フラジャイル【積み木/録画/アイス】

 佐久間が酔った勢いで戯れに買った積み木を積み上げながら、まるでこの関係性の脆弱さを揶揄しているようだ、と一馬は笑った。

 佐久間はいわゆる半グレというやつで、知恵が回るやつではないのに、振り込め詐欺の電話を一生懸命にかけたり、受け子をしたりしていた。

 一馬はその兄貴分で佐久間の恋人だった。

 一馬の携帯が鳴った。

「おい、佐久間。お前いつ帰るんだ?」

 問いかける一馬の声を遮って佐久間は呻き声で答える。

「……どうした?」

「兄貴、ヘマこいちまった」

 佐久間は振り込め詐欺の受け子だけではなく最近は危険なブツの受け取りまでやるようになっていた。

 そして、ブツを受け取って指定されたコインロッカーへブツを入れる際に逃走ルートを間違ってしまった。

 ダミーで仕込まれていた監視カメラの下を通りさりげなく自然に隠すルートのはずが本物の下を通ってしまい、そこから足がついたという。

「ともかく俺がそこまで行く。お前はそこで待ってろ」

 佐久間のために一馬は指定された駅まで走った。果たして路地裏に佐久間はいた。

 佐久間は受け取ったアイスをぶちまけた状態で事切れていた。いわゆる覚醒剤というやつだ。

 警察に捕まってクライアントの情報を渡すくらいなら文字通り死んだほうがマシだったのだろう。

 佐久間は破滅の道を進んでいたのだから仕方ないことだった。

 だが、一馬はどうだ。安穏とした場所で恋人の帰りを待っていたが、それが結果として佐久間に負担を強いてしまっていた。

 元々、終わりに向かう関係性の中でこれが終幕ならばあっけないものだった。

 口元のアイスをぬぐい、せめて安らかに眠れよ、と一馬は佐久間と唇を重ねた。

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