第2話
モンスターとやらの敵性生物が出ることはなく、コンクリに足を打つ音が空虚に響くのみ。
変わり映えしない階段を登りもう時間すら計れなくなった、無心と言いつつも何も感じないわけではない。喜びは感じないし何よりも一人で淡々と登っているのが悲しい。辛いと感じるならこの場にはいないが幸せをとくと感じることはない。
終には登り始めた理由すら忘れた。食べずに飲まずにフロアの扉は一度も開けず、脚の筋肉と虚無感のみで登っていく。
空腹感は無くなり登るだけで満身創痍、汗以外水を飲めずに脱水症状。へとへとなんてものではない、目の前の階段が行ったり来たりふらふら足が揺れて落ちそうになる。それでも何にでも変えて、手が伸びる幻覚を見ようともこの上へ登らないといけない。使命?何と為に?
どうでもいい。
ようやく、少し昔を思い出した。
巷では有名な話があった、ビルを登ればこのクソッタレな世界を抜け出せると。
よくある話だ。貧民の出身では金はないし学もない、なれば小さく生きていくしかない。天より高く人が居れる世界で何故、地面について泥を啜って生きて行かねばならないのか。だからこそ……いや、ちっぽけな貧民の壮大な──のためにビルまで来た。頭を何百回と踏まれようとも、腹を何千回と殴られようとも、誰かに血をなすり付けてでももビルの下へ。階段を登る奴がいると蔑視され、仲間に冗談だろと見捨てられる。
登れば。叶う幸せがある。
そう信じて、一人で立ち上がりここまで来た。
はずだ。
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