12 愛しのヴィネ陛下に謁見です! ああ、「推ししか勝たん」ですわ

 衛兵に両脇を固められた私は、ヴィネ陛下の待つ大広間へと連れて行かれた。


 軋むような音を立て、大広間の重い扉が開く。

 正面の玉座には、国王であるヴィネ陛下が鎮座ましましていた。


(ああ、じっくりとそのお美しいご尊顔を堪能したい!)


 しかし、いきなり一国の君主をマジマジと凝視するのは無礼に当たる。

 私は、ヴィネ陛下の目の前まで、しずしずとしとやかに進み出ると、まずは令嬢らしく、礼儀正しく深々と礼をする。

 はやる気持ちを抑えながら、そのままの姿勢でヴィネ陛下のお言葉を待った。

 飢えに飢え、ドッグフードを目の前にした犬が、「待て」をされたも同然の状況である。 

 「待て」の状況は、永遠にも近く感じられた。


「面を上げよ」

 

 厳かな声に、私は恐る恐る顔を上げる。


 ──ああ! なんと、なんとお美しい!!


 現実はスチルを大幅に上回る。

 シミひとつない、透き通る肌は神々しいほど輝いているし、腰まで届く紺青のストレートヘアは、スチルイラスト以上にツヤツヤだ。

 ハイライトやテクスチャを重ねることで豪華さを演出しているCGならではの美しさとばかり思っていた髪だが、生で目の当たりにしても、宝石のごとく光り輝いていてなんともうるわしい。

 目元周り、顔の上半分は仮面により隠されているが、その下には、ギリシャ彫刻のように整った、彫りの深い鼻や口元が続く。


 まさか、こんな目の前で、スチルではなく4Dで、推しを鑑賞することができる日が来ようとは思っていなかった。

 以前、ヴァレリーのもとに現れたヴィネ様と、ほんの少しだけ話したことはあった。

 しかし、あの時の私はまだ、前世の記憶を取り戻してはいなかったのだ。

 ヴィネ様への愛を思い出した後は、これが初対面となる。


 生まれ変われて本当によかった!

 私は、運命に感謝した。


 ――――――――――――――――――

 名前:ヴィネ・ド・ロマリエル

 種族:人間

 職業:君主

 別名:魔王


 HP:60

 MP:45


 STR(力):20

 VIT(体力):19

 DEX(器用さ):15

 AGI(敏捷性):16

 INT(知性):17

 ――――――――――――――――――


 そして、ジャンと違いヴィネ様のパラメーターのなんと充実していることか。

 正ヒーローであるジャンから見るとラスボスにあたるわけだから、多少、歯ごたえのある敵となるようにと、高ステータスに設定されているのだろうか。

 MPがあることから、魔法が使えることがわかる。

 知性が6だったジャンとは比べものにならないステータスの充実ぶりだ。

 キャラデザといい、パラメーターの設定といい、プランナーがバランスを間違ってしまったとしか思えない。


 私への好感度が1しかないのは残念だけれど、初対面に近い状態なのだから、こればかりは仕方がないだろう。

 これから、頑張って上げていくしかない。

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