第5話 収納魔法
ルークスが俺の作った大剣を手に取ったのを確認して、思わず拳を握りしめる。
我が親友──いや、俺をパーティーから追い出したアイツからしたら、元親友かな。俺の元親友なら絶対に気付いてくれると信じていた。見た目は不格好だが、かなり存在感のある武器になったのだから。勇者である彼なら、それを感じ取ってくれると思っていた。
ルークスが大剣を持って武器屋を出た。
聖剣と比べると、あまりにもダサい大剣。レイラやセリシアはそれを見て『勇者には相応しくない』とか『もっと切れ味の良さそうな剣は買えなかったんですか?』と言っていた。ちょっと悲しくなった。それでも元親友は『俺はこれが良いと思ったんだ』って言ってくれた。
わざわざ魔界まで出向いて強そうな竜を探し出し、素材として牙をもらってきた。危険ではなかったが、魔界に行くとかなり気分が悪くなるので俺なりに頑張ったんだ。その努力が報われた気がする。
俺がこうしてルークスたち勇者一行の様子を見ているのも収納魔法の応用。収納魔法特殊機能『千里眼』と俺は呼称している。
千里眼は収納魔法の取り出し口をふたつ設定して、その間にできる異空間の幅を極限まで薄くすることで一方の取り出し口から中を除くと、もう一方の取り出し口から向こう側が透けて見えるという現象を利用している。
ちなみに俺が良く使う収納魔法特殊機能は4つある。
収納魔法特殊機能①『コピー』
聖剣のレプリカを創り出した機能。生物以外と言う条件はあるが、収納袋に入れたモノならほぼ何でも精巧な偽物をつくることが可能だ。食料もコピーできるが、コピーした食材や料理は味がおかしくなるので食べられない。ナイフとかの投擲物は問題なくコピーできる。無限投げナイフとかも可能。なんでこれができるのかは分からない。ルークスたちが倒した魔物から経験値を得てレベルアップしていくうちに、気づいたらできるようになっていた。
収納魔法特殊機能②『空間切断』
魔王軍四天王ヴァラクザードを両断した機能。敵の身体の任意の場所に収納魔法の取り出し口を設定して、それを開くだけ。突如現れる異空間が、硬さなど関係なしに敵を切断する。取り出し口の設定に割と精度が求められるので、俺が目視しないと発動できないのが欠点だ。ただ千里眼と併せて使えば、距離は無視できる。
収納魔法特殊機能③『転移』
取り出し口を設定したことのある場所へ、異空間を経由して移動することのできる機能。取り出し口の設定は俺が目視する必要がある。俺は人間界に来ていた魔人を偶然見かけて、そいつに収納魔法の取り出し口を設定していたから魔界にも出入りできるようになった。取り出し口は人や物、場所に設定が可能。ルークスたちと旅してきた国々に、俺は一瞬で移動ができる。
収納魔法特殊機能④『千里眼』
過去に収納魔法の取り出し口を設定した対象の付近であれば、どれだけ距離が離れていようと対象を観察できる機能。仕組みはさっき説明した通りだ。ルークスたち元パーティーメンバー全員に、取り出し口を設定している。
仲間たちに何かあった時、すぐ助けに行けるようにするためだ。ただしアラート機能はないから、俺が定期的にチェックするしかない。だからその……。たまに事故でレイラやセリシアの着替えや入浴シーンを覗いてしまうこともある。
もちろん故意ではない。事故だ。
うん、仕方がない。
レイラはペッタンコだった昔に比べると、今はかなり良い肉付きになった。セリシアさんはね、色々と凄いですよ。聖女じゃなくて性女ですか!? って言いたくなるような豊満なお身体をしてらっしゃいます。魅力的すぎます。
思い出して、ちょっと興奮してきた。
今晩も彼女らの安否確認をしよう。
覗きじゃないよ?
安否確認だから。
元仲間たちは、俺が守る!!
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