第3章 さくらを死なせないために

 マップアプリのナビに従って駅前商店街を走る。どうやら、マップアプリ的には、商店街の逆端の交差点からもう一度高架橋の下をくぐらせたいらしい。

 さくらの母親からの電話の前に見てしまったあの光景が、最悪の未来の白昼夢だとするなら、あんなものは現実になってほしくない。だから。

……俺の行動次第で、お前の運命が変えられるのなら……俺は思った。

……さくら、お前は俺が絶対死なせない!……

俺は、駅前商店街の逆端の交差点を左に曲がった。道の先には、さっきさくらの家に向かうためにくぐった地点の延長に当たる高架橋がかかっている。

「……ぃよっし!!」

覚悟を決めて、俺は高架橋下の薄暗がりに飛び込んだ。


 高架橋を抜けた俺は呆気に取られた。またしてもあらぬ場所に出てしまったからだ。しかし、さっきの最悪の白昼夢の時ほど動揺はしなかった。なぜなら、今度飛び出たあらぬ場所は、明らかに俺の家の近所だったからだ。

……なんだよこれ……。……どうなってんだよ、今日……

 とはいえ、さっきと違い見慣れた場所に出たので、迷わず自転車を走らせる。

……とりあえず、大通りに出るルートまで出ねぇとな……

俺は勢いよく自転車を漕ぎ出した。


 何ブロック目かの角を曲がろうかとした時、俺は誰かにぶつかりそうになった。

慌ててブレーキを引き、ぶつかる寸手のところで止まると、俺はぶつかりかけた相手を確認した。が、そこで俺は驚いた。何と、ぶつかりかけた相手は俺自身だったのだ!!

……はぁっ!? ドッペルゲンガー?!……

 徒歩で来た俺自身も、この状況に唖然としているようだ。

……さて、何として切り抜けよう……

「平行世界から自転車で来た。さくらが危ない」それだけ言うと俺は、徒歩で来た俺の背後へと走り去った。

……待ってろ、さくら……

 俺は大通りを目指して自転車を駆った。


 ふっと気が付いた時、俺は見覚えのない道にいた。

……ありゃ? どこだ? ここ?……

 ……そうだ!……と思い、スマホの画面を確認する。現在地は中央病院まであと半分ほどの距離に当たるらしい。

……あれ? いつの間にこんな進んだ?……と思ったが、さくらのことが気がかりであるのは変わりない。

俺は再び、自転車のペダルを力強く踏み締めた。

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