第33話 探偵として
『あなたは、能力者同士の戦いに勝てば神になれるというその勝利報酬、おかしいとは思いませんか?』
質問の意味が分からず、俺は聞き返した。
「何がおかしいんだ?」
『単純なことです。神が二人になれば、好き勝手できなくなってしまうではありませんか。あなたが神だとしたら、そんな状況を許しますか?』
「……ま、面白くはないわな。けど、それは俺の意見であって、あの神様が何を考えてるかは分からない。ひょっとしたら、もう好き勝手やるのには飽きて、対等の友達みたいなものをほしがってるのかもしれない。あるいは、元々神様は複数いるのかもな」
『まるで神話の世界ですね』
「そんな作り話みたいな展開だって、絶対ないとは言い切れないだろ。現に、俺たちが作り話みたいなことやってるわけだしな」
『だとすれば、能力者同士の戦いの先には神同士の戦いが待ち受けているかもしれませんね』
「そうかもしれないな。けど、そんな分からないこと考えたって仕方ないだろ。今は与えられた条件で全力を尽くすしかない。それが答えだ」
『ふむ……』
探偵は一息入れた後、少し残念そうに言う。
『神から特別扱いを受けたあなたでも、勝利したその先のことは何も聞かされていないのですね』
「おいおい、もう勝った気でいるのかよ。じゃあ、こっちからも一番重要なこと聞くけどさ、あんたの目的はなんなんだ? 神様になることじゃないのか?」
『あいにくと、私は能力者に選ばれませんでしたから神になる資格がありません。私の目的はいつもと同じ、探偵としてこの事件を解決することです。ですから、首謀者である神のことを探っているのです』
「ハハッ」
俺はおかしくて笑ってしまった。
「あんた、神様を逮捕するつもりか?」
だが、探偵は口調を変えることなく言う。
『人間の法で神を裁くことはできませんから、何をもって解決とするかは決まっていません。ただ、私が納得するまで捜査を続けるだけです』
「結局は自分のためかよ」
『そのとおりです。社会のため正義のためなどと綺麗事を言うつもりはありません。私は、この世界の謎を解き明かしたい。そのために命を賭けて、この戦いに介入しているのです』
「だったら、俺とは敵対するより組んだ方がいいんじゃないか?」
『それも面白い提案ではありますね』
「だろ? 俺としても、あんたが能力者じゃないなら殺す理由はないし、あんたの持つ捜査能力は是非ともほしい。一人じゃ他の能力者を探すのに時間がかかり過ぎるからな」
『見返りは?』
「俺が神様になったら、神様のこと存分に調べさせてやるよ。というか、神様を調べる方法なんてそれしかないだろ?」
『そうですね。しかし、それは他の能力者を一人残らず殺すということになりますね』
「仕方ないだろ、そういう条件なんだから。けど、俺が神様になったら後で復活させてやるからさ。それなら問題ないだろ?」
『私にとっては問題ありませんが、あなたにとっては問題があります』
「なんだよ?」
『神になるのは、あなたでなく他の能力者でも良いということです』
「は……?」
『実を言いますと、私は既に3人の能力者と同盟を結んでいましてね。その中には二代目リッパーもいますので、あなたと同盟を結ぶのは難しいのですよ。人間関係的に』
「…………」
おいおい、この流れヤバくね?
いや、でも、せっかく神様が復活させてくれたのに、こんな短時間でまたやられるなんてないよな?
さすがにないよな?
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