古色蒼然たる学校をデジタル改革する場合は相応の参入障壁が予想される。

しかし、そこはIT社長山田太郎。森林火災による砂漠化と水汲みに追われる未就学児童、地球温暖化で沈む島の貧困世帯、とどめに空腹を抱える飢餓民。情緒あふれるプレゼンテーションでお歴々の使命感を揺さぶった。

とどめに後塵を拝す日本のＩＴ産業である。身近な半導体製品の大半を外国に頼っていることを強調した。

「由々しき問題だ。しかし、そのデジタルが生徒の毒にも薬にもなる」

想定済みの懸念だ。そこを山田太郎は押し切った。「弊社が納める機器は環境基準に適応しており再生可能エネルギーを使用しております。環境悪化で苦しむ子供たちを放置するのが教育ですか」

そこまでいうのなら、と期間限定で試行することになった。

「ただし、校内でだ。外部の会場は不純異性交遊の口実になるからな」

校長はあくまで慎重派だ。とまれ、開催場所と日時は決まった。一週間後の土曜日。授業に影響しない学習予備日を使う。生徒たちからはブーイングがあがった。問題は山田仁朗と吉田美咲のデートだ。男子禁制の学校でどう二人を逢わせたらいいのか。

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