浮遊感
蓬葉 yomoginoha
浮遊感 。 ° ー彼女を知るための5つの話ー
宮科柚希・・・二子長女。家でも学校でも寡黙だけれど、人が嫌いなわけではない。隠れ食いしん坊。実は風華の……。
弓代風華・・・柚希の中学の時からの友人。部活も一緒で、ふと振り返ると柚希とずっと一緒にいる。実は柚希の……。
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休み時間の教室。窓際の席で、彼女は基本的に誰とも話さない。かといって机に突っ伏して寝たふりに興じるでもなく、ただ小さく口を開けてぼんやり外を眺めている。
ふと何かを思い出したかのように立ち上がると、教室の隅のサボテンに水をやったりしている。
では、クラスから孤立しているのか、というとそうではない。
彼女と話してみたいという女子や、「なんか面白いよね」と興味を持っている子も結構いる。
だから、ペア作りとかには困らないし、孤立というネガティブな言葉は似合わない。
でも、実際それに近い状況になっているから、悩みに悩んだ末、私はある
「柚希は浮遊してる」
話すきっかけがない。それがみんなの言い分だ。まあ、最もだと思う。だって柚希の方から話しかけてくることなんて、まずないだろうから。
それはちょうど雲が地面に下りてこないのに似ている。雲は別に人間を嫌っているわけじゃないし、人間も雲を嫌っているわけではないけれど、互いにまじりあうことはまずない。
住む場所が違うとまでは言えないから、若干的外れかもしれないけれど、けれどなかなかいいたとえじゃなかろうか。
じゃあ、なんで柚希が孤立しないで、もっと直接的な言い方をすれば、いじめられたりせずに、ある種超越したような位置にいるのか。
不思議だ。
*
柚希はあまりしゃべらない。
それは仲がよくてもそうでもなくても変わらない。
私などは、柚希にかなり近い人間だと自負しているけれど、他の友だちと話す量を一とするなら、柚希との会話量はその三分の一くらいだろう。
「柚希はさ、喋るの嫌いなの?」
一度、聞いてみたことがある。
そう言うと、意外にも柚希は首を横に振った。
「それにしては、静かじゃん」
「そう……かな。みんなが、お喋りなだけだとおもうけど」
「いやそ……うかもしれないけど、でも柚希が静かなのもあると思う」
「じゃあ、もうちょっと頑張ってみる」
柚希はそう言って微笑した。
けれど、体感ではあまり変わった感じはしない。
「
しかし、しばしば私はそう評価される。
単純に、部活もクラスも一緒だからじゃないのかと思うが、彼女たち
「宮科さんって風華といるときだけは、高嶺の花子さんじゃなくなる気がする」」
「なによそれ」
悪い気はしないけれど、過大評価しすぎじゃないかと思う。私に対しても柚希に対しても。
とにかく柚希は、喋らない。理由はわからないけれど、寡黙に、日常を過ごしている。
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