん、僕の孤児院は大丈夫だよ。孤児院によっては断るところもあるかもしれないけど、僕のところは凄く当たりの孤児院なんだ」
「孤児院に当たりとかあるの……?」
「うん、結構あるみたいだよ。僕も勉強して色々調べて知ったんだけど、孤児院は一応国営だから国から費用が出されてるでしょ? でもそれを職員さんが私的に使ってるところもあるらしいんだ。それによって子供たちの食べるものが減って苦しいところも多いみたい。まあ、それでも生きていけるぐらいは食べさせてもらえるらしいけどね」
……それって犯罪じゃないの?
そんな孤児院がそのままなんて。それに、酷い孤児院なら子供が逃げ出して訴えるとか、当たりの孤児院に子供が殺到するとかが起こりそうだけど。
「それって犯罪だよね?」
「そうだけど、そこまで大きな金額でもないし、少なからずそういう事をやってる孤児院が多いんだって。だからそのまま放置みたいだよ。それに国が平民の、それも孤児を気にかけてくれることなんてないよ。もっと大きな問題が沢山あるんだろうし。私的に使ってると言っても、良い食材を買って職員だけで食べるとかその程度だからね」
「そうなんだ……。当たりの孤児院に子供が殺到するとかはないの?」
「それはないかな。実際に生活してみないと、どの孤児院が当たりかはわからないから。ハズレでも生きていくことはできるし、最初に辿り着いた孤児院にずっといるのが普通だよ。そもそも当たりを知らないから、ハズレということに気づかないと思う」
そっか……そうだよね。
やっぱり孤児院があるとは言っても、孤児って過酷なんだな。多分国も問題を解決したいと思いつつ、他にたくさんの問題があって後回しにしてるんだろう。仕方がない部分もあるんだろうな。
「ロニーは当たりの孤児院で良かったね」
「僕は本当に運が良かったよ! 孤児院での生活は大変なこともあったけど、凄く楽しかったよ。勉強も教えてもらえたし。皆に会うのが楽しみだ!」
「俺もどんな人がいるのか楽しみだよ。友達になれるかな?」
「同い年の人も結構いるよ。でもレオンは友達じゃなくて従業員を雇うんでしょ?」
「そうだった。働きたいと言ってくれる人がいたら、面接して雇う予定」
「じゃあ、まずは僕がレオンのお店で働くのに適している人に声をかけてみるよ。あとはレオンも気になった人には声を掛けてあげてね」
「うん! ありがと」
そうして俺たちは、話に夢中で遅くなっていた足を速く動かして市場まで急いだ。そして市場でたくさんの食料を買い、孤児院にやってきた。
ロニーが育った孤児院は、俺の実家近くの孤児院と同じように教会併設のようだ。真ん中に教会があり、その左右に孤児院と治癒院がある。多分どこも同じ作りなんだろうな。
ロニーは慣れたように孤児院の方に向かい、入り口のドアを開けた。鍵はかかっていないようだ。
「夜以外は鍵をかけないんだ。盗まれて困るような高価なものはないし、孤児院は来るもの拒まず去るもの追わずがモットーだから」
そのモットー、孤児院として良いのか悪いのかわからないな……まあ、誰でも入れるのは良いことなんだろう。
扉を開いた先は広い食堂のような場所だった。大きな机と椅子が沢山あり、いくつかドアがあるのが見える。今は誰もいないようだ。
ロニーは躊躇なくその中に入っていくので、俺もロニーの後に続いた。
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