閑話 信仰心アップ大作戦(ミシュリーヌ視点)
私は覚悟を決めたの。この世界で私への信仰心を高めて神力を溜めて、神託をしてこの世界を救う!
神託はレオン本人かこの国の王にするわ。絶対にこの世界を、人間の世界を救ってみせるんだから。魔物なんかの好きにはさせない!
一番は中心街の教会にレオンか王が来てくれたら話は早いんだけど、どちらも来ない。これはもう仕方がないわ。だから教会の外にいる時に神託をしないといけない。
ただ神域の外である中心街の教会以外の場所への神託は、一気に必要な神力が多くなるのよ……数十倍かしら? 今の現状では全く神力が足らないわね。
そこでまずは信仰心を高めて神力が溜まるスピードを上げることにする。そして溜まった神力を使って神託をする。完璧な計画よね!
ただ信仰心を上げられなかった場合は計画が頓挫するけど……そんなことあるはずがないわ。だって、この私がやるんだもの!
そうして気合を入れたんだけど、その計画を立てた矢先に私のやる気を削ぐような事態が起こったわ。実は……レオンが礼拝室の手前まで来たのよ!
そのまま礼拝室に入ってくれれば神託ができる。さらに女神像に触れてくれれば、レオンと神託ではなく直接会話できる。そう思って期待したわ。
それなのに……それなのに、レオンは何で礼拝室に来ないのよ! 普通は自分の能力は女神様のおかげかもしれない〜とか思って、お祈りくらいはするでしょう!
レオンが帰っちゃってからしばらく落ち込んだわ。折角頑張らなくても解決したと思ったのに……目の前にどら焼きがあるのに食べられないみたいな気持ちだったわよ。
でも落ち込んでいてもしょうがないから、とりあえず最初の予定通りに信仰心を高めることにする。まあ信仰心を高めるために出来ることが、女神像を光らせることくらいしかできないのだけれど……
それでも何もやらないよりはマシよね。とりあえず、今の礼拝室の様子を見てみようかしら。
……人が少ないわね。三人しかいないじゃない。
熱心に祈ってる若い女と歳をとった男が二人。誰もいないよりはマシだけど、こんなに少ないと悲しくなってくるわ。私への信仰心はどれだけ下がってるのかしら……
とにかく、早めに光らせた方が良さそうね。ええと、光の種類は白くて柔らかい感じが良いのよね。そんな光が一番神聖な光として崇められるって、シェリフィーに聞いたことがある。今の神力を使えば……一日くらいは光らせられるわね。
よしっ……光れ!
「な、何じゃこの光は……」
「女神様じゃ、女神様が降臨なされたのじゃ! ありがたや〜」
「何と神聖な光……女神様……まだこの国をお見捨てになられてはいなかったのですね……」
ふふっ、完璧ね。礼拝室にいた三人は腰を抜かして驚いてるわ。この光をたくさんの人が見れば信仰心が上がるに違いない! さあ、腰を抜かしてないで早く他の人を連れてきなさい。
……誰もその場から動かないじゃない。なんでなの? 神聖な光に見惚れて目が離せないとか? 一度光を止めてみようかしら……
あ、三人とも我に返って動き出したわ。光に見惚れてたのね。後はたくさん人が集まったらまた光らせて、それを繰り返していれば確実に信仰心が上がって神力が溜まるようになるはず。私だってやればできるじゃない!
それからは人が集まったら一定時間光らせて、というのをしばらく繰り返したわ。朝早くから始めたのにもう夕方に近い。神力もそろそろなくなりそうだし……とりあえずはここまでにして休もうかしら。
こんなに頑張ったんだもの。残り少ない神力でご褒美を取り寄せてもいいわよね……? 私は自分の中で神力の消費を正当化して、クレープを取り寄せた。
最近レオンがクレープを開発したのよ。これは沢山食べないと失礼よね。う〜ん、すごく甘くて美味しそうな香り……幸せ。
そうして私がクレープを堪能して休憩していると、中央教会の礼拝室が騒がしくなってきた。何かあったのかしら。私はもう何もしてないけど……?
不思議に思って見てみると、礼拝室に見覚えのある顔の男が入ってくる。
確か……この顔は、この国の王じゃない!? 何でここに来たのよ! 女神像が光るって王様が来るほどの出来事だったの!?
それを早く教えなさいよ! もし知っていれば神託をするための神力を残しておいたのに……もうほとんど空っぽじゃない!
