ウルフムーンにおねがい
水原麻以
ミステリーは小説を超えて現在進行形
点と線がつながらない。現場百遍というが物的証拠がざっくざく出てる。容疑者も証言もわんさとそろった。そしてミステリーは小説を超えて現在進行形だ。
とにかく応援を頼む。屋敷が裏山に呑まれて類焼が広がってる。街の消防団員が土砂に埋もれた。重機も救急隊員もたりない。それから…。
爆音を最後にノイズが延々と続いている。警察署長は頭を抱えた。山一つ隔てた隣町に応援を出したら途端に全滅だ。その間にも緊急通報が鳴り響く。
ベテランや腕利きは惜しまず派遣した。残っているのは新人のマリー。警察学校をぎりぎりで卒業したばかりだ。
「あのう…署長」
眉間を揉んでいると鳶色の瞳が心配そうに覗き込む。配属された初日から危険にさらすわけにいかない。署長は連絡調整役という閑職をあてがおうとした。指揮系統は稼働中だ。すると新米刑事は身を乗り出した。
「私、真犯人がわかりました」
いきなりこれだ。署長は片手をあげて制止した。新米はそうやってすぐでしゃばる。そもそも事件かどうかもわからない。町はずれの山に突如として爆発が起こり半径百メートルの大穴が開いた。衝撃と山火事で甚大な被害が出た。周辺自治体の警察や消防が総動員され生存者の捜索と救出を行っている。署に応援要請があり捜査員や鑑識課員まで駆り出された。爆発に関与したとほのめかす者がおり。数名がこれはテロであると自白した。半信半疑のまま家宅捜索すると犯行声明や共謀を示す履歴が山の様に出てきた。目撃情報もある。深夜の酒場でひそひそ話を聞いた。近く大きな出来事が起きると。そして若干名が出頭した。隣町の警察では自首を扱いあぐねている。ミサイル攻撃を住民が誘致するなど考えられない。明白な事実は地主である成田家の敷地で何かが爆発したことだけだ。
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