なんでも切れるようになったら

ンヲン・ルー

悪を切り裂き粛清・世直し

第1話 歩きスマホを粛正せよ


気に入らない。

気に入らない。

気に入らない。


なぜあんなことが許されるんだ?


そこで歩きスマホしてるお前ら!

お前ら、それ分かっててやってるんだよな?


駅構内じゃ「歩きスマホは危険ですのでご遠慮ください」みたいな放送が繰り返し流れてるだろ。


もしかして聞こえてないのか?

それとも日本語が分からないのか?


この広大な大都市の駅構内で歩きスマホしてる全員が、聴覚障害者か外国人だってのか?


んなわけねえだろ。

お前ら迷惑だって承知でやってんだろ。


どうしてそんなことができるんだよ?

何か緊急事態でも起こってるのか?


そりゃそういう奴だって何百人に一人かはいるだろうけどさ、ここで見かけた全員が今まさに緊急事態の真っ最中なんてあり得ないだろ。


ほとんどの奴は、悪いことを悪いと認識した上でやってやがるんだ。

なのに無罪。

罪に問われるのは、事故や怪我など明確な被害が出た時だけだ。


余程のことがない限り、こいつらには手出しができない。

下手に注意などしようものなら、逆にこっちが異常者のような視線を向けられる。

邪魔でも鬱陶しくても、ひたすら我慢するしかない。


ただし、昨日までは。


今の俺は昨日までとは違う。

突然、とんでもない能力に目覚めてしまったのだ。

使い方次第では世界をも変えられる能力に。


今日この鬱陶しい人混みにやってきたのは、能力を試すためだ。

いきなり大事件を起こすのは危険だからな。

まずは、ここにいる歩きスマホどもを粛清がてら、軽い実験を行う。


能力の効果範囲、能力を使った際の疲労度、そして人々の反応、社会の反応。試すことはいくらでもある。


というわけで、楽しい粛清時間の始まりだ。


安心しろ。

さすがに歩きスマホくらいで殺したりはしない。

ただマイクロSDカードを切り刻むだけだ。


人体はもちろんのこと、スマートフォン本体にも一切傷を付けることなく、マイクロSDカードだけを切り刻む。


二度と修復できないよう、念入りに100分割してやる。


俺は指一本動かすことなく、ただ念じるだけでそれができる。


「は? なにこれ?」

「うそ、どうなってんの?」

「ちょ、待て」


人混みの中、足を止める者が続々と現れる。


クククッ、バカめ!

当然の報いだ。


その日、俺は広い大都市駅構内を小一時間歩き回り、100人以上の歩きスマホを粛清した。

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