第7話 一日の終わり

「……あっ! 初めましてマユミと申します女王様」

『わかっていたとはいえ、緊張する〜、てか女王様若‼︎』

 女王様の美しさとその若さに見惚れてみとれていると。

「ふふふ、私の顔に何かついていますか?」

「え、いやすいません。あまりにもお美しかったもので」

「まぁ、嬉しい事を言ってくださるのね」

 顔が紅潮こうちょうするのがわかる。

「あと、女王様ではなく、アリエラと呼んでくださいね」

「……では、アリエラ様と……」

 ニコッと笑うアリエラ様にまた、見惚れてしまった。

「さぁ、立ち話もなんですので、入って下さいね」

「よろしいのですか?」

「ええ、もちろんですよ」

 どうぞと言われ私は家の中に入る。

 家の中には王妃様ともう一人女性がいた。

 その人は侍女さんだそうだ。

「今日はこれからご予定はあるのですか?」

「予定、ですか……。 え〜っとごめんなさい」

「どうして謝られますの?」

「実を言いますと、私この街に来るのは初めてでして、この後どうしたら良いのかわからなかったんです」

「あら、そうだったのですね。では、私どもで住む場所など手配致しましょうか?」

「!! いえ、流石にそれはご遠慮させて下さい。この街に宿などありませんか? あと、お金が稼げる仕事などを教えて頂ければありがたいのですが」

「宿ですか、まぁあるにはありますが、お金は今持っておられますか?」

「……いえ、持っていません」

「では、こうしましょう。マユミの生活が安定するまではここに住んでもらいましょう」

「それは良い考えですね、お母様」

 私がこの家に住む事は決定事項らしい。

『気が重いなぁ〜、でも行くあてもないしな』

「……では、しばらくの間お世話になります」


「お仕事の事ですが、私からギルド長に話しておきますね」

「ギルド長?」

「この街にもギルドというのがあり、そこの長にマユミの仕事の事を話しておきますね」

 詳しく聞いた話、この国以外にもあるらしいが、ギルドというものがあり、そこに登録をし依頼を受け成功するとお金が貰えるらしい。要は冒険者というやつだ。

『まぁ異世界にはありありのパターンなのかもね』

「ありがとうございます」

「気にしないでね、では今晩は歓迎会ね」

 そう話し、アリエラ様とソフィーは嬉しそうに準備に取り掛かっていた。

 侍女さんも、2人に次いで準備をし始めていた。

「あ、あのぉ〜、私はどうしたらぁ〜」

 声をかけたが、「マユミは、その辺でくつろいでいてね」

 と言われた。

 その後は本当に何もさせてはもらえなかった。

 淡々と歓迎会の準備が進み夕食時、見事な料理が揃っていた。

 そして、私、ソフィー、アリエラ様、そして侍女さんの4人での夕食が始まったのだが、ソフィーが昼間の出来事をアリエラ様に話しているのを聞き私の耳が熱を帯びていたのは言うまでもない。

「ところでマユミ?」

「なに? ソフィー」

「昼間も聞いて曖昧になっちゃったけど、マユミは魔法を使えるの?」

「えっ、うん〜。使えるとは思うよ、思うけど」

「思うけど?」

「使った事がまだあまりなくて、何が使えるかはよくわからないな」

「では、明日試してみませんか?」

『まぁ、自分を知れるから良いか』

 その後も夕食は続いた、こうやってご飯を一緒に食べていると、この方々が王族だとは思えない程に和んでなごんてしまっていた。

『なんか不思議な感覚』

 何どかどこから来たのか、という質問を聞かれるが返答に凄く困っていた。適当に応えてはいたがあまり納得はされていない様子だった。

 そんなこんなで、夕食が終わり休む時間になるのだが、やはりこっちではお風呂という概念はなかった。

 お湯が出る魔法が施したシャワーの様な物があり、それで体をキレイにしている様子だった。

『お風呂に入りたいな〜、お湯が出るシャワー?があるだけましか、でも……』

 やっぱり石鹸等はなく、オイルの様な物が置いてあった。

 これを体に塗ると肌が綺麗に保てるのだとか。

「確かに良い匂いはするかな」

『また、考えないとな』


「今日は私と寝ましょう、マユミ」

「はい、ありがとうソフィー」

 10歳も歳が離れている事を忘れてしまう程大人びたソフィー、でも時折見せる仕草はやはりまだまだ子供だなと思ってしまう。

 どのくらい話したのかわからないが、そこそこ時間が過ぎた頃。

「マユミ、昼間のあの魔法はもしかして創作魔法ですか?」

 一瞬心臓がドキッと脈を打つ。

「え、何のこと?」

「私達をボアから助けてくれた時です、あの時私達も必死でしたから確証はありませんが、あの時マユミは手に何も持っていませんでしたよね? それに、弓を射る時矢が現れました。あれは他の7つの魔法では不可能な現象です。もちろん、マユミが話したくなければ話さなくても大丈夫ですよ。そして、もし事実だとしても私は公表したりはしませんから」

「ソフィー、正直に言うと私にもわからないの、あの時は私も動揺していて、ソフィーやアリエラ様からどこから来たの、と聞かれてもどう答えていいかわからなかった。今言える事は、私はこの世界の人間ではない事、全く別の世界から来たんだと思う」

「別の世界ですか?」

「そう。……ソフィー今日は改めて本当にありがとうね」

「どうされましたの?」

「ソフィーに出会えてなかったら、私は路頭に迷っていたと思うから」

「いえ、それはこちらも同じですよ、私達もマユミに出会わなかったらどうなっていたかわかりませんから」


 私はこの部屋を見渡した、この部屋には電気が無い為魔法で灯りをたいているが、魔力も使う為あまり強い灯りは出せないのだ。

『灯り、灯りかぁ、魔力をあまり使わずに長時間使えて光量も十分に出る物。……ランタン! ランタンが良いかな』

 この魔法を使ったらどうなるか分からなかったが、どうしてもソフィーに何かお礼がしたかった。

 私はランタンを思い浮かべ、魔力等も考慮し考える、すると私を中心に光が溢れる。

 ソフィーの驚きの声が聞こえてくるが今はこっちに集中する。

 私を包んでいた光がやがて集約され始め手のひらに集まる、そしてその光の中から一つのランタンが姿を表した。

『ふぅ〜、とりあえず見た目は成功かな』

「マユミ、それは? それにこの魔法は」

「この魔法がソフィーの言う創作魔法かどうかはわからない。けど、昼間もそうだけど私が願ったり考えた物を作れるみたいなのよね。これはランタンって言う物で、明るく照らしてくれる物なの」

 私はそのランタンに少し魔力を流すとランタンに灯りがともった。

 そして、今まで魔法を使用していた灯りを消してもらうと、ランタンから淡くもしっかりとした光が部屋を照らす。

「これなら、夜魔力も少なく灯りをたけるよ」

 ランタンをソフィーに渡す。

「これを下さるのですか?」

「もちろん、その為に作ったのだから」

「凄い、凄いですマユミ。信じられない」

「そんな大袈裟な」

「いえ、本当に凄いことなんですよ。それほど創作魔法というのは奇跡に近い魔法なんですよ。あぁ〜、今日は興奮して寝れそうにありません」

 ソフィーの言う通り夜はふけていったが、私達の会話は本当に長く長く続いたのであった。

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