第4章 病院にて 【2】
救急外来の受付に辿り着いた俺は、受付で「
俺は、「2階ですね、ありがとうございます」と言い、近くの階段から2階へ上がった。
階段室から出た先は廊下で、突き当たりに重々しい扉がドンと閉ざされていた。
最初何の扉なのか分からなかったが、近づくに連れて扉上の表札の文字に気が付いた。表札の文字は『手術部』。恐らく、この扉の向こうにはいくつもの手術室が並んでいるのだろう。
とはいえ、ここからどうすればいいか分からない。狼狽えた俺は、思わず辺りを見渡した。
すると、「もしかして
振り返ると、キリッとしたスーツ姿の女性が立っていた。年齢は俺よりも一回りほど上のようだ。
「私、A県警
よく見るとそれは警察手帳で、階級は警部補とあった。
……ひゃー、この人、やり手なんだぁ……
「白石さくらさんのお母様がお待ちです。こちらへどうぞ」そう言うとハ七三警部補は、俺に付いて来るように促した。
「ありがとうございます」そう言って俺は警部補の誘導に従った。警部補に案内されて辿り着いたのは、小さな控室のような部屋だった。
「白石さん、西浦匠さんを連れて来ましたよ」警部補は言って中に入った。
「失礼します」一拍遅れて中に入った俺は、ある人と目があった。
「小母さん!」
部屋の中で俺を待っていたのは、さくらの母親だった。
「匠さん、お待ちしておりました……」俺の顔を見るなり、さくらの母親はまた涙声になる。
「白石さん、泣かないで。泣くのはさくらさんが無事に手術室から戻ってからにしましょう」ハ七三警部補が優しく
……来たはいいが、完全にアウェーだ。どうすればいい……
「あの、小母さん」俺はさくらの母親に話しかけた。
「俺もさくらの手術が終わるまで傍にいます。だから落ち着きましょう」
「……はい。そうですね……、ハ七三さんもお付き合いくださるとおっしゃっていますし……」そう言うとさくらの母親は、「ちょっと失礼」と、盛大に
……とりあえず、さくらは緊急手術中で、俺らは無事に終わることを祈るしかないんだ……
さくらの母親と合流できたことと、さくらは死んでいないという事実に安堵した瞬間、俺は言葉にできないほどの疲れを脚に感じた。
ここまでの展開がジェットコースター過ぎてすっかり忘れていたが、俺は総計4kmばかり自転車を飛ばしていたはずだ。
「……すみません、ここ、失礼します」俺は手近にあった椅子に腰を下ろした。
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