私のバカ、何で残しておかなかったのよ! もう本当に私ってバカ……とりあえず、あと数分なら光らせることはできるわ。それだけでもやっておくべきよね。うぅ〜、本当に私ってダメね……
……次は絶対に失敗しないわ。これからは神力が溜まるように、毎日少しだけ光らせるのに神力を使って、あとは溜めておくことにしよう。それなら信仰心も上がるだろうし、溜まるのも早いわよね!
それからしばらくして……
「ミシュリーヌ久しぶり。頑張ってるかしら?」
「シェリフィー来てくれたの!? ありがとう!」
シェリフィーが来てくれた。最近は本当に退屈だったから、凄く嬉しい。私は喜びのあまり、シェリフィーのところまで飛んでいき抱きついた。
「ちょっ、ちょっと、急に何よ」
「最近暇でしょうがなくて、何度地球まで行こうと思ったかわからないわ!」
「暇って……貴方は信仰心を高めるために忙しいんじゃなかったの?」
「そうだけど……神力は神託のために溜めてるから、毎日少しずつしか使ってないのよ。だから暇なの」
「あなたの仕事はそれだけじゃないでしょ? レオンのこともしっかりと見てるの? 魔物の森や他の国の様子は?」
「そ、それはちょっと、後でやる予定というか……これからというか。神力もないから……」
他の仕事のことなんてすっかり忘れてたわ。でも神力がないんだし、観察しても何もできないんだもの。それでもシェリフィーは把握してることが大切っていうんでしょうけど……
「ミ〜シュ〜リ〜ヌ〜〜、やるべきこともやってないのに何が暇よ!! それにその手に持ってるものは何かしら? それクレープじゃないの?」
シェ、シェリフィーが怖い……目が据わってるわ。これはやばいくらい怒ってる時の顔よ。ど、どうしよう、とにかく逃げないと!
私がシェリフィーから離れるように飛ぼうとしたその瞬間、シェリフィーに腕を掴まれた。
「これ、どうやって手に入れたのかしら?」
「そ、それは、レオンがこの世界でクレープを開発したから……取り寄せて味を確かめようと……」
「味を確かめる? 本当に理由はそれだけ?」
「う、うん。もちろんそうに決まってるわ!」
「そうなの。じゃああなたの後ろに大量に積んであるクレープは、何かしら?」
やばい……、たくさん取り寄せたところだったのを忘れてたわ。
「あ、あれはね、その、たくさん食べても飽きないかの検証を……」
「そんな検証必要ないでしょ! ただでさえ神力がなくて溜めてるのに、無駄に消費してどうするのよ!」
シェリフィーの雷が落ちたわ、怖すぎる……誰か助けて〜!
「あなたこの世界を守る気あるの!? 私の世界から魂を持っていったのよ! それを無駄にしたなんて結末は許さないわ……!」
「ご、ごめんなさい。ちゃんと、ちゃんと考えてるから! もう少し経ったら、神の領域の外にいる人間にも神託をする神力くらいは溜まるわ。そうしたらこの国の王に神託をするから!」
「本当に? そんなに上手くいくのかしら?」
そ、それは私もわからないけど、でも大丈夫よ。私がやるんだもの、失敗はありえないわ……多分。
「大丈夫よ!」
「はぁ〜まあいいわ。とにかく頑張りなさい。とりあえず差し入れよ。これを大事に食べて、クレープの取り寄せはやめなさい! わかったわね!」
凄いっ、どら焼きにお饅頭に和菓子がたくさん! ケーキもホールであるわ!
「シェリフィー、ありがと!!」
こんなにたくさんの地球のお菓子に囲まれてるなんて……幸せだわ。
「じゃあそろそろ帰るわね」
「え!? 今来たところじゃない、もう帰るなんて早すぎるわよ」
「でも私がいたら仕事の邪魔でしょう?」
「そんなことないわ! 休みも必要だもの!」
「あなたは休みばかりじゃない……」
「そんなぁ〜。私シェリフィーと会うのを楽しみにしてたのよ」
さすがに来てすぐ帰るなんて早すぎる。もっと話したいことがたくさんあるのに。
「クレープがたくさんあるから、クレープパーティーをしましょう?」
「何よそのパーティー」
「クレープを食べながら、その素晴らしさについて語り合うのよ」
「楽しくなさそうだわ……」
「シェリフィー酷い!」
「ふふっ……冗談よ。わかったわ、もう少しあなたと話してから帰ることにする」
「本当!? ありがとう!」
久しぶりにシェリフィーとゆっくり話せるわ! たまにはこういう時間も必要よね。
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