1-9. ヒイラギ長老の小屋
【クスク村周辺地図】
①②③
④⑤⑥
⑦⑧⑨
①……???
②……???
③……???
④……???(凍った滝と川)
⑤……『大猪の森』
⑥……???(広大な雪原)
⑦……『長老小屋』
⑧……『クスク村』 ←〈現在地〉
⑨……『雪神の祠』
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冒険者たちはアニウと共にクスク村を出発し、西の外れにあるという『長老小屋』を目指して歩き出した。
ここでGMから雪山を探索する上での特別なルールが説明される。
GM:雪山は全部で9つのエリアに別れているが、広大で足場も悪く、移動や探索にはどうしても時間を必要とする。その為、君たちが一日の間にできる『移動』『探索』『休息』は、合わせて4回までだ。もし『移動』を選べば、移動可能な隣接するエリアに移動する事ができる。『探索』を選べば、今いるエリアに留まって、詳しく調査を行うことができる。『休息』はその名の通り、6時間の休息を取ってHPやMPを回復することができる。
ステラ:何も調べずに超特急で急げば一日に4エリア動けるってことか。逆に判定失敗とかしても、同じエリアで4回までは探索できる。
GM:そうそう。そして『休息』だけど、基本的にこの山はクスク村から離れるほど過酷な寒冷環境となっている。下段の3エリア(⑦⑧⑨)はテントや毛布があれば判定せずとも休めるが、中段の3エリア(④⑤⑥)は〔冒険者レベル+生命力ボーナス〕の判定が必要になる。失敗すれば3時間しか眠れない。
ツバキ:一番上の段は?
GM:上段の3エリア(①②③)は、場所によって要求される条件が変わる。ただ、いずれも特定の条件を満たさない限り基本的に『休息』はできないと思ってくれていいよ。
《防寒着》や《サーマルマント》などのアイテム使用を提案すれば、『休息』を始めとする雪山でのさまざまな行動に状況に応じたボーナス修正を与える、とGMは宣言する。しかし、基本的に雪深い場所では足場が悪いことで運動判定にペナルティが入るようだ。
冒険者達はまず『移動』(⑧→⑦)を選択した。
GM:では、君達は村を出て西に数時間ほど雪の中をざくざくと進む。確かに子供達が雪をかき分けて通ったと思しき跡が小さな路となってはいるものの、村の中と違ってきちんと整備がされていない。そのため、君たちは足場が悪いことによる-2のペナルティ修正を受けながら進むことになる。
ステラ:ここで騎獣の彫像化を解除。《グレートカルキノス》、多脚形態!
※《グレートカルキノス》:騎獣の一種。魔動機に分類される、いわば巨大な蟹ロボットだ。移動力に優れる車輪形態と悪路の踏破に優れる他脚形態、二つの形態をモードチェンジで行き来できる。両手の鋏による攻撃回数もえげつない。
サー:おー!
GM:カルキノスに乗っていればペナはなくなるね。では……やがて、君たちの前方に、さびれた2階建てのような建物が見えてくる。地面から少し高いところに櫓を組み、そこに小屋を載せているようだ。
ゴットリープ:「ぬ、地図の通り小屋があるな」
GM:「あれです。あれが、うちの村で一番の長老であるヒイラギ様が一人で離れて住んでる小屋です」アニウが教えてくれる。「中には、古い伝説に関する本とかがいーっぱいあるそうですよ」
サー:「長老殿か。ならば挨拶でもしておこう!」
リューラ:「本ね、興味深いわ」伝統料理の本とかないかな。
GM:「でも、ヒイラギ様はうちの事が嫌いみたいで……うち、ちゃんと話した事もないんです」アニウはちょっと怯えているみたいだ。
ツバキ:村の老人たちは特にアニウへの風当たりが強いって話だからな。もしかしてその親玉がそのヒイラギ翁か?
GM:どうだろう。……さて、遠くにぽつんと見えていた小屋が近づいてくると共に、ガヤガヤと子供達の叫び、笑う声が聞こえてくる。
リューラ:出たな、悪童ども……!
GM : 見れば、小屋の前には雪かきをして作ったのか、15m四方ほどの空き地があり、そこで6人ほどの子供達が、雪玉を投げ合って遊んでいるのが分かる。
ステラ:こっちも思わず表情を硬くする。いじめ、よくない……!
