第24話 考え中


気持ち悪い。

だいぶ嫌な汗をかいた。


シャワーでも浴びたいところだけど、そんな時間はない。

私は備え付けのタオルで軽く汗を拭き、ペットボトルの水を一口だけ含む。


お手洗いは時間稼ぎのための嘘だ。

考えを整理する時間は15分足らず。


私はベッドで仰向けになって考える。


さてどうする?

慎重にいかないと、下手をすると殺される。


今からカウンター能力の男を殺す?

そうすれば超長距離射撃は防げるし、同時に透明化能力も手に入るから瞬間移動能力の奇襲も防げる。


でも、いくら射程内にいるとはいえ、居場所が分からなければカウンター男は殺せない。


地球を原子レベルまで分解するという手段もあるにはある。

地球を消せばカウンター男は間接的に死ぬ。宇宙空間適応能力を持つ私は生き残る。


宇宙空間適応能力には宇宙空間を移動する力もある。

さっき大量に経験値を得たから、こっちの能力もレベルアップしてるはず。


ステータス画面で確認してみると、移動速度が時速3500kmを超えていた。


ちょっと!

いくらなんでも速すぎる!


これって制御できるの?

ステータス画面に速度調整については載っていない。実際に宇宙に出てみなければ分からない。


あまり速すぎると、ちょっとしたスペースデブリに当たっただけで死ぬ。

かといって、遅すぎると月に着く前に餓死する。


そもそもだ。

地球ほどの大質量を持つ物体を分解したら何が起こるか分かったものじゃない。


もしかしてブラックホールができちゃう?


天体のことは詳しくないから分からないけど、リスクが高すぎる。


ダメだ。

今からカウンター男を殺して能力を手に入れるのは現実的じゃない。


かといって、このまま話を続けるのも良くない。

上位能力者二人が持つ情報なんてたかが知れてるから、こっちだけ一方的に情報提供させられてしまう。


あの女の子がまたこっちに来たら、瞬間移動能力を奪って月に攻め込む?


いや、無理でしょ。

月だって広いんだから。


スペースシャトルが月のどこにあるのか分からなければ瞬間移動できない。

それに、本当に月にいる保証もない。


はぁ……疲れた。

思えば長い一日だな。


今朝の時点では射程はまだ300mしかなくて、レンタカーで走り回って、それから新幹線に乗って、ホテルにチェックインしたらいきなり電話がかかってきて……。


お腹空いたなぁ。

このホテル、レストランないから夕飯が食べらんないじゃん。

どうしてくれんの?


瞬間移動の子に頼んで何か持ってきてもらおうかな?

そしたら能力を手に入れるチャンス?


でも、あの子、悪そうな子じゃなかったし、殺すのはな……。


なんか眠たくなってきたし。

はぁ、どうしよう……

どうしよ……



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