雪の日

 しゃりと幽かに音を立てて、雪はすぐに溶けきった。濡れた指先を服の裾で拭う。ひんやりとした冷たさがとても気持ち良い。雪は好きだ。それに日本海側の地域で生まれ育ったからだろう。幼少期を過ごした京都は、毎年のように雪に覆われていた。

 すると、小さな足音が聞こえた。それは自分がいる部屋の前で止まり、すぐに名を呼ばれたので振り返る。マフラーとコート、ついでに帽子とイヤーマフでモコモコになったドロップが立っていた。手にはお盆に乗った雪うさぎ。先程まで遊び仲間達と除雪作業しつつトラップを仕掛けたり自家製冷凍庫を作ったりして動き回っていたせいで、顔が林檎のように赤くなっている。

 窓を開けたままで寒くないのかと聞いて来るのを、オタクサは笑って彼女を手招きした。冷え切った手でドロップの狸柄の手袋を奪って手を掴んだ。途端に悲鳴を上げたので、少し面白くなって左右色違いの目を細めて笑った。不思議な事に寒がりながらも、決して振り解かれる事の無いこの温もりも、また好きなのだった。

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