35:運命が決まるその時へ(ライル視点)
「待ちなさい、そこの踊り子!」
ショーでの出番を終え、舞台から去ろうとしたその時。
特等席の客が声をあげた。
その席は特別な客たちが座る場所で、そこにいるだけでかなりの重要人物だとわかる。
静かに視線を向ければ、そこには目を見開いて驚いた表情でアタシを指差す人物が立っていた。
そう、アタシがずっと探していた人物が。
色とりどりの宝石が散りばめられたワインレッドの長い髪。紫色の瞳と濃い色をした肌。それだけであのユイバール王国の王家の血筋の人間だとわかる。あの王国は髪や瞳の色の濃さを守るために血縁者内で婚姻を繰り返している事は有名だが、今 目の前でこちらを見ている人物はその中でもさらに有名だった。
ユイバール王国のルネス国王に顔立ちも雰囲気もよく似ているその女性は、ルネス国王の正室であり……実の妹だからだ。
他国では禁忌とされる兄妹での婚姻を結び、さらに血を濃くしようとしたユイバール王家はもうすでに狂いきっているのだろう。
「……その顔……瞳の色も……まさか……」
まさにライルが女性だったならこの人のような感じだっただろうな。と思えるほどに似ている彼女は、ライルの姿に動揺し震えた。
ライルを呼び止め、目が合った瞬間にわかってしまった。それが女の勘か、血の繋がりが感じさせたのかはわからない。だが、それは真実なのだと本能が叫んだ。
愛する夫であり王家の規律を守るためにいるはずの兄が、最も愚かな許されざる罪をおかしていた事実を……。
青ざめた顔でその女性はアタシを別室へと呼び出した。
お忍びで来ていただろうにあんな所で叫んだせいで周りにその存在がバレてしまいちょっとした騒ぎになり今日のショーは中止となったが、この人に会うためだけにここにいたのだからもうどうでもいいことだ。
そしてアタシは今後の運命を決めるその場へと足を向けたのだった。
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