第147話 お店の改装

 改装って結構時間がかかるから、できる限り早く始めた方が良いだろう。二人の意見も聞いて、今日には改築案を出しておこうかな。店舗にいる時の方が、イメージが湧きやすいし。

 そう思って、二人に改装案を聞いておくことにした。


「じゃあ店舗をどんなふうに改築したいか、三人で意見をまとめようか。まずはロニー、何か意見ある?」

「うーん……とりあえず、外観と基本的な内装はそのままで良いと思う。でもカウンターは変えた方が良いかな。今は木で作られた質素な感じだけど、カウンターもレンガを使ってオシャレにした方が良いと思う」

「確かに、その方が良いかも。カウンターには氷で冷やすガラスのショーケースを作ろうと思ってるんだけど、その土台部分をレンガで作ればいいかな?」


 この世界は中心街になら普通にガラスがあるから、ガラスを使うことはそこまで目立たないと思うんだよね。ただ問題は作れるかなんだけど。まあ、やってみないとできるかなんてわからないよね! 幸い氷は作り出せるし、可能性はあるはずだ。

 もしダメだったら普通のカウンターにしよう。そして普通に冷蔵庫を作るしかない。もし冷蔵庫も作れなかったら…………、その時は地下室に保存しておくしかないな。それはかなり不便だから、せめて冷蔵庫は完成させたい。


「え……、ガラスを使うの!? それに、しょーけーす? って何?」


 そっか、この世界にはショーケースがないのか。確かにガラスは窓にしか使われてないかも。よく考えたらガラスの食器やコップもあまりないよね。貴族の屋敷にたまにあるぐらいだ。


「ガラスで中が見える箱を作りたいんだ。その中にケーキが入ってたらお客様も選びやすいと思わない?」

「それは確かに良いかもしれないけど……ガラスの箱って新しいものだから、作るのも大変じゃないの?」

「そうなんだよね。だからもし作れなかったら普通のカウンターにするよ」

「そっか、まあそれなら任せるよ」

「ありがと。普通のカウンターにする場合は、今の大きさでレンガにすれば良いかな?」

「うん! もう少し大きくても良いとは思うけど、今の大きさでも良いと思う」

「わかった。じゃあその方向で進めるね」


 そうしてカウンターについてロニーと方向性を決めたあと、次はヨアンの方を向いた。


「ヨアンは何か要望ある?」

「はい。料理用コンロなどを設置して、厨房の設備を新しくしていただきたいです。それからお風呂か、身体を拭ける場所が欲しいです」

「厨房は完全に新しくする予定だよ。お風呂も中庭に増築しようかなと思ってるんだけど、中庭じゃだめかな?」

「いえ、増築していただけるならどこでもありがたいです」

「それなら、お風呂は中庭に増築するね。更衣室も作るから」

「それはありがたいです!」

「やっぱり必要だよね。他には何かある?」

「そうですね……今のところ特には思い浮かびません」

「わかった。ロニーは他に何かある?」

「ううん、基本的にはレオンにお任せするよ」


 二人はそう言って頭を横に振った。よしっ、じゃあ後は俺がどんどん決めていこうかな。


「それじゃあ、とりあえず屋敷に戻ろうか。二人の意見を取り入れつつ、お店の改装については俺が決めてみるよ」

「うん! 仕上がりを楽しみにしてるよ」

「俺も楽しみです!」


 

 そうしてお店を決めて、馬車でロニーとヨアンを自宅まで送り届け、俺は屋敷に帰った。

 屋敷の自分の部屋に戻ったら、ここからは内装を決める時間だ。自分のお店の内装を、お金を気にせず好きに決められるなんて最高かも。なんかワクワクしてきた!

