第9話 魔法訓練 後半
4人は侍女さんが作ってくれていた昼食を食べ終わると、午後の魔法訓練を開始した。
「では、次は闇魔法なのですが、これは使える人が少なくまた、召喚魔法が主になってきます」
ロニオさんの説明では、召喚魔法には精霊召喚・眷属召喚の2種類に分かれているとのこと。
まず精霊召喚は、その名の通り精霊を呼び出すものだが、実体化は数秒のみで、その効果は属性魔法に似た効果が得られるとの事。
例えば剣を使う人が精霊召喚にて炎の精霊を呼び出したとした際、その炎を剣に纏(まと)わせる事が出来るらしい。
「しかし、この精霊召喚はあまり戦闘向きでは無いのですよ」
「どうしてですか?」
「精霊召喚は構築が難しく発動までに時間がかかってしまいます。戦闘中なら尚更集中力が散漫になりがちです、その為あまり使われない魔法なんですよ。精霊召喚をする位なら単に武器等で戦う方が早いからというのもあるのですが」
『ロニオさんはそう言っているけど、使いこなせれば強い味方かもしれないな。後で、試してみますか』
次にもう一つの眷属召喚について教えてもらった、こちらはその名の通り、【眷属】と呼ばれる精霊を呼び出し共に戦う事が出来るという。
「眷属は人によってその姿が違うと言われています」
「言われています、という事は見た事がないのですか?」
「はい、この眷属召喚には決定的な致命傷があります。それは、召喚時に眷属に支払う対価、
「うん?」
「先程人によって眷属が違うと話しましたね。誰にどの眷属が出てくるのかは召喚してみないとわからないのです。ですが、召喚時には魔力が必要になる。魔力が少ない人の眷属があまりにも強大で魔力が必要だったとしたら?」
「……魔力が無くなったらどうなるのですか?」
「意識を刈り取られ、もう2度と起きてこられなくなります」
「……そう、なんですか」
「そして、もう一つの致命傷はこの後にあります」
ロニオさんが話してくれた2つ目の致命傷は、例え眷属召喚に成功し、具現化出来たとしてもその間もまた魔力を必要とするとの事だった。
召喚に成功しても維持できなければ戦闘には使えない。
魔力を消費しての戦闘は危険極まりない行為だという。
「そんなこともあって闇魔法の召喚系魔法は殆ど使われないのです」
「なるほど、なんか強そうなんですけどね」
『魔力量か、私はどのくらいあるのだろうか』
次に話してくれたのは空間魔法だ、これはセバスさんが得意とする魔法である。
「空間魔法はその名の通り、空間を操る魔法で、移動系の魔法が多く見られます。セバスさんが使う、【ゲート】もまた空間魔法の一つですね」
「ちなみに私は……」
その数秒後ロニオさんの姿はそこには無かった。
「消えた!」
「……皆さん、ココですよ」
少し離れた岩の上にロニオさんがいた。
『もしかして、これが……』
考えている間にまた、ロニオさんが消え直後に私の側からロニオさんの声が聞こえてきたのだった。
「これが、【ワープ】という魔法です。やってみますか?」
「はい」
「この魔法もまた、他の魔法と同じで移動場所をイメージして発動します。ただ、注意点が一つあります、それは着地点をしっかりとイメージしなければならない事です」
「どういうことですか?」
「例えば先程、私があの岩の上に【ワープ】しましたが、着地点をしっかりとイメージしなければ、あの岩の上で頭と足が上下逆になって現れる事になる」
『うぇ! こえぇ〜!』
「ですので【ワープ】は見えている場所にしか移動出来ないのです。では、マユミさんもしてみて下さい、最初は1、2メートル先をイメージしてやってみて下さい」
「わかりました」
私は意識を集中し、2メートル先の地面をイメージする。
すると、脳内に数秒後のイメージが現れる。
『これは!』
そう、見えたイメージは数秒後に2メートル先の地面に立っているイメージだった。
『いける!』そう思った瞬間、脳内から先程のイメージが消えていた。
『あれ? 消えちゃった!?』
