8
このあと、相手チームの意見に対する批判と反論をする「反駁」に備えるため、各チームに作戦タイムが五分間用意されている。
一旦録画を止めた陽介は、怜雄をつれて教室の隅へと移動した。
「陽介、どうやって攻めるんだ?」
「正直いってむずかしい。否定派はクラスターをつくらせないためにも中止すべきだといってる。医療現場も逼迫してきているし、ワクチン摂取もはじまったばかり。かりに七月末に摂取完了できても、六十五歳未満の人は摂取してないからね。しかも、打てるのは満十六歳以上だから、ぼくらは打てないんだ」
「まじかっ」
「そのうち十二歳以上になるだろうけど、それはまだ先。今のところオリンピックを開催したとしても、運動会を開催できる保証にはならないよ」
「つまり、俺たち肯定派の主張は通らないってことか。じゃあ、どうすんだよ。このままだと、李厘のヤツに負けちまうじゃないか」
「そうなんだよね……」
ディベイトの目的は、思考の方法を学び、コミュニケーション能力を充実すること。だから、どちらがより批判的で、論理的で、創造的に思考していたか、コミュニケーション責任を果たしていたかという観点から判定し、勝敗を決定する。
「クラスでやる場合、審判はクラスのみんながするけど、今回はグループ内でディベイトを行っているから、自分たちで勝敗を決めなければいけない。勝機があるとしたら、その辺りかな……」
陽介は雨音を聞きながら、タブレット画面に表示されているサイト記事を見続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます