第16話 経験値集め①


リッパーの能力を手に入れた翌日。

私はレンタカーを借りて養護老人施設巡りを開始する。


当然ながら、自分の地元を騒ぎの起点とするような愚は犯さない。


昨日私はリッパーの家を出た後、自宅には帰らず、都市部のホテルに宿泊した。最初に歩きスマホ狩りが行われた都市だ。


人口が多ければ高齢者も多い。

経験値集めには絶好の場所だ。


というわけで、ナビに従ってレンタカーを発進。10分もしないうちに目標の施設が見えてきた。


さあ、お逝きなさい。


心の中で唱えた瞬間、例のステータス表示が目の前に出現した。


『レベルアップ!』

『射程・301m⇨362m』


やった!

でも運転中に見るのは危ないな。

確認するのは後にしよう。


ステータス表示は念じればいつでも呼び出せるから焦ることはない。

次へ行きましょう。


『レベルアップ!』

『射程・362m⇨409m』


はい次。


『レベルアップ!』

『射程・409m⇨434m』


う~ん、ちょっと少ない。

でも次。


『レベルアップ!』

『射程・434m⇨584m』


おお、今度はちょっと多い。

次行くよ。


『レベルアップ!』

『射程・584m⇨658m』


まあまあかな。


こうして各所を巡り、午前中のうちに射程を5145mまで伸ばすことができた。


はぁ、疲れた。

なんかパトカーと救急車が増えてきたし、今日はここまでにしようかな。


精神的にもかなりきてるな。

走ってる時にマナー悪い車を見かけると無性に殺したくなる。でも目の前で事故られると困るから迂闊に手が出せない。ストレス。


殺ろうと思えば殺れるだけに、だいぶ沸点が低くなってるな。


気分転換がてらスマートフォンでニュースを確認する。

やっぱり、ものすごい話題になってる。


これ以上この辺りにいるのはまずいかもしれない。あちこちで渋滞が起きて、混乱で事故も起きやすくなってる。

早いとこレンタカーを返して、電車で撤退しましょう。


同じ都市を一日かけて走り回るなんて悠長にも程があったな。直接手を下すわけじゃないからか、大変なことをしてるっていう感覚が麻痺してる。


昨日、自分の手でリッパーの頭を割った時とは全然違う。

何の感触もなく、私の見えないところで大勢の人が死んでいく。


まさに神に相応しい能力。

神は人間の死なんかいちいち気にしない。


それはそれでいいんだけど、現時点ではまだやり過ぎないよう注意する必要がある。

警察なんかは怖くないけど、他の能力者に先手を取られたら厄介だ。


これからはもう少し慎重に動かないとね 。

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