ツバキ:アニウの隣に立って、肩に手を置こう。「大丈夫だ、俺たちがついている。行くぞ」
小屋に近付いた冒険者たちは、再び子供達に取り囲まれる。グレートカルキノスの巨体に驚いていた子供達は、アニウに気付くとすぐにまた彼女を囃し立て始めた。
GM:「嘘つきアニウ、泣き虫アニウ〜!」と彼女を突っついたり、服の裾を掴んで転ばせようとする。
リューラ:よし、では
ステラ:待って。カルキノスに命じて、ハサミをガチンガチン鳴らして威嚇させます。
GM:では「うわぁぁぁ!ま、真っ二つにされるぅぅぅ!」と悲鳴を上げて子供達は空き地の端まで逃げていく。そしてそこから手をメガホンみたいにして叫んできます。「なぁなぁ冒険者ー!アニウなんかほっといて一緒に遊ぼうぜー‼︎」
リューラ:これ、小屋の方は皆に任せていい?こいつらとっちめたい。
ステラ:いいよ、行っといで。
リューラ:わぁい。「……よし。それじゃあ、アタシが遊びの相手をするわ。覚悟しなさい、悪ガキ共……!」と言って駆け出していきます。
GM:「昨日のゴリラ女が来たぞ!やっちまえー!」子供達が次々と雪玉の雨をリューラに降らせる。
リューラ:刃を覆ったままの
GM:「ぎゃあああああ‼︎」リューラの放った砲弾サイズの雪玉が二、三人の子供達をまとめて吹き飛ばす。「や、やりやがったな〜‼︎」
ツバキ:「子供か、あいつも……今のうちに俺たちは小屋へ行こう」
リューラと子供達の雪合戦が繰り広げられる横をすり抜け、残り三人とアニウは櫓を登りきった。サーが扉を叩くと、少しだけ扉が開き、額の禿げ上がった皺だらけの老人男性が顔を覗かせる。
GM:お爺さんの首の付け根からはしなびた花のようなものがぶら下がっており、メリアである事は間違いない。彼はサーの顔を見るなり「なんじゃ他所者か。他所者と語らう口などない」と吐き捨て、すぐに扉を閉めようとする。
サー:「むむ、なかなか手厳しいなご老人!」さっと扉の隙間に足を差し込んで、閉まるのを阻止する。
GM:「むむっ!何をするか貴様!」
ステラ:「ヒイラギさん。この村に何かが起こってる。それを解決する為にも、知恵を貸してほしい……です」横から説得してみよう。
GM:「なぜワシの名を……」
ツバキ:「俺たちは村長から話を聞いて来た冒険者だ。中に入れてくれ」
GM:老人はしばらく黙ってから「どうせまた他所者か、あるいはあの小娘が何かしでかしたんじゃな」と呟く。ちなみにアニウはやっぱりこの人が苦手みたいで、彼から見えない場所に隠れているよ。
サー:「む、また?以前にもあったように言うのだな」
ツバキ:「どういうことだ?」こっちも扉を掴もう。
GM:「ええい、扉から手足をどかさんか不届き者め……!一月ほど前にも、あの余所者が猟銃を持って押しかけて来たんじゃよ!」
ステラ:「それって……カニクさん?」
GM:「そうじゃ!そしてわしを脅して、勝手に本を持ち出したんじゃ!ほら、もう良いじゃろう、さっさと手と足を退けるんじゃ‼︎」
サー:「本を、持ち出した……それは何の本であるか?」
GM:「他所者に教える事など何もないわ!帰れ‼️」
取り付く島もないヒイラギ長老をどうやって説得するか、冒険者達は頭を捻る。そしてリューラ(本人は雪合戦中)の提案により、昨夜討伐したイノシシの毛皮を見せる事になった。森の主である筈のイノシシがなぜか村の中に現れ、しかも不思議な鎧を纏っていたことを伝えれば、村の異常事態を理解してもらえるのではないかという訳だ。案の定、毛皮を見せられたヒイラギ長老はすぐに引っ込み、しばらくして扉がガチャリと大きく開かれた。
GM:「不本意だが、よかろう。特別に中へ入ることを許そう」ヒイラギ長老は渋々といった顔で君たちを中へ招き入れる。
ステラ:「ありがとうございます」ぺこり。ちゃんと敬語が使えたぞ。
サー:「感謝するぞ、ご老人」ステラの頭ぽんぽんして褒めます。
ツバキ:「感謝する」
GM:老人によって開けられた扉から中に入ると、そこにはずらりと無数の棚と、その各段に積まれた大量の巻物が並んでいる。ヒイラギは「ええと、森の大イノシシについては……これか」と、巻物を一つ取り出してくるくると開き、読み始めた。「本当に白い鎧を身に纏っていたんじゃな?」
サー:「うむ。絶命するとすぐに溶けてしまったが、間違いない」
GM:「そうか……ではやはり、森の主にして『雪神様』の眷属である大イノシシに違いない。ここに記述がある……『雪神の
ツバキ:「つまり、あのイノシシは『雪神』が何かの思惑で村に送り込んだということか?」
GM:ヒイラギは頷きます。「うむ。やはり『果てのユカラ』が失われた事が雪神様の怒りに触れたのか……」そして、そのままぶつぶつ呟いてる。「ええい、あの他所者の男め。村の娘を誑かし悪魔の子を生ませるだけで飽き足らず、貴重な本を台無しにしてもまだ足りず、遂には村の秘宝まで盗み逃げるとは……!」
ステラ:そうだ、それがあった。「そういえば、カニクさんに脅されたって言ってたけど……何があったんですか?」
GM:「ふん。一月ほど前の夕暮れ、奴が猟銃を持ってここに乗り込んできたんじゃ。わしは『他所者に見せる書物などない』と突っぱねようとしたんじゃが……」と天井を見上げる。そこには一発分の弾痕が残されている。
サー:「なるほど。脅迫され、カニク殿を中に上げたのだな」
GM:「そうじゃ。そしたら奴め、本棚を引っ掻き回して色々読み始め……しまいにはびりっと、本のページを幾らか引きちぎって行きおったわい」
ツバキ:「その本はどこだ?」ヒイラギ翁へ詰め寄る。
GM:「寄るな、他所者め!いちいちそんなの覚えとらんわい、勝手に探すがよい‼︎」しっしっ、とツバキを押しのける。「というか、お前達も雪神様の眷属、すなわち神獣を殺しとる罰当たり者ではないか!わしは金輪際、お前達の事は何も手伝わんぞ‼︎」
と、言いつつも滞在を許してくれるヒイラギ長老。彼の書物まみれの小屋から目的の情報を手に入れるのが、この『長老小屋』エリアで行える『探索』行動となる。冒険者達は(外の子供たちを全員なぎ倒し、何故かすっかり仲良くなっていたリューラも合流して)そのまま『探索』を行うことにした。〔探索判定〕に成功し、彼らは二冊の本を発見した。
GM:君たちが見つけた本は、『クスク村周辺の生物図鑑』と『クスク村の神話・伝承』の二冊だ。前者の図鑑は、これからシナリオ中に出会う[動物]もしくは[幻獣]の魔物に対して、魔物知識判定に+2のボーナス修正を得られる。
ステラ:やった。これで知力の指輪を節約できそう。
GM:そして後者はその名前の通り、この村に伝わる様々な神話や伝承をまとめた一冊のようだ。でも開いてみれば分かるけど、真ん中辺りで何ページか破り取られていて読めなくなっている。
サー:「ヒイラギ殿、これがカニク殿が破り取ったという本で間違いないか?」
GM:「おお、そうじゃ。まさしくその本じゃ!可哀想に、ビリビリに裂けてしもうて……」よよよ、と本を抱えて泣いている。
ツバキ:前後の内容から破り取られた箇所の内容を推測できない?あるいは目次とか。
GM:おお!判定振ってそれに気付かせようと思ってたけど、それならそのまま出しちゃおう。
破り取られた箇所は、本の目次において『妖精の習性および逸話』とされている章に含まれていた。また該当箇所の前後は、どちらもクスク村の周辺に暮らしている妖精達に関する記述が見られた事から、カニクが持ち去ったという箇所はクスク村の妖精に関する何かで間違いなさそうだということが判明する。
リューラ:「お爺ちゃん、何が書いてあったか思い出せないの?」
GM:「わしも既に良い歳じゃ、思い出せる訳なかろうが!」
リューラ:ですよねー。仕方ないか。
GM:代わりに、君達が『クスク村の神話・伝承』から追加で獲得できた情報を出すよ。
サー:わーい!
雪神がかつて旅人を玉座に据えた城は、このクスク村の真北に位置する山の頂上にあったという。その城は今尚そこにあり、雪神もまた今尚生きてそこにいるのだという説もある。ふさわしき者の前にのみ城へ通じる道は拓かれ、雪神に出会えた者は、何でも一つ願いを叶えて貰えるのだという。
GM:昨日アイゼン村長が語った雪神伝説に付け加えるようにして、こんな事が書いてあった。
ステラ:ふぅ……いやいや、これはこれは。
ツバキ:伝説によれば『果てのユカラ』を被る者の言う事を雪神は何でも叶えたという事だったし、これは限りなく黒か。
リューラ:誰が持ち出したにせよ、そいつは雪神の城に向かった可能性が高そう。地図でいうとこの辺り?(②を指差しつつ)
サー:途中でイノシシ撃ってるし、『大猪の森』(⑤)から北上したのかな?
