収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚 麻耶
第1章 収納魔法と四天王
第1話 追放の理由
「ケイト。お前をこのパーティーから追放する」
魔王軍四天王のヴァラクザードを討伐し、何とか人族の街まで帰還したところで勇者ルークスからそう告げられた。
「つ、追放? それって……俺をこのパーティから追い出すってことか?」
「そう言ってんだろ。さっさと俺たちのアイテムを返しやがれ!」
戦士のアドルフが語気を荒げる。彼らのアイテムは常時身に着けているもの以外、俺が収納魔法で異空間にしまっていた。
「なんで追放なんだよ。俺は今までお前らの役に立ってたはずだ。それにさっきの四天王との戦いだって……。ま、まずは理由を教えてくれ!」
「理由? アンタそれ、本気で言ってるの?」
「ケイトさん、自覚ないんですか」
賢者のレイラと、聖女のセリシアにそう言われた。
自覚、だと?
俺がパーティーを追放される理由?
……あっ!!
「ま、まさか俺がルークスから預かっていた聖剣を質に入れちまったことがバレたのか!?」
「えっ」
ルークスが『コイツ、何を言ってるんだ?』って顔をした。
ヤバい。それじゃなかったようだ。
「じゃあ、アドルフが気になるって言ってた、酒場のリリーと寝たこと?」
「……は? リリーちゃんと、ねね、寝た?」
アドルフの顔に怒りや絶望の表情が浮かぶ。
でもバレてなかったみたい。
これでもないとすると──
「セリシアが渡してくれた聖水を、俺の判断でルークスに飲ませたことか?」
あれは仕方なかった。とっさの判断で俺がそうしていなければ、パーティーが全滅していたかもしれないのだから。
「あ、あれをルークスさんに飲ませちゃったんっですか!?」
顔を真っ赤にしながらセリシアが俺に詰め寄って来た。
「あれは! 身体に振りかけるだけにしてくださいって念を入れて何度も言いましたよね!?」
「で、でも、飲んだ方が効果が高いって……。聖都の司教様もそう言ってただろ?」
「それでも絶対にやらないでってお願いしたのに」
セリシアが声を上げて泣き出してしまった。
聖女である彼女がどうやって聖水を創っているのか俺は知らない。なんでセリシアがそこまで気にするのかは分からないが、俺はやらかしていたらしい。
だがこれもバレていなかったとすると……。
さてはあの事か?
「俺を追放する理由って、レイラのパンツを──」
「やっぱりアンタの仕業だったのね!!」
「ごふっ!?」
超高速で風の塊が飛んできた。
鳩尾にそれを受けて悶絶する。
「レイラ。そ、その、パンツをケイトにどうされたんだ?」
「な、なんでもないわよ」
ルークスがレイラに確認しようとするが、彼女は顔を赤らめるだけで答えようとはしなかった。
ということは俺が異空間でレイラのパンツをなくしてしまったから、こっそり新品のパンツを購入して彼女のバックに戻したことも俺の追放理由ではないらしい。
じゃあ、俺の追放理由って何なんですか?
「頼む、教えてくれ。俺はなんで追放されるんだ?」
「お前。今さっき追放理由を自分で答えたじゃないか」
ルークスが笑顔でキレている。勇者として人々に希望を与える彼は、いつでも一般市民の前では笑顔を崩さない。そんなルークスの笑顔に恐怖を覚えたのは今日が初めてだ。
「聖剣を質に入れたってどういうことだ!? じゃあ、四天王ヴァラクザードを両断したこの剣は何なんだ!?」
あー。そちらはですね、収納魔法の特殊機能『コピー』を利用して作り上げた精巧なレプリカです。ちなみに本物の聖剣なら魔族に対して特攻があるけど、ルークスが持ってるレプリカにはそんな機能はないよ。
もちろんレプリカだと魔族を倒すことなんてできないから、これまた俺が収納魔法の特殊機能『空間切断』でヴァラクザードを真っ二つにしました。ルークスの剣は斬られた魔族の身体を素通りしただけ。
──なんてことを正直に言えるわけないよな。
「えっと。聖剣を質に入れたってのは嘘。それは本物の聖剣エクスカリバーです」
「……そうか。あくまで白を切るつもりだな」
ルークスの姿が消えた。
「実はなんとなくわかってたんだよ。この剣が、ちょっと違う気がするって」
声のした方を見ると、道端にあった岩のところにルークスがいた。そして彼は振り上げた
あっ、マズい!
いつもなら俺が空間切断でルークスの剣が通る先を両断しておくのだが、彼の行動が突然すぎて対応できなかった。
勢いよく岩に叩きつけられ、ポッキリと折れた聖剣エクスカリバー(のレプリカ)。
「あ、あら。折れちゃいましたね。聖剣」
何とか誤魔化そうとするが、無理なようだ。
魔族と対峙した時でも見たことないくらいルークスがキレてる。
「これがケイト。貴様を追放する理由だぁぁぁぁぁあ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます