第103話 談笑
「……またライバルですか」
「えっいや…流石に違うんじゃ……?」
と言っても雫は人前だから余裕無い感じに演技するよね。………演技だよね……?
「っ…てか、あの人…。凪乃先輩じゃ……」
「ユリ、あの大学生と知り合いなの?」
「うん。何回か、一緒の現場で撮影したことある…。斯波凪乃さんっていう、高校生の頃からグラビアアイドルやってるめっちゃスタイル良い人」
「………なんで兄さんがそんな人と……」
…いや、覗き見してないで聞けばいいじゃん…。
とは、流石にボクには言えないけど。
凛華先輩が、なにやら女子大生と肩を並べてカップルだらけのカフェへ入って行ったその姿を見た時。
ボクはなんとなく思い至って雫に連絡を入れた。
そしたら、遥香と友梨奈も着いてきた。
最近この二人ずっと一緒にいるなぁ…。
と、それはともかく。
友梨奈曰く、そこそこ知名度のあるグラドルさんらしい。
「あ、てか凪乃先輩って、最近だとコスプレ系の衣装着てること多いんだよね…」
「その情報今は物凄くどうでも良い…。てか、小春はなんでこっちの方面に来てたの?」
不意に遥香にそう問われて、ボクは約束を思い出した。
「あっ…。そうだ、ごめんボク行かないと。白雪先輩待たせてるんだ…!」
「…まあ、情報提供には感謝してます」
ボクは三人の様子に苦笑いしながら、踵を返した。
◆◆◆
カフェではスイーツとコーヒーを頼んで、最近のことを話していた。
それはそうと斯波さんが二十歳だと知ってちょっとびっくりだ。
「へぇ…。斯波さんって結構歳上だったのか…」
「そうだよ〜敬ってくれても良いんだよ?」
顔が幼いから大学生って言っても、そんなに離れてないと思ってたんだけどな。
まあ口に出すほどのことでもないだろう。
「…なんか、前にあった時よりテンション高いですね」
「うん。そうかも。前は…ちょっと色々あって。あ…ていうかさ、東雲君は…もうすぐ三年生だっけ?進学するんだよね?」
「今のところはそのつもりです。彼女が同じところに行きたいって言ってるんで、まだ具体的な進路とかは話しながらって感じですけど」
「あれ、彼女さん居るんだ?フリーならこのままお持ち帰りしよっかな〜とか考えたんだけど」
おどけて言う斯波さんに、俺は思わず苦笑いをした。
「斯波さんってそんなキャラじゃないでしょ」
「そうだね。あ、でも東雲君ならいいかな〜。大切にしてくれそうだし」
「俺、こう見えて結構モテるんで、ライバル多いですよ?」
「あ、やっぱり?そうだよね、東雲君って顔は女の子っぽいけど行動はイケメンだもんね。前のバイトの時とか、ちょっとドキッとしたもん」
前のバイトの時…というと、食器を落としそうになった時の事だろう。
よく覚えているものだなと感心していると、斯波さんはくすっと笑って肩を揺らした。テーブルに乗って一緒に揺れるたわわには焦点を合わせない。
「なんか…。いいなぁ。仕事柄、見られるのは当たり前だしそれを利用してるっていうのも分かってるんだけど…。東雲君と話してる時って、いやらしい感じしないの、ちょっと新鮮」
「見て良いんならガン見しますけど」
「そう言いつつやらないのが君でしょ?なんか分かってきたよ〜」
以前有った時とは違って、今の姿のほうが素の性格に近いんだろう。前はここまで明るい印象は受けなかった。
「ん、ちょっと愚痴になっちゃうんだけどね…」
と、その後も一時間近くカフェで談笑を続けた。
普段あまり会わない人とこうやって、二人だけで話す時間という機会も、俺はあまりなかったから随分とリラックスして楽しかった様に思う。
………帰宅したあと、俺の部屋で待っていた雫と遥香の二人がジト〜っとした目で見てきたのだけは、本当に心臓に悪いから止めて欲しいけどな…!
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