終電はまだ来ない



 砂糖を水に溶かしたようなブレーキで車は止まった。どんなに街が寝静まっても眠らない鮮やかな色が、私とこの人を迎え入れる。34分前に決まった突発的な酒の勢いはもう収まりはしないけれど、もう少しこの人の事を知ってからでもよかったかなとは思う。

 開けてもらったドアから降りて、改めてこの人の顔を見上げる。相変わらず良い顔してる。名前は、HNしか知らないけれど。まぁ別に気にはしない、彼氏がいるわけでもなければ純潔を守りたいだとかも思わない。良い顔と良い声に溺れられるなら本望だ。

 それに。降りる前に少し戯れたけれど、……多分、相性いいだろうからなぁ。私だけじゃなきゃいいな。繋がれた手に違和感もないまま、浮ついた頭に動くガラスを滲ませた。

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