第24話 お好み焼き

 今日は俺とマリー、ニコラ、ルークの四人で、森へ採取に行く予定だった。

 しかし朝起きてみると、外は大粒の雨が降っている。


「マリー、今日は森へ行くのは無理そうだね」

「そうなの。行きたかったのに……」


 マリーがかなり落ち込んで、悲しそうだ。俺はなんとか励まさなきゃという使命感に駆られて、あわあわと慌てながら言った。


「マ、マリー、えっと……今日はみんなで料理するっていうのはどう?」


 俺が苦し紛れにそう言うと、マリーはぱぁっと顔を明るくして、ブンブンと縦に首を振っている。


「お兄ちゃん! みんなでお料理したい!」

「じゃあ、うちは営業の邪魔になっちゃうから、ニコラとルークの家に行こうか」

「うん!!」

「マリー、絶対にできるとは限らないからね。それに厨房を使わせてもらえるかも、聞いてみないとわからないし。ニコラとルークにも聞いてからだよ?」

「わかってるよ〜! 私もう子供じゃないから!」


 マリーが拗ねて顔を背けてしまった。少し意地張ってるマリーが可愛い……俺の妹は絶対世界一だ……


「じゃあ、昼営業が終わったら二人の家に行ってみようか」

「うん!」



 それから昼営業が終わり、俺とマリーは隣の道具屋に来ていた。


「おばさん、こんにちは! ニコラとルークいる?」

「あらあら、マリーちゃんじゃない。こんにちは。今日は雨だから森に行くのは中止じゃなかったの?」

「森に行けない代わりに、みんなで料理をしようかって話をしたんです」

「そうなの! みんなでお料理!」

「それはいいわねぇ〜、ニコラとルークを呼んでくるわ。厨房は好きに使ってくれていいわよ」

「ありがとうございます!」


 厨房使わせてくれて良かったな。何を作ろうかなぁ〜、お好み焼きならみんなで簡単に作れると思うけど……ソースがないからなぁ。塩を振れば美味しいかな?

 塩でも美味しいだろう! 多分……

 考えてたらめちゃくちゃお好み焼き食べたくなってきた。ソース欲しい……


「レオンとマリー、どうしたんだ?」

「今日は森にはいけないぜ?」

「ニコラ、ルーク。今日は森に行けないから、その代わりにみんなで料理をしようかと思ったんだ」

「それはいいけど……俺とルークは料理なんかしたことないぞ?」

「それは大丈夫。誰でも簡単に作れるレシピを考えたから」

「レオンが……? お前レシピなんて考えられたのか?」


 ニコラとルークがちょっと疑わしそうに俺を見ている。俺だって料理くらいはできるんだからな!


「俺だって少しは料理できるんだから!」

「お兄ちゃんの料理とっても美味しいんだよ!」


 マリー……お前は良い妹だよ……お兄ちゃん泣いちゃうよ。


「まあ、それならいいけど。それで材料はあるのか?」

「それは、買ってこないとダメかな?」

「こんな雨の中買いに行くのも大変だぞ。母さん! うちにある材料なら使ってもいい?」

「家の夜ご飯を作ってくれるのならいいわよ〜」

「おばさん本当に!? ありがとう!」


 よし! これで作れるな。あとは材料があるかどうかだけど……もし無かったらうちに取りに行けばいいか。



 そして厨房に来て材料を見てみると、お好み焼きに使う材料は全て揃っていた。


「これだけあれば作れるよ。じゃあ早速作ろうか」

「俺たちは何をやればいいんだ?」


 えっと、お好み焼きは確か……千切りキャベツに卵、小麦粉、水を入れて混ぜて、それをフライパンで焼き、薄切りのお肉を載せて裏返して焼く。これだけだったよな?

 多分合ってるはずだ……分量は全くわからないけど、そこはなんとなくだよな。


「じゃあ、ニコラは俺とキャベツを千切りにしてくれないか? マリーは小麦粉と卵を用意してくれ。ルークは水を汲んできて欲しい」

「俺は包丁を使ったことないけど大丈夫か?」

「ナイフとそんなに変わらないから大丈夫だよ」

「お兄ちゃん、マリー準備するね!」

「俺も水汲んでくるぜ!」


 マリーとルークが準備に入ったので、俺とニコラはキャベツを切り始める。


「どうやって切るんだ?」

「俺がやるから見てて、こうやって細長く切って欲しいんだ」

「わかった」


 ニコラは最初こそ苦戦していたがどんどん上達していき、今は料理をしたことがないと言うのが信じられないほど様になっている。ニコラ凄いな……刃物の扱いが上手いのかな?


