自己嫌悪

小さいころから絵を描くことが好きだった

真っ白な紙が自分の思い通りに変化していく

描きあがった絵は自分の分身のように大事にした


時間は流れ

人は年を取る

自分の描いた絵はそのころのまま時間が止まっている

自分自身という絵は

いつの間にか個性を失い

周りの色に塗りつぶされ


朱に交われば赤くなるというが

それこそ真っ赤な嘘だ

朱に交わるから赤くなるのではなく

朱に交わるために、自分から赤くなるのだ


時間は流れ

人は年を取る

昔描いた絵は日焼けしてセピア色に

あぁ、これが思い出の色か

今の絵は、もはや単色で塗りつぶされた

無機質な平面


変わらなければ

そういう思いだけが募り

変われない

そういう現実だけが突き刺さる


何もかもが嫌になって

自分自身が嫌になって

絵に爪を突き立て

引き裂いた


引き裂かれた絵は

今の自分

変われない自分を嫌う自分


いつの間にか絵を描くことが嫌いになっていた

真っ白の紙が自分の思い通りに変化していく

それは、まるで自分を見ているようで


あーあ、しょうもない自己嫌悪

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る