マイルプリント柄

「そもそもマイルプリント柄って何だ?」

ファッションにうとい吉田健也は恥を忍んで妹に聞いた。マイルプリント柄という種類はなく思い当たるとすればマイルストーン柄かフェア柄ではないかという。

「北欧調のXや^が羅列したような柄とは少し違う」

美咲が送ってきた画像に「把握した。活断層みたいな模様か」と健也は身も蓋もないリアクションを返した。

「大人コーデって言ってよ。山田仁朗って人はやっぱり肉食なのね」

カメラ越しに妹の笑い声が響く。

「あんまり爆笑すると舎監にバレるぞ」

「こっちは大丈夫よ。消灯時間まで二年生の子の誕生会やってるから」

美咲は両足を投げ出す。セーラー服にハーフパンツという色気もへったくれもない格好で捧腹絶倒する。

「何が面白いんだ。地味な女が理想だったというギャップがおかしいのか」

「まるっきり逆。暗い色は着こなしが難しいのよ。どちらかというと派手な子が…ちょっと待ってね」

あろうことか美咲は背後のクローゼットを開いてフェアアイル柄のセーターと白いプリーツスカートを取り出した。ハーフパンツのまま足を通して穿く。

袖を肘までまくり「こんな感じかしら?」と回転して見せる。ふわっとスカートの裾が上がる。「お、お前…」健也は絶句した。

そして震え声で感動する。「い…いいぞ…ぉおほほほ…」

声を詰まらせ、ワンテンポ老いて美咲を煽る。

「…ぉぉお…よぉおおおし! その調子だああ!!!」


釣り作戦開始である。

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