「おめでとうございます、成功ですね」
ロニオさんの声が聞こえ、振り向くと皆んなが少し遠くにいるのがわかった。
「マユミ、貴方は本当に凄いですわね」
ソフィーが興奮した様に喜んでいる。
「マユミ様は、私よりも空間魔法の素質があるかもしれませんな」
セバスさんがそんな事を話している。
「確かに、少し離れていますが成功したのですか?」
「はい、見事に成功しましたよ。移動先をイメージした際、数秒後のイメージを見ませんでしたか?」
「はい、脳内にそんなイメージが浮かびました、ですが詠唱をしていませんけど?」
「この魔法は詠唱を必要としません。【ワープ】の成功の鍵は今より数秒後の映像が見えるかどうかなのです。そして、この魔法を極めればこんな事も出来ます」
ロニオさんがそう説明をした瞬間、既に彼の姿はなく数メートル先に彼の姿があった。
しかしそれだけでは終わらず、現れたと思った矢先既にその場に彼はおらずまた別の場所に現れる。
『【ワープ】の連続使用! あんなに早く移動出来るなんて』
しかも現れる毎に炎の属性魔法を使用し的である岩にぶつけている。
彼もまた、空間魔法使いにして4大魔法を使える魔術師でもあるという事だ。
「……どうでしたか?」
「す、凄いですロニオさん!」
「良かったです。これで宮廷魔術師指導隊長の面目も保てましたね」
『あぁー、すいません。ロニオさん!』
心の中で謝る事にした。
「次にセバスさんが使った【ゲート】ですが、これはセバスさんより説明をしてもらいますね」
セバスさんによると、【ゲート】もまた【ワープ】とそれほど違いはないのだという、しかし違う点があるとの事。
「これは昨日も話しましたが、この魔法は行ったことのある場所にしか移動出来ません。何故なら、【ワープ】と同じで移動先のイメージが必要だからです。ですが、違う点は着地点のイメージは必要がなく発動できる点です。【ゲート】は自分が移動するのではなく移動に使用する物を呼び出しそこに入るというイメージで移動出来るのです。ですから、【ゲート】という名の門(異空間)を設置すれば良いのです」
『確かにセバスさんが【ゲート】を発動した際、歪みみたいな変な空間があったような気がする』
「あと、実用的な物でしたら異空間に物を入れる事が出来る魔法や、探索系の魔法などもありますが、私は使う事ができません」
セバスさんが最後さらっと流しながら教えてくれたが、結構役に立つ魔法だと思っていた。
「以上が、魔法の説明になります」
『やっぱり、創作魔法には触れないんだね』
一通り魔法の説明を受けた後、私は色々な魔法の練習をした。
途中まではロニオさんも一緒に説明を受けながらしていたが、魔力量が少なくなってきた事もあり見ているだけだった。
「ソフィー様…… マユミ様は一体何者なのですか?」
「それは、私にもわかりませんわ。でも、彼女はかの英雄の再来かも知れません」
「英雄……ですか」
「はい、かも……ですけどね」
冗談混じりに笑うソフィー、しかしその笑みの奥には期待と不安が混じり合っていたのだ。
そんな事も
「マユミ〜、そろそろ帰りますよぉ〜」
「え、あぁ〜もうこんな時間か」
いつの間にか太陽が落ちかけていた。
『あちゃ〜、こんなに長くしてたのか』
「はーい、今行きまーす」
私がソフィーの元に戻るとそこにはソフィーとセバスさんの2人しか居なかった。
「あれ、ロニオさんは?」
「はぁ〜、マユミ! ロニオはとっくの前に王宮に帰りましたよ」
「え、そうなの?」
「マユミの異常なまでの魔法乱射を見て、『もう教える事はありません』と言ってセバスに送ってもらっていたわ」
「あっはっはぁ〜」
『そんな事があったのね、あ、お礼し忘れたな』
「では、私達も帰りますか」
「そうですね」
『もしまた会えたらちゃんとお礼をしよう』
そんなこんなで、私の長く充実した時間が終わりを告げた。
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