コロナワールド~妻が鬼の形相で暴れております~←本作の大半はAIが書きました
水原麻以
男の目線
「すぷいおれ、ちっぱあ、てふんまーーーーーーーつ」
「りゃくひとんふぁむ、ちきたこよー!!」
「るぐーい、てんぐふぁいるこんふぁ!!」
理性の砦をズタズタに引き裂く怒号。ここは地獄だ。とてもこの世とは思えない。
貪欲と殺意の坩堝。端的にあらわすとすれば、まさにここがそうだ。もっと簡潔に言えば「健全」の二文字に尽きる。
みずみずしく、プゥンと鼻腔をくすぐる甘酸っぱい香り、ツンとすえた鉄棒の匂い(誰でも一度くらいは義務教育時代に運動場で嗅いだ記憶があるだろう)
それをもっと躍動的に演繹すれば……血の匂いになる。
生き血だ。それが充満している。
戦場——などといった、生易しい形容は通じない。
とてつもない重量がバリバリと灌木を踏みしだき、肉を骨ごと噛み砕く。山のような巨躯。その背後から新たな脅威が飛び掛かる。
容赦も温情もない。
交戦規定もない。
ただ、あるのは、適者生存の
しかない。
「もっと、もっと、もっと、見せてあげるわよ! 愛の熱い恋を!」
女——その容姿は。とろけるような唇と、豊かな黒髪。
「うぉぉおお! こいつは、こいつは、やべぇわ!」
血みどろの地面に転がる黒装束たち。まさに、死屍累々。
「でも、これならいける!」
戦士の雄叫びが耳に届く。俺もその叫びを背中に背負って。
そんな声に呼応するように、風のバリアが舞い上がった。
その先に、人の形をしたものがいる。
――あれこそが「神の国」。
そう確信して、彼女は目を閉じた。
「さぁ、愛の力を目に焼きつけて」
彼女の眼前には巨大な剣が生まれた。
それは、彼女が憧れた魔法の剣だった。
これで、この剣は「真の平和」を謳歌する。
そう。
「もっと、もっと、もっと!! もっとすごいよ!」
彼女は目を開け、その剣で次々と魔物を次々となぎ倒していく。魔物は、その剣を振り下ろし続ける。
そして、血糊もぬめった獣脂も絡みつく筋線維をもろともせず、肉を切り骨を断つ切っ先。刃こぼれすることなく敵をミンチに変えていく。
いやぁ、俺が世界を守りたいと思ってる理由。あれは単なる俺の「使命」の結果じゃなくてね。
◇ ◇ ◇
その日は、晴天だった。
朝起きたらこの世の終わりだ。
彼女が夢に見たのは、もう終わりを決めた夢だった。
どっちだ、と見まわして探す明日はなく、目を皿のようにして見出す希望の芽もない。あるのは不毛の大地。
なんだろう、もうこの世での俺の役目は終わったんだろうか?
そう思ったが、彼女は違った。
「……あれ?」
あれ、自分の夢だったはずの現実が、ここにある。
俺は、彼女を見ていた。
……今、何してたっけ?
え。なんか、なんだっけ。
あれ、何、今、夢で見ていた事覚えてるな。
え? これ、過去(?)だよね?
うん、夢だった。
あ、夢を、そう夢(?)を見ていたわけじゃないような。
じゃあ別の世界(?)で、そんな物語(?)が書いてあったのかなぁ。
俺は現実を突きつけていた。
「愛は、罪なんかじゃないわ。」
それは、彼女からの”贈り物”のような
優しい言葉。
「好きな人に、この道を通してもらったのよ」
彼女の笑顔に、俺の心が洗われていく。
何だっけ、夢。
夢を見て、現実に見ていた夢を見て……でも、何だっけ?
俺は忘れていった。
「もう少しだけ、頑張ってみようってことだけ、思えた気がするんだ。」
そう、自分(?)の本当の気持ちを、夢に残していった。
そして、今までの全てを、後悔するのだった。
(了)
生活保護を卒業しようとダメ元で申し込んだ公営住宅。念願かなって入居が決まったが条件がある。それが厳しい現実となって立ちはだかる。
女は喜んだが男は苦悩に苛まれた。世帯を持たなくてはならない。喉から手が出るほど欲しがる同性たちにとって、それは二度とないチャンス、僥倖。
だが。彼にとっては青天の霹靂、嵐の予兆でしかなかった。
二人とも生活保護受給者だ。そして夫婦になれば打ち切られる。
男はぬくぬくとした自由に未練があった。
女はまだ見ぬ新しい生命に希望を持った。
当選通知書を男の臆病風が吹き飛ばし、女心が揺れに揺れた、ざわめいた。
そして、彼は挑戦状、もとい日雇いの求人票を女から受け取った。
男は逃げるように深夜シフトに駆け込み、女は憤懣を段ボール箱の山にぶつけた。
やがて、一本の包丁を見つけた。
その頃、男は細い光を見つけた。
物流センターの社長が慶事を知り、彼の勤務態度を吟味したうえ正社員登用したのだ。
「賞味期限切れのブロックを持っていけ。社員価格だ」
「ありがとうございます」
男はクーラーボックスに肉塊を詰め込み、玄関先で荒ぶる妻と鉢合わせた。
ぐつぐつとすき焼きが煮えている。熱い。世界一熱い。
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