9 魔王の城に突入する方法を考えましょう
アヴァロニア王国の首都カーコードウィは、湖の中に浮かぶ島の上に発展した都市だ。
湖の中洲がまるごとひとつの城塞都市になっており、ヴィネ陛下が住まう居城は、島の中央の小高い丘となった場所にそびえ立っている。
湖の中に位置しているとは言え、他の国の城塞都市と同じく市街地までは市民たちも自由に出入りしているわけだから、中洲までは渡し舟を利用すれば何とか渡ることができた。
町の中へも、通行料さえ支払えば入ることが可能だ。
しかし、ここからどうやってヴィネ様に謁見したらよいものだろうか。
いざ、ヴィネ陛下のお膝元まで辿り着いたものの、どのようにしてお目通りをすべきか、私は迷った。
一般的に、ゲームでよく導入されるのは、ストーリー上、必要な時に必要なスキルを自動的に身に付ける、というシステムである。
急にステータス画面が見えたり、ミニマップが見えたりしたのも、こういった理屈が絡んでいるのではないかとも考えた。
だとしたら、ヴィネ様にお会いしなければ詰んでしまうというこの状況においては、アサシンが活躍する某ゲームのように、ステルス能力や壁を越える能力も自然と身に付いているのではないか。
そう考え、淡い期待を抱きながら、アイテム欄を確認する。
しかし、城壁を越えるために必要な、ロープランチャーのような装備は、何も追加されていない。
それでも、もしかしたら……、と人目を避けつつ、崖や家の壁を登ることに挑戦もしてみたが、これはあえなく失敗してしまった。
やはり、ここはあくまでも乙女ゲームの世界観で構築された世界であり、私は元公爵令嬢でしかないということなのだろう。
高いところに登ったり、敵を暗殺したりするような特殊スキルは備わっていないのだ。
ステータスを確認しても、急に戦闘力が上がったようには見えない。「自分の足で歩く」という、これまでして来なかった経験を重ねたことにより、体力は上がったようで、HPは2だけ上がっていた。
しかし、それ以外のステータスに変化はない。
これは、「日常生活にウオーキングを取り入れたことで健康増進につながった」という程度の、ほんの些細な変化である。行動の変化によって、ステータスに多少の変化が現れるということがわかったのは、朗報ではあるかもしれない。
しかし、魔法もスキルも相変わらず使えないというのは、この状況においては厳しいと言わざるを得ない。
魔女と断罪されたものの、実際には私は魔女ではないし、MPも1のままだから、魔法も当然使えないのだ。
ということは、使えるのは、この身分だけなのである。
とは言え、父は実際には爵位を剥奪されているわけだから、本当のところは身分も何も持たない、ただの庶民に過ぎないのであるが。
しかし、それを隠し、なんとかはったりをかまして、正面から城に突入するしかないだろう。
私は、突入のための方法を思案した。
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