 俺とニコラがキャベツの千切りを終えた頃、マリーとルークは準備を終えていた。


「じゃあ次は、このキャベツの千切りが入った器に、卵と小麦粉、水を入れる。卵は二個で、小麦粉は一番小さい器の半分くらい、水はコップに半分くらい入れて欲しい」


 多分そのぐらいの量で失敗はしないはず……


「ここに小麦粉をそのまま入れるのか!?」

「そんな料理聞いたことないぜ?」

「大丈夫。美味しくなるから信じて」

「大丈夫なの! お兄ちゃんの料理は美味しいんだよ!」

「まあ、マリーがそう言うならいいけど……」


 え!? 俺よりマリーの方が信用あるのかよ……

 俺も頑張ろ……とりあえず今は、美味しいお好み焼きを作れば信じてくれるだろう。


「よし! みんな入れてね」


 みんなは恐る恐るながらも、俺の言う通りにしてくれた。


「次はこれを満遍なく混ぜるんだけど、結構力がいるからニコラやってくれるか?」

「ああ、任せとけ」


 ニコラは結構体が大きく筋肉がついているので、力仕事は得意なのだ。

 ニコラが混ぜていくと、どんどん混ざっていく。段々と俺が知ってるお好み焼きの素になった気がする。


「ニコラ、そのくらいで終わりでいいよ。次は焼くんだけど、竃に火を入れないと」


 先にやっておけば良かった……ついつい日本のように、すぐ火がつくと考えちゃうんだよなぁ。


「そういえば、この家って火属性の人っているの?」

「ああ、俺が火属性だったんだ」

「ニコラは火属性だったんだ! じゃあ、竃に火を入れるのは簡単だ」

「俺の属性が火属性ってわかってから、毎日母さんにやらされてるからな。『火種』だけは完璧だ」

「じゃあよろしく」


 ニコラは言葉の通り、すぐに火をつけてくれた。

 俺はフライパンに少し油を引いて、フライパンが温まったところでお好み焼きを焼き始めた。


「ニコラ、豚肉を薄切りにしてくれる?」

「ああ、どのくらいの量だ?」


 お好み焼きは四つくらい焼けそうだから、一つに三枚で十二枚くらいでいいかな?


「十二枚くらいでよろしく」

「わかった」


 俺はニコラが切ってくれた豚肉をお好み焼きの上に置き、ひっくり返した。豚肉を薄切りにするのは難しかったようで、結構厚切りだからちゃんと焼かないとだな。

 ひっくり返すときに形が崩れなくて良かった。


「すげぇ! 俺もやりたい!」

「私も!!」


 ルークとマリーには、ひっくり返すのがカッコよく見えたらしい。


「一人ずつ順番ね」

「「うん!」」


 それから、ルーク、マリー、ニコラの順でお好み焼きを焼いた。ルークとマリーはひっくり返す時に少し崩れてしまったが、自分で焼けて嬉しそうなので良しとしよう。


「これで、塩をかけたら完成だよ。三枚は夕食に残して、一枚は食べちゃおうか」

「うん! 早く食べたい!」

「めちゃくちゃ良い匂いだぜ」

「確かにお腹が空く匂いだな」


 みんなお腹が空いたみたいだ。確かにご飯作ってるとお腹空いてくるよな。

 俺は苦笑しながらみんなに言った。


「じゃあ、俺が四等分するからお皿とフォーク出してくれる?」

「はーい!」


 俺は争いにならないように綺麗に四等分し、みんなの皿に載せた。


「じゃあ食べようか? いただきます!」

「「「いただきます!」」」


 ぱくっ…………美味い! お好み焼きって塩でも美味いんだな。

 でもソースをかけたお好み焼きが食べたくなる……! ソースも欲しいんだけど、ソースの原材料なんてよく知らないしな……誰か開発してくれないかなぁ。


「美味いな」

「これめっちゃ美味いぜ!」

「お兄ちゃん! これも美味しい〜!」


 みんな美味しいと思ってくれたみたいだ。良かった。


「美味しいって言ってもらえて良かったよ」


 俺は安堵の笑顔で、みんなは満面の笑みで、お好み焼きを食べ切った。

 そのあとみんなで片付けをして、俺とマリーは帰ろうとしたんだが、その時にニコラが少し深刻そうな様子で話しかけてきた。


「レオン、ちょっと話があるんだがいいか?」

「話……? まあいいけど」

「お兄ちゃんどうしたの?」

「マリー、お兄ちゃんちょっと用事思い出したから、先に帰っててくれる?」

「そうなの? わかった!」


 マリーはそう言ってうちに帰っていった。それにしてもニコラが俺に話ってなんだろう……?


「ルークは上に行ったからリビングでいい? 今誰もいないから」

「いいけど……」


 誰にも聞かれたくない話ってこと? 俺は話の内容を不安に思いながらもニコラについて行った。

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