第29話 新しい家族たち
フリーダに命を救われ、彼女とまた付き合うことになった二日後。
「私は確かに、ケイトの仲間ならここに連れてきても良いって言ったが……。これはさすがに多すぎないか!?」
元奴隷の少年少女五人。
狼獣人のテルーと猫獣人のミィ。
計七人を引き連れて、俺はフリーダの家に転移してきた。風呂とトイレ、キッチンの他には三部屋しかない彼女の家にこの人数は多すぎたようだ。
「やっぱり無理か」
ここに連れてきたのは身寄りのない元奴隷たち。
家族がいる子たちは全員、家まで送り届けた。
「君はこの子たち全員を引き取るつもりなのか?」
「うん。俺の意志で彼らを助けたんだし、少なくともひとりで生活ができるようになるまでは面倒は見るよ」
十年くらいはかかるかも。
でも貴族の屋敷で衣服や食事を与えられ、生きることはできていた少年少女を俺のエゴで奴隷から解放した。だから彼らの面倒は俺が見るべきだと思う。
「ここで全員が寝泊まりするのは厳しそうだから、俺たちはこの近くの森を開拓して家を建てようかな」
「ケイトさん、俺もお手伝いします」
「ミィはご主人様の意向に従いますにゃ!」
テルーとミィも協力してくれるらしい。
最年少が七歳。最年長が十二歳の少年少女たちも、口々に俺の手伝いをすると言ってくれた。みんな凄く良い子たちだ。奴隷から解放した直後はふさぎ込んでいる子もいたが、テルーとミィの献身によって笑顔を取り戻していた。
家を建てることについてだが、俺の収納魔法なら木々を収納して土地の開拓も容易いし、建材を運ぶのも楽勝だ。ただ、きちんと人が住める家を素人の俺たちだけで建てられるかは不安なところ。それでも俺は、フリーダがいるこの土地のそばに拠点を持ちたいと考えていた。
彼女に毎日『おかえり』って言ってもらわなきゃいけないから。フリーダの家に住めないにしても、出来るだけそばにいたかった。
「ケイトはその若さで子だくさんだな」
冗談交じりでそう言ってきたフリーダは笑顔だった。俺が元奴隷の子たちを見捨てられないことをフリーダは分かってくれたようだ。彼女は一番小さな男の子の頭を優しく撫でている。
「少年少女諸君。ケイトはすごく良い奴だ。君たちが大きくなるまで面倒を見てくれる。つまり、君らのパパだ」
フリーダの言葉を聞いたエルフの少年が『パパ!』と叫びながら抱き着いてきた。兎獣人の少女が『お父さんって呼んで良いんですか?』って聞いてきたから、『もちろん!』と即答した。
「俺が父親なら、フリーダがこの子たちのお母さんだ」
「えっ!?」
その長い耳を先端まで真っ赤にしているが、満更でもなさそう。
「私がお母さん。てことは……わ、私がケイトの妻で良いのか?」
「うん。俺はそれが良い」
今後、フリーダと一緒に小さな子たちを連れて街で買い物とかすることもあるだろう。そうした時に、周りから見たら俺たちは家族に見えるはず。
元奴隷の少年少女を育てると決意した時、もしフリーダが許してくれるのであれば、俺は
「フリーダ」
ポケットから指輪を出して彼女に見せた。
安物だが、俺の少ない所持金で購入したもの。
「俺と結婚して、この子たちの母親になってください」
「は、はい!」
指輪を受け取ったフリーダが抱き着いてきた。
そして俺の耳元で囁く。
「この子たちの母親になるのも頑張るけど……。私はケイトとの子もほしい」
俺もほしい!!
「そのつもりでいて良いんだな?」
「もちろんです!」
しばらくフリーダと抱き合っていたら、小さな子たちが飛びついてきた。俺がフリーダにプロポーズする間はテルーとミィが抑えていていてくれたが、我慢できなくなったみたい。
「こら。まだケイトさんたちの時間だぞ」
「そうにゃ。もう少し二人だけに」
「貴方たちもおいで」
フリーダがテルーとミィを手招きする。
「えっ、いや。でも……」
「私たち、子供じゃないにゃ」
「帰る場所がないんでしょ? ケイトと一緒にいるって決めたんでしょ? だったら、貴方たちも私の家族だよ」
ちなみに彼女の妹であるシスタとステラは既に、フリーダの腰にくっついている。
「ほら。おいで」
テルーとミィも家族の輪に加わった。
輪と言うか、団子かな?
俺より身長の大きなテルーに覆われ、彼のフサフサの毛でちょっと暑い。
でもこの家族団子、とても幸せだ。
なんか心が落ち着く。
俺は世界を守ろうとする勇者一行のために今後も彼らの支援を頑張らなきゃいけない。前までは仲の良かった勇者ルークスたちのために頑張ろうと思ってた。
だけど今は家族のみんなのため。
この幸せを守るために頑張ろうって改めて決意した。
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