悲報、閉じ込められました。

村崎 紫

#1うちの幼なじみは可愛いって話。

えー、なんだ。何と言えばいいのか、どんな気持ちで言えばいいのかわからないけど、先に本題を言うか。

『自分で仕掛けた』

『ちょっとでもえっちなことしなければ』

「出られない部屋に閉じ込められ』

『出られなくなりました。』

いや馬鹿かな!??そんなことあるかあってたまるかいやでも現にそうなってるじゃん!!!どうすんのさこれ!


……まあ、パニくって自分に突っ込んでも仕方がない深呼吸しろ私。すぅ、はぁ。よし、まずは状況整理。

「現在時刻は22時20分、腕時計は電波式なのでおそらく狂いは無し。ともに閉じ込められたのは同期で同い年(21)の檜川 湊人(ひかわ みなと)。こんな字だけど女、しかも美少女系、かわいい、正直キスしてもいいしなんなら抱きたいし抱かっ……。」

何言ってんだ私は、ズレてんぞ、落ち着いて状況整理するんじゃなかったのか仕切り直し。胡座組んで目をつぶってさあlets retry。

「一緒に閉じ込められたのは同期の湊人、女。そして私は津履 雛子(つばき ひなこ)、21歳、女、身元確認良し。幼い頃に精神干渉魔法適性ありとのことで回路を埋め込み済み、魔法を用いて実験部屋を作ろうとしたところ湊人が入り込み施錠された、部屋は正方形状でおおよそ5平方メートル、よし。」


私達が住む世界では魔法は科学により掌握され、適性があると診断されれば意図的に使えるよう回路を埋め込まれるのだが、お互い同じ検査場で適性検査を受け知り合ったいわば[幼なじみ]のようなもので、小中高ずっと一緒だ。この魔法実験は、大学に提出するレポートの一環だし、私が入るのではなく付き合ってる友人カップルを巻き込むつもりだった、がこのザマである。ちなみに仕掛けた術後は

『興奮状態が一定のレベルまで達しかつ官能的感情を一定値超えるとソレを感知し解錠アクションを起こすものである。

「なーにぶつぶつ言ってんのさ。」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

唐突に耳元でボソって呟くなぁぁぁぁビビるしくすぐったいだろ!!思わず四足歩行で距離とったろうが!!!どうしてくれるんだよ恥ずかしいな!

「驚きすぎー。しかも四つん這いで威嚇とか犬みたい。ふふっ。」

顔がいいおかげで笑顔がめちゃくちゃかわいいしなんか許せてしまうから顔緩まるだろが!これ以上惚れさせるな!!バカ!いやバカは私だわごめん。

つまり私は私の能力でバカ広くもないけど狭いとも言いづらいビミョーな感じの部屋に閉じ込められてさらには恥ずかしいことしなきゃ出れないと、うんこりゃあたしがバカだ、うんうん。頷きすぎて首もげそう、痛って。

「で、1人で考え事したりボソボソ話してるけどこの部屋から出る方法って思いついた?」

「いやごめん分かんないわ、すまん。」

全くの嘘だ、息を吸って吐いてと呼吸するように嘘つくなや。

「取り敢えず落ち着きたいけど、なんか案でも有る?取り敢えず私たちそんなに身長があるわけでもないから余裕もって寝転ぶことはできるぞ。なんなら毛布に敷き布団タオルケット、テレビにDVDプレイヤー、終いにゃ据え置きゲームまで完備だ。これ持ってきたの別の友人なんだけど何だこれ贅沢〜〜。こんな部屋で一人暮らししたいわ自堕落生活できるぞ。

「そうねぇ、耳かきとかマッサージでもする?最近ひなちゃんがちゃんと寝てる姿見てないし。」

助かるなぁ、いやぁ最近寝づらくて研究準備室のソファー暮らしなんだ。

「は?神か?結婚してくれ。」

いやだから本音と建前逆になってどうする。疲れか?これが疲れと寝不足の影響なのか?

「へっ??」

「ごめんごめん、忘れてくれ。たまたま眠気誘うために手に取った本の一節を思い出したんだ。」

苦し紛れだ、普段私は本なんぞ読まぬ。

「ふーん、そっか。まあいいや、取り敢えず正座するから足に頭乗っけてよ。膝枕ってしてみたかったんだよね〜。」

促されて畳まれた脚に頭を乗せ天を仰ぐと、うーん壮観。デカい、何がとは言わないけど、デカい。眼福とはこのことなんだろう、ありがたや。

「それじゃあどっちか向いてねー。耳かきは……無いから生成するね。」


彼女、湊人の力は具現化。なかなか有能かと思うが思念から物を形成するため正確な想像が必要だし割とメンタルを食う(彼女談)らしく、力を使った日の夕方はすごく深ーく眠っている。そして寝顔がまたかわいいのである。

それじゃあ右耳からとの合図で耳かきが始まる。(カリカリ、カリカリ。)普段自分から耳かきを率先してするわけでも無いし垢が溜まれば(カリカリ)耳鼻科に行って吸うのがあたりまえなのでこう、物を突っ込まれるとひたすら心地いいと(カリカリ)くすぐったいが暴力振るってくるのだ、ヤメロッッッ眠気と同時に何かに目覚めそうだッッッッ、グゥッ。得体の知れない何かに抗うも心の声が情けなさすぎる。

「ひゃっ……あぅ……んんっっ。」

現実でも変な声出す始末だ、いっそ殺してくれ……。

「気持ちいいのはわかるけど、動かないでねー。流石に怖いよ?」

そういいながらも巧みに耳かき棒を操り外耳壁を刺激してくる。嗚呼、ダメだとうとう眠気が勝っ……き…。

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