平行線【パーティー/目玉/皮肉】

 今日は彼女にサプライズサプライズパーティを行おうと思っている。

 なぜなら最近、彼女の元気がないからだ。

 たまの休日、家へ彼女を呼んだ。

 パーティの準備は忙しい会社の合間を縫って、整えた。

 プレゼントを買って、バレないようにと、家へ隠した。

 パーティの目玉はなんと、手作りのチョコレートケーキだ。彼女が好きなケーキのお店に御願いをして、レシピも教えてもらった。準備もどうにか間に合いそうだ。

 作り方を勉強して、サプライズのためにとこの日までとって置いたものだ。

 きっと、彼女も喜ぶだろう。今日は彼女との付き合い初めて1周年記念の日だから、なるべく豪華に、楽しい会を催したい。今から楽しみだなぁ。彼氏はうれしそうにボウルでクリームを混ぜながら、うきうきと鼻歌を歌っていた。


 彼女は直感的に思っていた。彼氏は浮気をしている。

 じゃなければ、おかしな話だ。なんで、ここ最近は連絡が遅いのか。

 つきあい始めたばかりの頃は、すぐに返信がきていたLineも、最近は既読がつくのも遅いし、そっけない返事ばかりだ。

 今日だって、呼ばれて家へと向かっているけれど、きっと最近の埋め合わせと称して、他愛ないことを言って、ごまかしてくるんだろう、きっと。

 果たして、家へとつくと、彼氏からのサプライズ。

「1周年記念だね、おめでとう」そんな言葉とともに、いろいろなプレゼントをもらった。目玉のケーキは彼女が好きだった店のレシピ通りの味だった。

 どんなに彼氏が話をしても、すべてが膜を1枚隔てた側から聞こえているように聞こえた。

 だって、結局、浮気をしているのをごまかしているだけでしょ?


 どんなに、言葉を尽くしたって、それは自分のためで、私のことを考えてくれていないじゃない。

 彼女はむなしさを覚える。本当にほしかったのは、彼氏の理解だった。

 少し前にケンカをした。理由は、彼女の進路についてだった。

 まだ、学生だった彼女が選ぼうとした進路。それについて、彼氏とケンカをした。

 結局は平行線に終わったけれど、そのときのことから、私を面倒くさいと思って、浮気をしているんだ、きっと。


 彼女の視界がボヤケる。

 バックの中にあった紙をくしゃくしゃにして、わざとらしく彼氏の家へと捨ててやった。もうあってやるもんか。さようなら。彼女は家からそっと出て行く。

 捨てられていたのは、婚姻届の紙だった。

 もしも、その時の進路について、彼氏が認めてくれていたら、彼女はすべてを許してずっとついて行くつもりだった。

 しかし、お互いの思いは皮肉にもすれ違い、結局分かり合えないのだった。

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