第10章 さくらとの出会い 【8】
駐輪場を出た俺たちは、
「ごめんね、
「ですね。でも、帰りは俺、一人なんで。万が一不審者が突っ込んで来ても、何かされる前に自転車に
「それなら良いんだけど……」
「それより、何事もなくここを通り抜けられることに集中しましょう。」
俺は、
「……ねぇ、西浦くん」
「何ですか、先輩?」
「もし、明日の朝になっても通り魔の犯人が捕まっていなかったとしたら、私のこと迎えに来てもらっていい?」
「はいっ!? 先輩、電車の中で俺に送り届けもらうのは『今回だけ』って行ってませんでした?」
「……何て言うか、気が変わったの。さっき、駐輪場が物々しかったじゃない。だから、自分の身に何かあっても怖いな、って思っちゃって……」
「……そりゃそうですよ。男だけど、俺だって怖いですもん。女性である先輩が恐怖を感じるのは、当たり前ですって」
「でも、西浦くんは私を守ろうとしてくれてるよね? 自転車の前を私より前に出してるのは、そういうことでしょう?」
「聡いですね、先輩。とりあえず、どこまでできるかは分かりませんが、いざという時は俺が先輩の逃げる時間を稼ぎたいと思います」
「だけど、そんな万が一はないに越したことはないよね」
「……まあ、そうですね」
そこで俺たちは思わず吹き出した。
元々お互い「そんなつもりはない」はずだったのに、いつの間にかよそよそしさがなくなっていたからだ。
何事もなくどうにか高架下の暗がりを抜けた俺たちは、
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