第10章 さくらとの出会い 【11】
それから少しして、俺は
「
そう言うと白石先輩は、自宅のインターフォンの呼び鈴を鳴らした。
すぐにインターフォンのスピーカーからガッ、ブツッという音がして、『まぁ、さくらどうしたの?』という50代くらいの女性の声がした。
「お母さん、鍵がバッグの中で何かに引っかかったみたいで取り出せないの。ドア、開けてくれる?」
『あらまぁ、ちょっと待ってね。今開けるから』
そう言うと、ブツッと通話が切れ、20秒ほどして、玄関ドアの鍵が開けられるガチャリという音がした。
「おかえりなさい、さくら。……あら? そちらの方はお友達?」
「お母さん、ただいま。この人は、西浦
「始めまして。西浦匠です。白石先輩にはいつもお世話になっています」俺は軽く頭を下げた。
「まぁ、西浦さん、ありがとうございます。こちらこそさくらがお世話になってしまって」
「いえいえ、たまたま『最寄り駅が同じ者同士、まとまって帰ったほうが安全だろう』とバイト先が判断をして、そうしたら偶然僕が同じ最寄り駅だっただけで」
「西浦くん、ありがとう。もしかしたら、明日の朝も『駅まで送ってもらいたい』なんて言うかもしれないけど、その時はよろしくね」
「まぁ、その時は喜んで参上します」
「西浦さん、その時は私からもお願いさせてもらいますね」
「……あ、はい」先輩の母親に頼まれるとは、意外と俺は初対面にしてはある程度信用されたらしい。
「それじゃ、先輩。俺は帰ります。あ、無事に帰り着いたら連絡しますので安心して下さい」
「分かった。西浦くん、お休みなさい」
「はい。先輩もお休みなさい。それから、先輩のお母さん、僕はこれで失礼します」
「こんな日だから、お気を付けておかえり下さいね。それと、これからもさくらとは良くしてやって下さい」
「あ、はい」それだけ言うと、俺は自転車に跨った。
最後に「じゃあね」と手を振ると、白石先輩は家の中に入って行った。
それを見届けた俺は、ゆっくりと自転車を発進させた。
さてと。
「早く帰り着いて、白石先輩を安心させてあげないとな」
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