異世界難民

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#異世界難民

#緊急会見

「どういうことだ?」

俺はマントの内側から自前の水晶玉を取り出した。妖チューブには小顔のピクシーや色白肌のエルフといった如何にも善良市民が長テーブルに連なって救済を求めている動画があった。

「私たちは命を脅かされています」

「人外虐待は止めてください」

「どうか助けてください!」

異世界難民の会を名乗るグループは誰かから言われない攻撃を受けたとして地獄の魔王に安全保障を要請している。その模様が動画サイトに転載されて爆発的に広まっている。

「そういうことか!」

気づくと俺は灰皿を振り上げていた。さいわい、マスターと運ちゃんに羽交い絞めされ、メリダの額を割らずに済んだ。

「知らなかったの。それに私は無関係よ。本当よ!」

涙ながらに訴える彼女の瞳は澄んでいた。それで俺はいったん矛先を収めることにした。だが、俺が苦心惨憺して築いた平和をぶっ壊す奴は許さない。

日本国政府は態度を硬化させた。炎上商法の限度を超えた悪質なテロには自衛隊の治安出動も含めた強制措置を検討する。そう警告した。

    

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