そんな事を相談しつつ、冒険者達は最終的な目的地を『推定:雪神の城』(②)へと定め、ヒイラギ長老の小屋を後にした。
GM:君たち全員が外に出ると、「ふん……」と鼻を鳴らしてヒイラギ長老は小屋の扉を閉めた。
サー:「助かったのである!また何かあれば寄らせてもらうがよろしいか⁉︎」
GM:扉の向こうから「勝手にしろ!」と返事が返ってくる。
リューラ:そういえば黙って本を二冊とも持って来ちゃったけど、大丈夫か?
GM:かなりのお爺ちゃんなので全然気付いてませんね。
ステラ:かなり偏屈で迷信深い人だったけど、悪い人じゃなかったね……。よし、アニウを迎えに行こう。
リューラ:じゃあアタシは外の子供達に手を振ってる。「雪遊び、楽しかったわよ!……これからは、大人の言うことを何でも真に受けないで、自分の気持ちを信じなさい!わかったわね‼︎」
GM:子供達は元気よく「はーい、ゴリラのねーちゃん!」「分かったよ、ゴリラのねーちゃん!」と君に手を振り返す。
ツバキ:「……どうやってあの短時間でこんなに仲良くなったんだ?」首を捻っている。
リューラ:「だ・か・ら、誰がゴリラだってのよ‼︎」グレイブを振り上げて鬼の形相。でもちょっと笑ってる。
GM:そして、「……そうだよな、アニウだってずっと俺たちと一緒に遊んでたじゃん」「今度からまた遊びに入れてやろうぜ!」って感じで話す子供達を、少し離れた所でグレートカルキノスの陰に隠れるようにしてアニウが見ている。
ステラ:「アニウ、大丈夫だった……?」近付いていこう。
GM:近付けば分かるけど、アニウは片手に小さな雪玉を手持ち無沙汰に持っていた。投げようか、どうしようか迷ってるみたいに。……でも君の顔を見て『やっぱやめた』という風に雪面に投げ捨て、困ったように笑います。「大丈夫でした。何ともないです」
ステラ:それを見て、足下の雪を一塊救い上げて、アニウに投げる。「え、えーい!」
ツバキ:なら、俺も雪玉を作ってステラとアニウに投げよう。「少しくらい、遊んでも良いだろう。……ほら、投げ返して来い」
GM:「わあっ⁉︎な、何するんですかツバキさん‼︎」アニウは顔に雪玉が直撃して後ろ向きに倒れる。それからムッとした顔で両腕に雪を抱えて起き上がった。「や、やりましたね……!」そしていそいそと雪玉を作り始める。
サー:ではその様子を愉快そうに眺めていますが、しばらくしてこう言います。「む……よし、思いついたのである!子供達よ、ここからは第二ラウンド、大人と子供に別れての対抗戦である‼︎」
リューラ:「ヴェリース卿、別にアタシ対他全員でも構いませんけど?」と言った直後、子供達の奇襲攻撃で雪まみれになる。「うわーっ⁉︎」
ステラ:「た、【ターゲット・サイト】で確実に当てに行く……!」
※【ターゲット・サイト】:魔動機術の一つ。術者の視覚を補強し、攻撃の命中力を高める。雪合戦で使うのはおそらくズルである。
GM:そうやってはちゃめちゃに子供達と遊んでいた君たちは、いつしかアニウが彼らの中で声を出して笑っている事に気付く。「あははは……」
サー:鎧の外に雪を盛られて雪だるまにされながら、それを見て微笑んでる。「……初めて、アニウがちゃんと笑っている所を見られたであるな」
こうして半日が経過し、それぞれの家に帰る子供達を見送った冒険者達。疲れて眠ってしまったアニウを交代で背負いながら、夕陽の射す中を歩き出すした彼らが目指すのは、小屋の裏手を進んだ場所にあるという、凍りついた滝である。
GM:……ああ、忘れてた。あの本……『クスク村の神話・伝承』だけど、もう一つ情報があった。
リューラ:え、なになに?
GM:『雪神様』の名前です。
ステラ:ふぁ⁉︎
『雪神伝説』の章の最後の方に、雪神の別名の一つとして、その名は記されていた。
吹雪の戦乙女、スカディと。
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[雑談]
(前回の続き)
GM:そういえばさっきの返し、ツバキはずいぶん落ち着いてたね……流石というか。
サー:ツバキ、大人!
ステラ:おとな!
ツバキ:17歳だよ‼︎まだ成人して2年だよ‼︎
サー:ツバキ、思ったより若い! ※サーは20歳
ステラ:大人期間が長いのだな……! ※ステラは10歳
リューラ:最年長はツバキに話題丸投げしたよ……。 ※リューラは22歳
実はPC達の種族の話をこれまで全然してこなかったのですが、ツバキ以外の3人は全員人間です。そしてツバキもナイトメアである事をひた隠しにしているため、側から見れば人間の4人パーティーに見える事になります。
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