やがて朝がくる【深夜の会議室/雀/寝る】

 この学校には、7不思議がある。その中のひとつに「深夜の会議室で鳥がなく」というものがあった。主人公は、新聞部員の男の子。社交的で活発な幼なじみの女の子と一緒に校内新聞を発行している。今日も何かネタがないか探していると、女の子の後輩から「深夜の会議室で鳥がなく」の真実を調べてほしいという依頼が届く。


 依頼を確かめるために、2人は深夜、校内へと忍び込み、会議室へと向かう。たしかに、鳥の鳴き声が聞こえる。一体なんだ? この鳴き声は……? そう思いながら意を決してドアをあけると、中は何もない。真っ暗だ。鳥の影もない。

 一見、何の変哲もない会議室だった。

 変だな、そう思いながら、その日はそのまま帰る。


 気になったので2人は、翌日も継続して深夜の会議室へと忍び込み、鳴き声の秘密を探すことに。

 しかし、その日は空振り、その次の日も空振りだった。鳴き声ばかりで何もない。

 しかも、2人が会議室へ入るとピタッと音がやむ始末だ。

 そして、さらに次の日、事件は起こる。

 いつもの通りの深夜、鳥の鳴き声が聞こえている。会議室を開ける。


 すると、依頼をしてきた女生徒が倒れていた。見ると、どうやら寝ているようだ。近くには睡眠薬の袋が落ちており、それを飲んでいたことがわかった。


 どういうことだ。聞こえる鳥の鳴き声。寝ている女生徒……。「そうか。わかった!」「何がわかったっていうの?」「答えは、こっちだ」女の子に女生徒を見ていてもらって、主人公は走る。


 会議室から東側にある離れの茶道室。そこに答えがあった。

 茶道室の扉を開くと、中は煙かった。

 気怠い空気の中、5、6人の男女がダウナーに酔っている。

 トローンとした目をした彼らを後目に、証拠をスマホで撮り、女の子と一緒に警察へと駆け込んで、真相を話した。


 男女グループがやっていたのは、大麻の密売だった。

 大麻も、市内のクラブなどは逆に取り締まりが強化されているため、校内で取り引きをするという盲点をついたものだった。

 依頼人は実は男女グループからいじめられていた。

 脅迫されて、わざと昔から言い伝えのようになっている7不思議騒ぎを起こしているうちに、離れの茶道室に目が向かないようにして、そのまま売り抜けてしまおうという腹だった。

 しかし、そこで試しのドラッグを使っている現場を押さえられてしまった、という訳だった。

 新聞部に声をかけたのも、7不思議の記事で、生徒の意識を茶道室から遠ざけようというものだったのだ。


 女の子は問う。

「どうして、取り引き現場が茶道室だってわかったの?」

「それは、あの子が身を呈して教えてくれたからさ。きっと、真相は脅されて言えなかったんだろう。最初、俺たちが会議室へ入った時、雀の鳴き声が聞こえた。あれは、きっとあの子の声だ。じゃあ、なんで雀なのか。なぜ睡眠薬で寝ていたのか。最初は、彼女も計画に荷担した罪悪感から睡眠薬で自殺をはかったのかと思った。けど、飲んでいた量からして違う。答えは、眠っている夜から、朝を呼んでくるのが雀だったからさ。だから朝がやってくる東、そう校舎で一番東の離れにあった、茶道室へ向かったのさ」

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