 俺は机に紙とペンを用意して、まずは必要なものを書き出していくことにした。細かいものは後で買い揃えるとして、時間がかかるものからだな。

 まずはカウンターとその上に置くケース、飲食スペースの机と椅子、それから厨房の調理台とシンク、料理用コンロ、オーブンはあったから改修だけしてもらおう。あとは休憩スペースにソファーと机かな。それからロニーの仕事用の机も用意しよう。

 ……大きなものはこれで全部かな? あっ、お風呂と更衣室を忘れてた。お風呂と更衣室を中庭に増築。地下室の光球も必要だったな。地下室の棚も改修して増やしておこう。

 うん、とりあえずこんなものだろう。


「ロジェ、とりあえずここに書いてあるものを用意したいんだけど、どこに頼めば良いのかな?」


 俺は紙を見せながらロジェにそう言った。


「はい。公爵家で贔屓にしているところがありますので、そこに頼めば良いかと思います。家具類は既製品を購入されるのでしたら商会で良いですが、デザインから決められるのでしたら工房に頼むことになります。それからガラスのショーケースは既存品がありませんので、工房に頼むことになります」


 家具類はデザインから頼むのもいいと思うけど、俺はそういうセンスってないんだよね……。とりあえず既製品を見て、気に入ったのがあればそれで良いかな。


「とりあえず家具類は既製品でいいかな。もし気に入ったのがなければ工房に頼むことにする。他にもお店に売ってないものは工房に頼むよ。お風呂や更衣室も工房だよね? 間取りとか考えておくね」

「かしこまりました。では諸々の手配をしておきます。次の回復の日にまとめて屋敷に呼び寄せるので良いでしょうか? それともレオン様が工房や商会を回られますか?」

「俺が回るよ、その方が早そうだし。家具とかは結局見に行かないとでしょ?」

「家具類は実物をご覧になりたいのであれば、お店まで伺う必要があります。屋敷に呼び寄せる場合は、デザイン画をご覧になれます」


 やっぱり実物を見ないとイメージが湧かないよね。全部のお店や工房を回るのが一番早いな。


「やっぱり実物を見たいから俺が行くことにする」

「かしこまりました。では次の回復の日に全てを回れるように手配しておきます」

「ありがとう。よろしくね」



 そうしてお店の内装についての話を進めて、また一週間後の回復の日、俺はロニーとともに工房や商会を回った。ヨアンはスイーツの研究をしたいということで、今回は別行動だ。

 まずは商会で家具を買ってお店に運んでもらう。商会にはオシャレな家具がたくさんあって、とても満足できる家具が買えた。ただ飲食スペースの机と椅子は数が足りなかったので、同じものを足りない数の分だけ追加で注文してくれるようだ。

 休憩スペースのソファーは、ふかふかで座り心地が良いものが買えた。座り心地が良過ぎて立ち上がりたくなくなる危険性もあるけど、疲れを癒してくれるだろう。

 最近はお金があり過ぎて逆に困ると思ってたけど、お金があって良かった。お金を気にせずに買い物できるのって、本当に最高! かなり楽しい!


「レオン、全部高いけど……、お金は大丈夫なの? もうかなりの金額になってるよね?」


 商会から工房への移動途中、ロニーにそう聞かれた。


「うん。魔法具開発と技術開発でお金はあるから大丈夫なんだ。気にしないで」

「レオンってそんなに稼いでたんだね。お金あるのは知ってたけど予想以上だったよ。ちなみに、まだまだあるの?」

「うーん、多分まだ一割も使ってないかな? それに使用料でどんどん増えていくんだよね」

「そっか……、凄いね……」


 ロニーが遠い目をしてそう言った。確かに、俺もそんな顔をしたくなるようなレベルの金額だ。まあ、こういう時にお金に困らないから本当にありがたいんだけどね。


 そんな会話をしつつ工房やお店を回り、最後にガラス工房にやって来た。ロジェがアポを取ってくれたので、俺たちが工房のドアを叩くとすぐに人が出てきてくれる。

 最後の注文だ、頑張ろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る