第6話 王国の都市とゴブリン


side アーク都市


ドコーーン!


早朝、安穏を打ち破る爆音が鳴る。

それは何かと何かとがぶつかるような音であり、人を不安にさせる音。

まだまた眠りから覚めたばかりの人が多い時間帯だった事や王国兵の詰所が城壁側に多く、山岳方面に少ない事が、この一連の騒動の拡大、対応の遅れにも繋がった。

非日常的な出来事だった。

迅速な対応が遅れるのは仕方ない事だろう。


大きな音が聞こえ、家々から覗く王国民。

街道を歩く人もちらほら増え、音の出所を探るように足を止め、近くの人々と輪を作っていく。

彼らの多くは、鉱山物を採掘する者が多い。

山々から採れる鉱山物で生計をたてているのだ。


「おいおい、今の大きな音、なにかわかるか??」

「わからないわ。すっごく大きかったね」

「なんか爆発でもしたとかじぁないか?例えば…」


など朝のひとときとしては平凡で危機感のない当たり前の会話。

異変に最初に気付いたのは屋根上に登った男性だった。


「あ、あれは、ゴブリン!??何で町中に…」


目測で見た限り、ゴブリンはだいぶ近くにいる。

住民との距離は目と鼻の先だ。


「お、おい!!危ないぞー!!近くにゴブリンの大群だー!」


大声で叫ぶが、それを打ち破る悲鳴。

あまりにも遅い警告。


「キャーーー!」

「痛い痛いー!」

「くそっこっちに来るなー!!!」


朝食前でもあったため、住民反応も遅い。

武器も防具もない。

むしろかなりの軽装であった。

仕事で使うツルハシでも片手にあれば大分違っただろうし、仕事着の厚手な服でも来ていれば違っただろう。


ゴブリン進行は止まらない。

人が嫌悪感を感じられずにはいられない容姿、手に持ったナイフは目に留まらない訳がない。

手当たり次第。

それが真相であり真実。

目につく者を追いかけ、片手ナイフで背中をさす。

滅多ざしにして動かなくなった獲物を見もしず次の獲物に向かう。

逃げまとう人々、追いかけるゴブリン。

運悪く家々から出たばかりの人がゴブリンに飲み込まれ消える。

100体以上とも思える群生に1人で立ち向かえる者は相当な強者だっただろう。


事態から数十分して王国騎士のいる詰め所に報告がはいる。


「報告します!北地区の山岳地帯に問題発生。ゴブリンの襲撃があります!すぐに現地に向かってください!」


「負傷者多数。100匹程度だと思われます」


詰め所にて夜勤を任せられていた男性は耳を疑うが鬼気迫る報告に指示を出す。


「総員準備!西地区に増援要請をしろ!治癒師に連絡を忘れるな!準備でき次第、出るぞ!!」


「はい!」


それからさらに数十分し、事態は収束に向かう。

現場に向かった王国騎士達によるゴブリン討伐が始まる。

呆気ないほど簡単に数を減らすゴブリン達。

元々、ゴブリン程度の魔物に遅れをとる者は少ないのだ。

例えるなら成人前の子供と同じかそれ以下。

王国では15歳で、成人として認められるが、それ以下なのだ。

今回の騒動拡大は、時間帯と数によるものであるのは間違いない。


その後、簡単にモンスター群は沈黙。

安堵に包まれたように感じる。

平静を取り戻す事ができた。


だがその代償は決して軽いものではなかった。

血と汗が混じりあったような濃厚な空気。

痛みに悶える人。

愛する者が亡くなって、絶望し泣きじゃくる人。

まだギリギリ息のある人。

状況は人それぞれ違う。

一刻を要する人も多い。

この場合、安全を確保されたなら、助かる見込みのある人を最優先に救援活動をする。

そう緊急救急のマニュアルだ。


この世界の死亡率はある程度、低い。

その理由は治癒師の存在が大きいだろう。

彼らは外傷のスペシャリストだ。

傷口を塞ぐ。それだけの事で助かる人も多い。


「こっちだー!治癒師来てくれー!」

「あっちにも倒れてるぞー!」

「う、嘘よ。こんな事って…」


行き交う人々。

駆け回る。

そこから数時間は喧騒はやまなかった。


今回の死者数48人。負傷者232人。

ゴブリン、全滅。


決着はついた。





____________________


side 天界


「お主はわしの声がきこえているかのぉ??」


巨人さんから声をかけられましたよ?

夢なのにすごーくリアルですね?

あれ?でも最後の記憶が…

あぁ…私、車に引かれたんだ。

子供が車道に飛び出し行ったから、危ないって思って。

ダメだったんだー…


「めずらしいのぉー何十年ぶりかだぞ。わしは閻魔だ。少し待て」


閻魔様って実際にいたんだー!

すっごーく大きいー!


「お主、子供を助けて車に引かれたとはのぅ」


死因も分かっちゃうんだ。

閻魔様すごい!


「閻魔様。あの子は助かりましたか??」


「そうじゃのぅ。ちゃーんと助かっておるぞぃ」


閻魔様は慈愛に満ちた笑顔で答えてくた。

ダンディーですね。


「そうですか。それなら良かったです」


私も負けずに笑顔で答えておく。

意外に負けず嫌いなのです。


「さて、ここは転生する場だ。お主、望みはあるか??」


そうだったのですか!

それは知りませんでした。


「そうですね。閻魔様のオススメはありますか??」


「うーむ。そうじぁゃのぅー。自分の身を犠牲にしてまで子供を助ける、その精神。異世界になるが、聖国シルバードの貴族はどうじゃ?」


貴族ですか。

私にはちゃっと格式が高そうです。


「私には格式高くないですか??貴族があるなら平民とかあります?そっちはどうでしょうか??」


「そんな事はないぞぃ。元々日本自体が礼儀正しいしのぅ。平民じゃと運が悪いと食うに困ってしまうぞ?」


それは困ります!

せめて不味くないご飯は頂きたいです!!


「それなら貴族でお願いします!」


「そうかそうか。誠に結構」


閻魔の口角が上がってます。

何が楽しいのだろう?


「ではよき人生を」


そして私は聖国シルバートに生まれる事になったのです。


記憶を持ったままだったので、本当に色々恥ずかしかったです!

もぉ閻魔様、記憶消すの忘れてますよ??

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