エピローグ

異世界の空も地球も変わらない。あるのは人の営み。ここにはエルフ等様々な種族がいる。それでも元をただせば


「人類」という一つの存在が生み出した文化や制度だ。


そして、そこに住む人々も「ヒト」という生き物でしかない。


(私も変われた)


ふと思う。翠はこれまでずっと、自分の理想とする姿を目指してきた。だがその先は何もなかった。今は少し違う。


「この先、私がいなくなったとき……」


言葉が零れる。誰にも聞こえないように呟く。


(誰かが私の理想を継いでくれたら……なんて、そんなの虫が良すぎるわよね)


夕暮れ時が過ぎ、薄暗くなっていく。


「山吹、そろそろ帰るのか」


後ろから不意に声がかかる。驚いて振り返るとそこには大僧正が立っていた。もう日が落ちて、室内には二人しかいない。「ああ、おつかれさまでした」


「今日はすまなかった」


「いいえ。大僧正殿は謝らないでください」


「いや、お前の言うことは正しかった。我はお前から教えてもらうばかりであった」「そうですか。よかった」


翠は、ほっとしたように胸に手を当てる。「あの」


翠の指が大僧正の頬に添えられる。


「また、明日から一緒に頑張りましょう。困ったことがあったらいつでもヘルプデスクに来てください」


「え、あ、ああ、そうだ、また来るよ」


「じゃ、また」


翠はコールセンターの施錠を行い家路についた。大僧正の影法師が長く尾を引いている。そこに小柄な女のシルエットか駆け寄り重なった。

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魔王の対処に困った王国はコールセンターを召喚 水原麻以 @maimizuhara

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